いま、SNSの普及とともに盛り上がりを見せているのが「ライブ配信」だろう。
YouTubeをはじめ、FacebookやInstagram、Twitterなど、日常にすっかり溶け込んだ各種SNSが数年前からライブ配信機能を取り入れ、リアルタイムで簡単に動画配信ができるようになった。その結果、著名人から一般人まで幅広い層が配信を行うようになった。
そのライブ配信動画のなかで特に特徴的なのは、一般人によるライブ配信が人気を博しているということ。たとえば、「LINE LIVE」は少し特殊な盛り上がりを見せている。 LINE LIVEでは、「ライバー」(配信者)が料理や、ときにソファでリラックスしながら配信を行う、とてもカジュアルでゆるい光景が目につく。
しかし、そのゆるい光景とは裏腹に、人気ライバーともなればリスナーたちから数十万ポイント(ポイントアイテムはLINEコインで購入できる/100コイン120円)を集め、多くの人がお金を落としているという事実もある。 著名人や、企画や編集面でも高クオリティなYouTuberの動画ならわかるものの、一般人によるクオリティの高いとは言えないゆるいライブ配信。それがなぜこれほどまでに盛り上がっているのか、正直よくわからない部分もある。
「若者がライブ配信に熱狂するのはなぜなのか?」 その答えを探るべく、12月に開催された、LINE LIVEの人気配信者「スターLIVER」だけが参加できる限定クリスマスパーティー「LINE LIVE Christmas Party 2018(以下、LINE LIVEクリスマスパーティー)」に潜入。その魅力を探ってみた。 取材・文:園田菜々 編集:和田拓也 写真:山口雄太郎
そして今回の「LINE LIVEクリスマスパーティー」で注目したいのは、約60名のスターLIVERが集まった「配信バトル」だ。
1時間の配信でリスナーから集まったポイント数を競い、男女上位3名(計6名)には地上波で放送されるLINE LIVEのCM出演権が与えられるという。
LINE LIVEでは今回に限らず、このようなポイント数を競って賞品を得るイベントが頻繁に行われている。 17時。配信バトルのスタートと同時に、スターLIVERたちはスマホのインカメに向かって話し出す。立ち上がり会場を歩き回る人たちもいれば、テーブルに座ったまま配信を続ける人たちもいて、スタイルは様々だ。 しかしいずれもかしこまった雰囲気はなく、「あ、○○さん来てくれたんだ」「会場やばくない?」などと、とてもフランクな、友達や家族へのテレビ電話のようなトーンの声で和やかにざわめていた。
なかには会場中央のデザートビュッフェをとるためにスマホを一旦置いてしまうスターLIVERもいて、そのゆるさに改めて驚く。 ライバー同士の交流も盛り上がっており、画面を共有しながらお互いに映り合う「コラボ配信」の場面も多々見られた。
知り合いのライバーに「久しぶり!」と声をかけて映り込む人もいれば、その場で「はじめまして」と言ってそのままコラボするライバーもいる。一方で、シングルプレイで着実にポイント数を稼いでいくライバーもいる。 開始から30分がたち、ランキングの中間結果が発表される。女性部門は、前回1位のふうかさんをおさえ、saraponponさんが124,882ポイントで第1位に。男性部門はフンたろーさんが59,981ポイントで1位となった。
バトル後半戦は、中間結果の発表により、会場もだんだんと熱を帯びていった。LINE LIVEの面白い点として、独自のアイテム機能がある。
ポイント数に応じて、アイテムの種類は変わる。100ポイントの薔薇は100コインで購入できる。イルカは15000コインだ。 頻繁にイベントが行われているからか、リスナーにもイベント慣れしている人が多いように感じる。実際、イベントで勝つことを意識して「最後の5分でバラ投げるわ」といったコメントなども見られた。
一瞬、ホストを1位にするために客がドンペリを入れる光景が頭をよぎった。 とにかく、ライバーはリスナーと協力しながらランキング上位を狙っていく。特に終了10分前など白熱する場面では、「(ポイント)お願いします!」というかなり直接的な発言も。
配信のクオリティではなく、あくまでリスナーとの関係性により成立しているコンテンツなのだ、ということを改めて感じた。
それではなぜこれほど多くのリスナーがライブ配信に集まり、身銭を切って応援しようと思えるのか。
そこには「距離感の近さ」がひとつ大きな要素としてあげられるだろう。会場では、配信者とリスナーというよりは、気のおけない友人同士のコミュニケーションのような光景が広がっていた。 多くの配信者が、リスナーのコメントをすべて拾いながら話を進めているのだ。これらをひとつひとつ拾って返すのだから、そこで行われるのは一方的なショーではなく、双方向のコミュニケーション。それはどこかスナックのママのような立ち位置と似ているかもしれない。
ライバーはひとりで喋っているように見えて、多数のリスナーのコメントを回している役に徹しているようにも見える。
実際に、会場で何人かの配信者に普段のコミュニケーションについても話を聞いた。 中間結果では2位と倍近くの差をつけて1位となっていたsaraponponさん。一昨年、女子高生ミスコンのSNS審査で使い始めてから、いまも継続して使っているそうだ。
最初は全然リスナーがつかなかったが「頑張っていくうちに」少しずつ人気がではじめたという。ライブ配信では、具体的に何を「頑張る」のか?
「とにかく、言ったことや約束を守ることが大切だと思っています。何時に配信します、と言ったら、それはちゃんと守る。加えて、リスナーさんの名前や、配信中にコメントで教えてくれた出身地などの情報も忘れないように、配信後に動画を見返したりするんです」 関西弁で陽気に話す姿が会場でも印象的だったあやぴちゃんねるさん。自身の対人恐怖症のような状態を克服したかった彼女は、画面越しであれば人と楽しく話せることに気づきライブ配信を始めたという。
そんなあやぴちゃんねるさんはリスナーのことを「家族」のような存在だという。
「楽しいことも悲しいことも全部ひっくるめて『今日はこんなことあったよ』って話せるのがライブ配信のいいところなんです。たとえば私は泣きながら配信することがあるんですけど、そういうときに一緒に泣いてくれるリスナーさんがいる。今日も、私が人見知りだってみんな知ってるから、励ますDMもたくさん来ていて。だから家族みたいな存在です。特にLINE LIVEは心の温かい人が多い気がします」
配信者に話を聞いていると、動画アプリ「TikTok」の人気ユーザーが多いことに気づいた。ファンから勧められてLINE LIVEを始めるケースも多いらしい。その理由もやはり、TikTokでは埋まらない配信者とファンの距離を縮めるためだ。 中間結果では第2位だった、メンズメイクの配信をしているりょうちけ。さん。彼もTikTokのファンから勧められて始めたという。
「TikTokだとコメントに時差が出ちゃうし、質問に答えるだけで終わっちゃう。でもライブ配信ならそれ以上のコミュニケーションができるし、僕が間違ってたらその場で教えてもらえるんですよね。一緒にメイクを勉強しているって感じです」 24時間配信やLGBTsの講演を行うなど、ライブ配信者の中でもチャレンジングな試みをしている帝 ラスカル 豹さんも、TikTokをきっかけにLINE LIVEを始めた。LGBTsのことをもっと身近に感じてもらうための企画などをライブ配信している。
「ライブ配信サービスの中で、LINE LIVEを選んだ理由は?」という質問に最も多かった回答が「イベントが豊富でチャンスがあるから」だった。
冒頭でも述べたが、LINE LIVEではイベントが積極的に開催されており、毎回賞品も用意されている。ただ配信するだけではなく、そこにゲーム性もプラスされているのがより熱狂に影響しているのだろう。
実際、今回のライブ配信でもリスナーとの協力プレイが見られ、一緒に楽しんでいるように感じられた。
賞品にはオリジナルのLINEスタンプが作成されたり、今回のようなCM出演だったりなど、自分の応援がダイレクトにライバーの未来につながっているとなれば、応援のしがいがあるのかもしれない。
最後に、今回のイベントで最終的に1位を獲得した、ふうかさん(女性部門)と、フンたろーさん(男性部門)のお二人に話を聞いた。 女子高生ミスコンのSNS審査をきっかけにLINE LIVEを始めたというふうかさん。ミスコン後に開催されたイベントで多くのファンが応援してくれるようになったという。
「ご飯を食べてるときや電車待ってるときに、1日の出来事を話したり、逆にリスナーさんの話を聞いたり。普段はほんとにどうでもいい話ばかりしてます。今日のイベントも、特に何も決めずにいつも通りコメントを返したり、楽しんでやっていました」
ふうかさんは、中間結果では1位と倍近くの差をつけられ2位にいたが、終盤信じられないほどの追い上げで124,6781応援ポイントを獲得。ぶっちぎりでMVPを手にした。
前回のイベントに続き連続1位ということだが、あくまでも肩の力が抜けた、ライブ配信者らしいスタンスがあった。 男性部門MVPのフンたろーさんは、驚きと共に振り返る。
「LINE LIVEは1年くらい前からやっていたのですが、数ヶ月前にTik Tokでバズった影響でライブ配信も伸びてきて。正直今回のイベントも1位をとれるとは全く思ってなくてびっくりしました。配信中は他の人がどれくらいのポイント数なのかも見れないから、リスナーの人が今どれくらい差があるのかを教えてくれたりして、チームワークで勝ち取った1位ですね」
中間結果から最後まで1位の座を守り抜いたフンたろーさんは、意外にもLINE LIVEで人気が出始めたのはここ3、4か月のことだそうだ。一般人が多くのリスナーを獲得するためには、別のSNSなどでバズを起こしてファンが一定数ついていることが大きな武器のひとつとなるようだ。
さみしいときや退屈なときに「今日どんなことがあった?」と何気なく返してくれる相手がいる、それはけっこう嬉しいことなのかもしれない。
ライブ配信には、YouTuberのような、しっかりと編集された完成度の高い動画ではないからこその、親密さや心の距離というのがある。
芸能人と違い、画面の向こうの相手は必ずといっていいほど自分にアクションを返してくれる。
見る側もエネルギーを使わず、家で気軽に誰かと会話ができる。内容や情報量、コミュニケーション相手に対する憧れや興奮は重要ではなく、そこにいたって「普通の空間」があるからこそ、若者は熱狂──というよりも、安堵を覚えて集まってくるのかもしれない。
そういった意味で、LINE LIVEをはじめとするライブ配信は若者にとって新たなコンテンツというよりも、気軽に楽しいコミュニケーションができる場として独特の地位を築いているように思えた。
【写真】LINE LIVERたちの写真を全部見る
YouTubeをはじめ、FacebookやInstagram、Twitterなど、日常にすっかり溶け込んだ各種SNSが数年前からライブ配信機能を取り入れ、リアルタイムで簡単に動画配信ができるようになった。その結果、著名人から一般人まで幅広い層が配信を行うようになった。
そのライブ配信動画のなかで特に特徴的なのは、一般人によるライブ配信が人気を博しているということ。たとえば、「LINE LIVE」は少し特殊な盛り上がりを見せている。 LINE LIVEでは、「ライバー」(配信者)が料理や、ときにソファでリラックスしながら配信を行う、とてもカジュアルでゆるい光景が目につく。
しかし、そのゆるい光景とは裏腹に、人気ライバーともなればリスナーたちから数十万ポイント(ポイントアイテムはLINEコインで購入できる/100コイン120円)を集め、多くの人がお金を落としているという事実もある。 著名人や、企画や編集面でも高クオリティなYouTuberの動画ならわかるものの、一般人によるクオリティの高いとは言えないゆるいライブ配信。それがなぜこれほどまでに盛り上がっているのか、正直よくわからない部分もある。
「若者がライブ配信に熱狂するのはなぜなのか?」 その答えを探るべく、12月に開催された、LINE LIVEの人気配信者「スターLIVER」だけが参加できる限定クリスマスパーティー「LINE LIVE Christmas Party 2018(以下、LINE LIVEクリスマスパーティー)」に潜入。その魅力を探ってみた。 取材・文:園田菜々 編集:和田拓也 写真:山口雄太郎
リスナーとの会話で成立するコンテンツ
「LINE LIVE」は、表情に合わせて動くLINEスタンプや、画面の色味が変わるフィルター機能といった“盛れる”要素も多く、若い女性のライバーが多く集まる。その中でも特に人気の配信者は「スターLIVERバッジ」が付与され、「スターLIVER」と認定される。そして今回の「LINE LIVEクリスマスパーティー」で注目したいのは、約60名のスターLIVERが集まった「配信バトル」だ。
1時間の配信でリスナーから集まったポイント数を競い、男女上位3名(計6名)には地上波で放送されるLINE LIVEのCM出演権が与えられるという。
LINE LIVEでは今回に限らず、このようなポイント数を競って賞品を得るイベントが頻繁に行われている。 17時。配信バトルのスタートと同時に、スターLIVERたちはスマホのインカメに向かって話し出す。立ち上がり会場を歩き回る人たちもいれば、テーブルに座ったまま配信を続ける人たちもいて、スタイルは様々だ。 しかしいずれもかしこまった雰囲気はなく、「あ、○○さん来てくれたんだ」「会場やばくない?」などと、とてもフランクな、友達や家族へのテレビ電話のようなトーンの声で和やかにざわめていた。
なかには会場中央のデザートビュッフェをとるためにスマホを一旦置いてしまうスターLIVERもいて、そのゆるさに改めて驚く。 ライバー同士の交流も盛り上がっており、画面を共有しながらお互いに映り合う「コラボ配信」の場面も多々見られた。
知り合いのライバーに「久しぶり!」と声をかけて映り込む人もいれば、その場で「はじめまして」と言ってそのままコラボするライバーもいる。一方で、シングルプレイで着実にポイント数を稼いでいくライバーもいる。 開始から30分がたち、ランキングの中間結果が発表される。女性部門は、前回1位のふうかさんをおさえ、saraponponさんが124,882ポイントで第1位に。男性部門はフンたろーさんが59,981ポイントで1位となった。
バトル後半戦は、中間結果の発表により、会場もだんだんと熱を帯びていった。LINE LIVEの面白い点として、独自のアイテム機能がある。
ポイント数に応じて、アイテムの種類は変わる。100ポイントの薔薇は100コインで購入できる。イルカは15000コインだ。 頻繁にイベントが行われているからか、リスナーにもイベント慣れしている人が多いように感じる。実際、イベントで勝つことを意識して「最後の5分でバラ投げるわ」といったコメントなども見られた。
一瞬、ホストを1位にするために客がドンペリを入れる光景が頭をよぎった。 とにかく、ライバーはリスナーと協力しながらランキング上位を狙っていく。特に終了10分前など白熱する場面では、「(ポイント)お願いします!」というかなり直接的な発言も。
配信のクオリティではなく、あくまでリスナーとの関係性により成立しているコンテンツなのだ、ということを改めて感じた。
リスナーと配信者の距離の近さ
YouTube動画などと比べてゆるさが目立つライブ配信。スターLIVERといえど話すことを仕事にしているわけではなく、多くの場合は一般人だ。話術でリスナーを楽しませる、という気概はあまり感じられない。それではなぜこれほど多くのリスナーがライブ配信に集まり、身銭を切って応援しようと思えるのか。
そこには「距離感の近さ」がひとつ大きな要素としてあげられるだろう。会場では、配信者とリスナーというよりは、気のおけない友人同士のコミュニケーションのような光景が広がっていた。 多くの配信者が、リスナーのコメントをすべて拾いながら話を進めているのだ。これらをひとつひとつ拾って返すのだから、そこで行われるのは一方的なショーではなく、双方向のコミュニケーション。それはどこかスナックのママのような立ち位置と似ているかもしれない。
ライバーはひとりで喋っているように見えて、多数のリスナーのコメントを回している役に徹しているようにも見える。
実際に、会場で何人かの配信者に普段のコミュニケーションについても話を聞いた。 中間結果では2位と倍近くの差をつけて1位となっていたsaraponponさん。一昨年、女子高生ミスコンのSNS審査で使い始めてから、いまも継続して使っているそうだ。
最初は全然リスナーがつかなかったが「頑張っていくうちに」少しずつ人気がではじめたという。ライブ配信では、具体的に何を「頑張る」のか?
「とにかく、言ったことや約束を守ることが大切だと思っています。何時に配信します、と言ったら、それはちゃんと守る。加えて、リスナーさんの名前や、配信中にコメントで教えてくれた出身地などの情報も忘れないように、配信後に動画を見返したりするんです」 関西弁で陽気に話す姿が会場でも印象的だったあやぴちゃんねるさん。自身の対人恐怖症のような状態を克服したかった彼女は、画面越しであれば人と楽しく話せることに気づきライブ配信を始めたという。
そんなあやぴちゃんねるさんはリスナーのことを「家族」のような存在だという。
「楽しいことも悲しいことも全部ひっくるめて『今日はこんなことあったよ』って話せるのがライブ配信のいいところなんです。たとえば私は泣きながら配信することがあるんですけど、そういうときに一緒に泣いてくれるリスナーさんがいる。今日も、私が人見知りだってみんな知ってるから、励ますDMもたくさん来ていて。だから家族みたいな存在です。特にLINE LIVEは心の温かい人が多い気がします」
配信者に話を聞いていると、動画アプリ「TikTok」の人気ユーザーが多いことに気づいた。ファンから勧められてLINE LIVEを始めるケースも多いらしい。その理由もやはり、TikTokでは埋まらない配信者とファンの距離を縮めるためだ。 中間結果では第2位だった、メンズメイクの配信をしているりょうちけ。さん。彼もTikTokのファンから勧められて始めたという。
「TikTokだとコメントに時差が出ちゃうし、質問に答えるだけで終わっちゃう。でもライブ配信ならそれ以上のコミュニケーションができるし、僕が間違ってたらその場で教えてもらえるんですよね。一緒にメイクを勉強しているって感じです」 24時間配信やLGBTsの講演を行うなど、ライブ配信者の中でもチャレンジングな試みをしている帝 ラスカル 豹さんも、TikTokをきっかけにLINE LIVEを始めた。LGBTsのことをもっと身近に感じてもらうための企画などをライブ配信している。
イベントが豊富なLINE LIVEの「ゲーム性」
今回のイベントに潜入したことで、ライブ配信特有の「距離感の近さ」に加えて、LINE LIVEのエンタメ性にも触れることとなった。「ライブ配信サービスの中で、LINE LIVEを選んだ理由は?」という質問に最も多かった回答が「イベントが豊富でチャンスがあるから」だった。
冒頭でも述べたが、LINE LIVEではイベントが積極的に開催されており、毎回賞品も用意されている。ただ配信するだけではなく、そこにゲーム性もプラスされているのがより熱狂に影響しているのだろう。
実際、今回のライブ配信でもリスナーとの協力プレイが見られ、一緒に楽しんでいるように感じられた。
賞品にはオリジナルのLINEスタンプが作成されたり、今回のようなCM出演だったりなど、自分の応援がダイレクトにライバーの未来につながっているとなれば、応援のしがいがあるのかもしれない。
最後に、今回のイベントで最終的に1位を獲得した、ふうかさん(女性部門)と、フンたろーさん(男性部門)のお二人に話を聞いた。 女子高生ミスコンのSNS審査をきっかけにLINE LIVEを始めたというふうかさん。ミスコン後に開催されたイベントで多くのファンが応援してくれるようになったという。
「ご飯を食べてるときや電車待ってるときに、1日の出来事を話したり、逆にリスナーさんの話を聞いたり。普段はほんとにどうでもいい話ばかりしてます。今日のイベントも、特に何も決めずにいつも通りコメントを返したり、楽しんでやっていました」
ふうかさんは、中間結果では1位と倍近くの差をつけられ2位にいたが、終盤信じられないほどの追い上げで124,6781応援ポイントを獲得。ぶっちぎりでMVPを手にした。
前回のイベントに続き連続1位ということだが、あくまでも肩の力が抜けた、ライブ配信者らしいスタンスがあった。 男性部門MVPのフンたろーさんは、驚きと共に振り返る。
「LINE LIVEは1年くらい前からやっていたのですが、数ヶ月前にTik Tokでバズった影響でライブ配信も伸びてきて。正直今回のイベントも1位をとれるとは全く思ってなくてびっくりしました。配信中は他の人がどれくらいのポイント数なのかも見れないから、リスナーの人が今どれくらい差があるのかを教えてくれたりして、チームワークで勝ち取った1位ですね」
中間結果から最後まで1位の座を守り抜いたフンたろーさんは、意外にもLINE LIVEで人気が出始めたのはここ3、4か月のことだそうだ。一般人が多くのリスナーを獲得するためには、別のSNSなどでバズを起こしてファンが一定数ついていることが大きな武器のひとつとなるようだ。
若者はライブ配信に、熱狂ではなく「安心」を覚える
一見、この不可思議な熱狂に首をかしげてしまいそうなライブ配信の世界だったが、中に一歩踏み込めば、そこには配信者と視聴者の距離感が限りなく近い、新たなコミュニティが生まれていた。さみしいときや退屈なときに「今日どんなことがあった?」と何気なく返してくれる相手がいる、それはけっこう嬉しいことなのかもしれない。
ライブ配信には、YouTuberのような、しっかりと編集された完成度の高い動画ではないからこその、親密さや心の距離というのがある。
芸能人と違い、画面の向こうの相手は必ずといっていいほど自分にアクションを返してくれる。
見る側もエネルギーを使わず、家で気軽に誰かと会話ができる。内容や情報量、コミュニケーション相手に対する憧れや興奮は重要ではなく、そこにいたって「普通の空間」があるからこそ、若者は熱狂──というよりも、安堵を覚えて集まってくるのかもしれない。
そういった意味で、LINE LIVEをはじめとするライブ配信は若者にとって新たなコンテンツというよりも、気軽に楽しいコミュニケーションができる場として独特の地位を築いているように思えた。
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