表紙は、故・伊藤計劃さんの傑作SF小説『ハーモニー』10周年を記念して、単行本の初刊行時にカバーイラストを手がけたシライシユウコさんによる書き下ろしイラスト。
『ハーモニー』に登場するトァンとミァハの姿が描かれている。さらに巻頭イラストでは、2人の13年後の姿も。
表紙について、早川書房の担当編集・溝口力丸さんは「『ハーモニー』のハヤカワSFシリーズ Jコレクションからの初刊が2008年12月25日。2018年12月25日という、ちょうど10年ぶりの発売号で百合を特集するなら、これ以外にない」と話す。
宮澤伊織や草野原々、今井哲也、百合SFの最強布陣
特集に書き下ろしを寄せている参加陣も豪華だ。「百合が俺を人間にしてくれた」(外部リンク)というフレーズがネット上で話題を呼んだ『裏世界ピクニック』作者の宮澤伊織さん。
もともと『ラブライブ!』のSF合同同人誌に発表した小説『最後にして最初のアイドル』で、「第4回ハヤカワSFコンテスト」特別賞と星雲賞の日本短編部門を受賞した草野原々さん。 さらに『スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました』の森田季節さんや『少女禁区』の伴名練さんが百合SF小説を描き下ろし。 『ぼくらのよあけ』や『アリスと蔵六』などで知られる漫画家・今井哲也の描き下ろし漫画、SF作家・柴田勝家さんによる百合専門誌『コミック百合姫』編集長のインタビューなど、濃いラインナップが並んでいる。 また、小説や漫画、アニメ、ゲームからおすすめを39作品紹介する百合SFガイドなど、百合SFへの入り口も用意されている。
どうして「百合」特集?
正直「百合SFとは何ぞや?」という疑問もあることだろう。筆者も、特集号に参加している宮澤伊織さんの名作『裏世界ピクニック』を読んでいなければ全くピンと来ていなかったはず。
特集号を担当されたSFマガジン編集部の溝口さんは、「百合」特集になった経緯について説明する。
「(私が)百合が好きで、百合が好きな人が好きだからです。ここ数年、『百合をやっていくぞ』と旗を揚げる作家や書店員の方々の声がとても力強く、版元のほうでも何らか応答したいと考えており、機が熟した形となりました」(溝口さん)
SFマガジン編集部内の反応については「あたたかく見守っていただけました」とのこと。
合計114ページという、2018年刊行の同誌の中でも最大ボリュームによる全力特集。掲載されているコンテンツについて「最強です」と語る。
また、シライシユウコさんによる『ハーモニー』のイラストも大きな反響を呼んでいる。
「『ハーモニー』から10年間、私たちは確かに生きてきたのだ、という実感が湧きました」(溝口さん)
最後に、「2018年をとても豊かなものにしてくれた百合というジャンルに、SF専門誌の編集者としてできうるかぎりの感謝と敬意を注ぎました。特集が好評なら、次の企画もいくつか考えています。読んでいただけると嬉しいです。」と意気込みを見せる。
『SFマガジン』は電子書籍化されないため、興味がある人は紙の本を早めに購入されたし。
なお現在、各種電子書籍サイトにて、早川書房の国内作家セールが展開されている。
前述の『ハーモニー』や『裏世界ピクニック』、『最後にして最初のアイドル』はじめ、190作品が半額という数年に一度あるかないかのビッグウェーブが到来しているのでそちらも要チェックだ。
早川書房の国内作家セール! 50%OFF 12月15日追記:Amazonで百合特集号の『SFマガジン』が完売となった。
■表紙&巻頭イラスト
<harmony/> 10th Anniversaryシライシユウコ
■特集小説
「キミノスケープ」宮澤伊織
「四十九日恋文」森田季節
「幽世知能」草野原々
「彼岸花」
■特集読切コミック
「ピロウトーク」今井哲也
■インタビュー
世界で唯一の百合専門誌
〈コミック百合姫〉編集長 インタビュー
聞き手&構成:柴田勝家
小説家・月村了衛 インタビュー
聞き手&構成:青柳美帆子
■エッセイ
「百合と異界は児童小説の……」
令丈ヒロ子
「花に埋もれて死ね または今、ミニシアターで何が起こっているのか?」
将来の終わり
■イラストエッセイ
「このSFが百合としてすごかった ~2018」
いとう階
■百合SFガイド2018(全39作)
青柳美帆子/いとう階/乾 智志/鯨井久志/佐野泰之/将来の終わり/鈴木 力/谷林 守/俳乱土/林 哲矢/隼瀬茅渟/伏見 完/冬木糸一/古脇瓊児
SFはいいぞ
この記事どう思う?
関連リンク
0件のコメント