なお、現在のメンバーは、社長以下の全員がメンヘラ女子であるという。
代表取締役は「彼氏を束縛するAI」を研究する大学院生
インパクトのある会社名だが、構想中のサービスは至って真面目だ。現在オープンに向けて準備を進めるのが、「社会との距離を縮めたい女子学生」と社会人をつなぐ食事会セッティングサービスの『MM(ミリ)』である。
目的は、いわゆる「出会い」ではない。社会のことを知りたい/就職活動のための情報収集をしたい女子学生が、社会人との接点を持つことにある。
メンヘラテクノロジーは、去る6月に開催された、ガイアックスのスタートアップスタジオによるアイディア創出と事業化イベントがきっかけとなって誕生した。「シェアリングエコノミー」のテーマに応えたメンヘラテクノロジーが法人化の権利を獲得したのだ。
代表取締役をつとめるのは「らんらん」こと高桑蘭佳さん。上記のメンバー写真で中央にいる金髪の女性だ。現在は、東京工業大学大学院修士課程1年に在籍し、「彼氏を束縛する人工知能」を研究しながらフリーライターとして執筆活動も行なっている。
とはいえ、当初から起業の意志があったわけではない。らんらんさんの彼氏はイベント制作会社を経営しているが、「仕事より私のことが好きであってほしい」と願う彼女は、その会社の社外取締役になることで「彼氏のことも把握できるし、もっと束縛がしやすくなる!」と考えたことが、直接のきっかけになったそうだ。らんらん「(前略)メディアアーティストの市原えつこさんに私のやっている研究について少しお話する機会があり、そのときに『メンヘラテクノロジーいいね』と言ってもらえて(中略)言葉がすごく気に入って社名にもしました。」 ──株式会社メンヘラテクノロジーのWantedly「ストーリー」より
……と、起業に至る経緯こそビジネス雑誌でも早々はお目にかからない独特さだが、事業に駆ける思いは等身大な悩みから生まれている。らんらん「(前略)彼氏の会社の仕事をたまに手伝ったりするようになり、あるとき『社外取締役くらいになりたいな〜』と言ったら、彼氏が『いいよ』って言ったんです。それが超嬉しかったんですけど、なかなか社外取締役にしてくれないので『いつになったらしてくれるの?』と聞いたら、『冗談だよ』と言われてしまい喧嘩になりました。その結果、彼氏が『起業して、なにか事業を立ち上げてリリースした実績があれば、社員たちにも説明できるから社外取締役にしてもいい』という条件を出してきて仲直りしました。そんなときに参加したのが、ガイアックスのサマープログラムでした。」 ──株式会社メンヘラテクノロジーのWantedly「ストーリー」より
「現在の5倍はメンヘラが深かった」というらんらんさんが、彼氏と付き合い始めたことで世界が広がり、社会人との交流機会を持つなかで、闇を深めるのに注いでいたエネルギーを上手に活用できるようになった。そこから「もっとカジュアルに学生が社会人と交流できる機会をつくれるサービスがあったら良いな」と考えたのだという。
「彼氏との喧嘩を仲裁する技術の開発もしたい」
メンヘラテクノロジーはまさにこれからの企業だが、KAI-YOUは早速、らんらんさんにメールインタビューを行なった。──社会人との食事会サービスとのことで、どういった人が参加できる予定ですか。募集方法や報酬の設定など、現段階で話せる範囲でお聞かせください。
らんらん 社会人の参加条件は、「社会人経験があること」「学生のキャリア相談や質問に答えてくれること」とする予定で、現在は事前登録を受け付けています。参加できる学生は女性に限りますが、高校生以下は不可です。
就活の情報収集や社会勉強をしたい女子学生は、話を聞いてみたい業界・企業・職種の社会人宛に食事会の募集を出すことができます。また、それを応援してくれる社会人からも学生に話せることなどの条件を指定して募集をかけられます。
──営業メンバーを募集されていますが、どういったセールスを行うのでしょうか?
らんらん 現在、飲食店と提携の準備を進めており、食事会は当サービスの提携飲食店で行います。そのため、営業先も提携できる飲食店となります。渋谷駅・表参道駅・恵比寿駅の女子学生……メンヘラテクノロジー社員である私たちにとっても「行きたい」と思える飲食店を中心に交渉中です。
提携店で公開許可が取れた店舗は、「アリービーチ 渋谷宇田川店」さんなどがあります。
ビジネスモデルとしては、提携飲食店から開催にあたって手数料をいただく形を予定しています。
──メンヘラテクノロジーのサービスも気になりますが、らんらんさんの「彼氏束縛AI」も興味を引かれる研究です。今後も社名同様な新たなテクノロジーの想定はありますか?
らんらん 引き続き、大学院でも研究を行なっております。詳細には公開できませんが、最近、彼氏との喧嘩で病むことが多く……彼氏との喧嘩をうまく仲裁してくれる技術の開発をしたいと思っています。
──先日は「ITベンチャー社長と飲めるか企画」を実施されていましたが、企画の経緯と結果はいかがでしたか?
らんらん 数日後に企画の結果をまとめた記事を公開する予定なので、そちらを読んでもらえると嬉しいです!渋谷のスクランブル交差点でITベンチャー社長と飲めるか企画スタート⚡⚡⚡
— らんらん🤖❤️ (@pascarrr) 2018年10月20日
雨辛すぎ……😂
フォロワーにITベンチャー社長いるよって方、ぜひシェアお願いします🙏❤ pic.twitter.com/MBV95KD9pJ
メンヘラ女子たちがもっと幸せに病める世界を
上記のWantedlyページで、らんらんさんは「心の病」を指すネットスラングとして使われてきたメンヘラが、より広範な意味を持つことに触れている。「病気とかパーソナリティーとかではなくて、状態を指す言葉」になっていると考えた上で、誰もがなりやすい「風邪」のように、自らの心の状態を「メンヘラ」という言葉で表現し、周りもそれを受け入れるような世界をつくるテクノロジーの開発を目指したい、と語る。
「壮大なビジョンやミッションはないけれど(メンヘラなので社会貢献とか考えている余裕がない)」とも書いているが、メンヘラテクノロジーのつくる「幸せな病み」に救われる人は、きっといるはずだ。「きっと自分は社会不適合者なんだ…と思い込み、ひたすら病んでいた時期があったけど、いろんな社会人と会って話す機会があったことで世界が広がり、幸せに病めるようになった」というのがメンヘラテクノロジーのメンバー全員に共通した体験。 ──「メンヘラ社長らんらんの秘書になって働きたい人Wanted!」より
それは、ともすると、考えている余裕がなかった社会貢献になってしまうのかもしれない。彼女たちの等身大なトライは、今、はじまったばかりである。
※2018年10月26日追記:Wantedlyからのアカウント停止措置により、現在はWandelyでの採用は撤退している。その経緯とサービス紹介はあらためてnoteで綴られた
※2018年10月28日追記:10月27日にWantedly利用停止が解除された模様。WantedlyのCFOと直接話をしたなど、その経緯も投稿されている。
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