犬童一利監督のもと金井浩人さんや池脇千鶴さんらが出演する映画『きらきら眼鏡』。9月から順次全国公開中の同作は、作家・森沢明夫さんの恋愛小説を原作に、1冊の古本がきっかけで出会った男女が、互いの恋人の死に向き合う物語だ。
原作の森沢さんから熱烈なオファーを受けたという監督の犬童一利さんに、幸運にも私たち「きらきら眼鏡学生スタッフ」はインタビューする機会を得た。 「きらきら眼鏡学生スタッフ」とは、文字通り有志で映画『きらきら眼鏡』のPRのお手伝いをさせていただいている大学生スタッフだ。しかし、当然ながら映画のPRなど未経験。どのように作品の魅力をアピールすべきか、犬童監督の過去作品を調べてみると……
なんとR-指定さんとDJ松永さんによるヒップホップユニット・Creepy Nuts「教祖誕生」のMVで監督・脚本を手がけているではないか。 切ない恋を描いた『きらきら眼鏡』と鬱屈とした社会を表現した「教祖誕生」。
一見するとかなりかけ離れた2作品でありながら、監督は同じ犬童一利。「この振り幅、面白い!」と感じた私たちの直感は、『きらきら眼鏡』を観たことで確信に変わった。そのタイトルからは想像がつかないほど、人間の醜い面においても丁寧かつ鋭く描かれていたからだ。
こうして私たちは、犬童監督に「教祖誕生」のMVの制作秘話を切り口にインタビューを敢行。すると、妥協のないモノづくりへの姿勢を感じただけでなく、Creepy Nutsの2人が「教祖誕生」のMV制作に対して、想像以上の熱量を有していたことが判明した。
犬童一利(以下、犬童) よろしくお願いします。
──以前、犬童監督はFacebookで「もともとフリースタイルダンジョンが好きで、R-指定が大好き」と書かれていらっしゃいましたが、フリースタイルダンジョンを見始めたきっかけは?
犬童 もともとデビュー作の『カミングアウト』という映画を撮るとき、一番最初のプロットは、ゲイのラッパーの話だったんです。「ラップでカミングアウトする」という内容を考えたときに般若さんなどを聴いて、ヒップホップに詳しくはないけど面白いと思って。
「フリースタイルダンジョン」もきっかけは覚えてないけど、一時期めちゃくちゃハマって、あの生の雰囲気が好きですね。当時はR-指定が圧倒的に強い時代で、ステージ上でもゴリゴリで、その強さに純粋に惹かれました。
そんなときに、ちょうどCreepy NutsのMVのお話がきて、結果的に「教祖誕生」を撮らせてもらえることになりました。
──「教祖誕生」を撮ると決まったときの率直な気持ちは?
犬童 正直、曲としては「難しいな」と思いました。いろいろな意味ですごく難しい。ストレートというよりもアンチテーゼな曲ですし。
「合法的トビ方ノススメ」や「みんな、ちがってみんないい。」、「助演男優賞」は曲のテンポも速くて、MVもバンバンカットを割って派手じゃないですか。どちらかというと僕には不得意な映像だなと思っていたので。 ただ、そういう意味では「教祖誕生」では僕なりの戦い方はあると思いました。
犬童 「教祖誕生」の歌詞って非常に難解じゃないですか。僕としてはそれを「やっぱり物語で伝えたいな」と。
「教祖誕生」で一番思ったのは、「聴く人が聴いたら『”Creepy Nutsが”この歌詞の内容を歌ってる』って思われるんじゃないか?」ということですね。けど、これはMVに登場するあのロン毛の主人公、架空の教祖ぶってるヤツのリリックですよね。
2人が主演で映像を撮っちゃうとパッと聴かれたときに、この歌詞が「“Creepy Nutsの”メッセージや言葉」と思われる可能性があるなと思ったんです。だからMVの主演は別の人物を立てたいなと。実際、2人の出演はワンカットだけでしたし。
──Creepy Nutsの2人に会ったときのことを教えてください。
犬童 率直な印象として、めちゃくちゃ礼儀正しかったです。ラップをしているときのRさんは若干怖いイメージもあったので。めっちゃオラオラでくるのかなとか、言いたいこと言えるかなとか考えていたら、会った瞬間「すみません、よろしくお願いします」って帽子とって挨拶していただいて。
それから「教祖誕生」の歌詞のストーリーのことや曲の意図をいろいろ聴いて、新たにわかったこともすごくありました。だからこそ「絶対ちゃんと伝えたいな」って。歌だけ聴くよりも、映像にするからこそビジュアルで伝えられることがある。ショートムービー形式にして主人公を立てたのには、そういった経緯がありました。
犬童 たぶん違いますね。最初に会った段階では、まだ「どんなふうにしようかな」というのが自分の中にざっくりあった程度です。
──アーティスト本人と直接やり取りして、彼らの意思やメッセージを映像にも反映していくということですね。
犬童 もちろんです。本人の意思は大切にしたいですね。2人がこの物語に、この曲に込めた思いを具現化するっていうのが、一番重要でしたからね。
たとえば僕は「プロリスナー」って言葉がわからなかったんです。それで松永さんとのTwitterのDMでやり取りする中で「実際に2人がパッと思いつくプロリスナー的な人がいたら教えてください」って聞いてみたんです。
そしたら松永さんが、彼が思う「プロリスナー」のTwitterアカウントをまとめてくれたり、めちゃくちゃ詳しく教えてくれました。
やっぱり「プロリスナー」がこの曲の主人公であり、歌詞が“彼(プロリスナー)の”一人称の言葉じゃないですか。それが「“Creepy Nutsの”一人称の言葉と受け取られたら怖いな」っていうのは常に意識してたんですよね。
このあたりは、松永さんとのやり取りがとても大きくて、彼もめっちゃアツく返してくれたので、僕としてもひとつひとつ納得・確認しながら進めることができました。
──かなり密なやり取りをしていたんですね。
犬童 そうなんですよ。「デフな説法 ドープな感動…(メイク万札 モストハーコー イルな洗脳 ブラックな商法)」が、調べてもわからなくて、「これをちょっと教えてください」ってメッセージを送って。
すると松永さんから「Rにも確認するのでちょっとお待ちください」って。そのあとRさんも、めちゃくちゃ丁寧に答えてくれました。ほかにも「モストハーコー」は「most hard core」という意味だと初めて知りました(笑)。
それから2人のラジオ「悩む相談室」もたくさん聴きました。彼らのプライベートな部分とか、人間性を知りたかったんです。
何度かやり取りをしたあとにシナリオ案を送って、松永さんから「最高です」って言ってもらえたときはうれしかったですね。僕としても「良い打ち合わせだったな」と毎回感じていました。
──監督は「打ち合わせのときから、お互い近い価値観を持っていると思えた」そうですが、「近い価値観」についてもう少し具体的に教えていただけますか?
犬童 ひとつは純粋に「教祖誕生」の曲のテーマですね。批評してプロ気取りになって、リスク無くネット上でいろいろなことを書いたり、人を傷つけるようなことを匿名で書いてる人たちが多いというのは、ずっと自分の中でも感じていたことでした。
その上で、彼らがひとつの曲に対して、ものすごくしっかり考えて考え抜いて歌詞をつくって、リリースしてる。そういうところを心からリスペクトしたし、自分もそうやって作品をつくりたいと。
彼らが作品に込めたメッセージやモノづくりの姿勢には、共感する部分が多かったですね。
犬童 それこそ松永さんとのコミュニケーションですね。
言葉の意味は深く追及しないと、どういう意図で歌詞にしているのかわからない。そもそも単語がわからないことも結構多かったので、すべての歌詞において自分がわからないってところは一切無くしました。
特にこの曲をつくった彼らの思いは打ち合わせで何回も聞くようにしました。一番は「なんで二人がこれを作りたかったのか」の部分。「プロリスナー」が主人公だけど、本当の主人公は2人じゃないですか。だから2人の言葉やメッセージは、絶対間違った形で表現したくありませんでした。
──完成したMVをCreepy Nutsの2人が感想は、どのようなものだったのでしょうか?
犬童 すごい喜んでくれました。「意図を汲んでつくってくれた」と言ってもらえたのはうれしかったですね。
ただ、YouTubeのコメントを見てると、本当のメッセージを汲んでくれているのは、かなり少なくて。「表面的に見られている」という部分はすごくありました。
だけど、モノづくりをする上で、常に誰にでもわかりやすい表現を選択すべきなのかどうか。個人的には、わかってくれる人は少なくなるかもしれないけど、表現のレベルを下げたくない。そこは、松永さんとのやり取りで互いにすごく共感したところですね。
犬童 パソコン・スマホで観ることが悪いとは思わないですが、それがきっかけとなって、最終的には作品が映画館に返ってきてほしいですね。
ストリーミング配信によって、映像作品への間口が広がるのは良いことだと思います。けど、やっぱり映画館は環境がまったく違うので。暗闇の中で、視覚と聴覚以外の感覚を制限されますよね。それに対して、パソコンで観るとなると、周囲の情報も視界に入ってきますから。
──作品への没入感は映画館ならではの強みということですね。
犬童 そうですね。そもそも映画は、映画館で観るものとしてつくっていますからね。たとえば、画面のサイズも映画館のスクリーンサイズで撮っています。特に『きらきら眼鏡』はスマホやパソコンで観たら、表情が伝わり切らないところが結構あると思います。
テレビやパソコンで観ることを考えて、画づくりすることが大切な場合もありますけど、そちらに合わせるのは、自分のつくりたい作品とは違うのかな思っています。
当然、音響設備も全然違いますし、同じ空間でたくさんの人と観るのもひとつの大きな醍醐味なので、ぜひ映画館で観ていただけるとうれしいです。
原作の森沢さんから熱烈なオファーを受けたという監督の犬童一利さんに、幸運にも私たち「きらきら眼鏡学生スタッフ」はインタビューする機会を得た。 「きらきら眼鏡学生スタッフ」とは、文字通り有志で映画『きらきら眼鏡』のPRのお手伝いをさせていただいている大学生スタッフだ。しかし、当然ながら映画のPRなど未経験。どのように作品の魅力をアピールすべきか、犬童監督の過去作品を調べてみると……
なんとR-指定さんとDJ松永さんによるヒップホップユニット・Creepy Nuts「教祖誕生」のMVで監督・脚本を手がけているではないか。 切ない恋を描いた『きらきら眼鏡』と鬱屈とした社会を表現した「教祖誕生」。
一見するとかなりかけ離れた2作品でありながら、監督は同じ犬童一利。「この振り幅、面白い!」と感じた私たちの直感は、『きらきら眼鏡』を観たことで確信に変わった。そのタイトルからは想像がつかないほど、人間の醜い面においても丁寧かつ鋭く描かれていたからだ。
こうして私たちは、犬童監督に「教祖誕生」のMVの制作秘話を切り口にインタビューを敢行。すると、妥協のないモノづくりへの姿勢を感じただけでなく、Creepy Nutsの2人が「教祖誕生」のMV制作に対して、想像以上の熱量を有していたことが判明した。
「フリースタイルダンジョン」もR-指定も大好き
──今回、犬童監督が監督・脚本を手掛けた、Creepy Nuts「教祖誕生」のMVの制作秘話を通じて、監督のモノづくりに対する姿勢について迫りたいと思います。よろしくお願いします。犬童一利(以下、犬童) よろしくお願いします。
──以前、犬童監督はFacebookで「もともとフリースタイルダンジョンが好きで、R-指定が大好き」と書かれていらっしゃいましたが、フリースタイルダンジョンを見始めたきっかけは?
犬童 もともとデビュー作の『カミングアウト』という映画を撮るとき、一番最初のプロットは、ゲイのラッパーの話だったんです。「ラップでカミングアウトする」という内容を考えたときに般若さんなどを聴いて、ヒップホップに詳しくはないけど面白いと思って。
「フリースタイルダンジョン」もきっかけは覚えてないけど、一時期めちゃくちゃハマって、あの生の雰囲気が好きですね。当時はR-指定が圧倒的に強い時代で、ステージ上でもゴリゴリで、その強さに純粋に惹かれました。
そんなときに、ちょうどCreepy NutsのMVのお話がきて、結果的に「教祖誕生」を撮らせてもらえることになりました。
──「教祖誕生」を撮ると決まったときの率直な気持ちは?
犬童 正直、曲としては「難しいな」と思いました。いろいろな意味ですごく難しい。ストレートというよりもアンチテーゼな曲ですし。
「合法的トビ方ノススメ」や「みんな、ちがってみんないい。」、「助演男優賞」は曲のテンポも速くて、MVもバンバンカットを割って派手じゃないですか。どちらかというと僕には不得意な映像だなと思っていたので。 ただ、そういう意味では「教祖誕生」では僕なりの戦い方はあると思いました。
「教祖誕生」の歌詞だからこそMVの主人公は2人以外で
──監督なりの戦い方というのは、映画監督ならではの「短編映画風」ということですか?犬童 「教祖誕生」の歌詞って非常に難解じゃないですか。僕としてはそれを「やっぱり物語で伝えたいな」と。
「教祖誕生」で一番思ったのは、「聴く人が聴いたら『”Creepy Nutsが”この歌詞の内容を歌ってる』って思われるんじゃないか?」ということですね。けど、これはMVに登場するあのロン毛の主人公、架空の教祖ぶってるヤツのリリックですよね。
2人が主演で映像を撮っちゃうとパッと聴かれたときに、この歌詞が「“Creepy Nutsの”メッセージや言葉」と思われる可能性があるなと思ったんです。だからMVの主演は別の人物を立てたいなと。実際、2人の出演はワンカットだけでしたし。
──Creepy Nutsの2人に会ったときのことを教えてください。
犬童 率直な印象として、めちゃくちゃ礼儀正しかったです。ラップをしているときのRさんは若干怖いイメージもあったので。めっちゃオラオラでくるのかなとか、言いたいこと言えるかなとか考えていたら、会った瞬間「すみません、よろしくお願いします」って帽子とって挨拶していただいて。
それから「教祖誕生」の歌詞のストーリーのことや曲の意図をいろいろ聴いて、新たにわかったこともすごくありました。だからこそ「絶対ちゃんと伝えたいな」って。歌だけ聴くよりも、映像にするからこそビジュアルで伝えられることがある。ショートムービー形式にして主人公を立てたのには、そういった経緯がありました。
R-指定とDJ松永、2人とのやり取りが大きかった
──最初に2人に会ったときには脚本の内容がある程度固まっていたのでしょうか?犬童 たぶん違いますね。最初に会った段階では、まだ「どんなふうにしようかな」というのが自分の中にざっくりあった程度です。
──アーティスト本人と直接やり取りして、彼らの意思やメッセージを映像にも反映していくということですね。
犬童 もちろんです。本人の意思は大切にしたいですね。2人がこの物語に、この曲に込めた思いを具現化するっていうのが、一番重要でしたからね。
たとえば僕は「プロリスナー」って言葉がわからなかったんです。それで松永さんとのTwitterのDMでやり取りする中で「実際に2人がパッと思いつくプロリスナー的な人がいたら教えてください」って聞いてみたんです。
そしたら松永さんが、彼が思う「プロリスナー」のTwitterアカウントをまとめてくれたり、めちゃくちゃ詳しく教えてくれました。
やっぱり「プロリスナー」がこの曲の主人公であり、歌詞が“彼(プロリスナー)の”一人称の言葉じゃないですか。それが「“Creepy Nutsの”一人称の言葉と受け取られたら怖いな」っていうのは常に意識してたんですよね。
このあたりは、松永さんとのやり取りがとても大きくて、彼もめっちゃアツく返してくれたので、僕としてもひとつひとつ納得・確認しながら進めることができました。
──かなり密なやり取りをしていたんですね。
犬童 そうなんですよ。「デフな説法 ドープな感動…(メイク万札 モストハーコー イルな洗脳 ブラックな商法)」が、調べてもわからなくて、「これをちょっと教えてください」ってメッセージを送って。
すると松永さんから「Rにも確認するのでちょっとお待ちください」って。そのあとRさんも、めちゃくちゃ丁寧に答えてくれました。ほかにも「モストハーコー」は「most hard core」という意味だと初めて知りました(笑)。
それから2人のラジオ「悩む相談室」もたくさん聴きました。彼らのプライベートな部分とか、人間性を知りたかったんです。
何度かやり取りをしたあとにシナリオ案を送って、松永さんから「最高です」って言ってもらえたときはうれしかったですね。僕としても「良い打ち合わせだったな」と毎回感じていました。
──監督は「打ち合わせのときから、お互い近い価値観を持っていると思えた」そうですが、「近い価値観」についてもう少し具体的に教えていただけますか?
犬童 ひとつは純粋に「教祖誕生」の曲のテーマですね。批評してプロ気取りになって、リスク無くネット上でいろいろなことを書いたり、人を傷つけるようなことを匿名で書いてる人たちが多いというのは、ずっと自分の中でも感じていたことでした。
その上で、彼らがひとつの曲に対して、ものすごくしっかり考えて考え抜いて歌詞をつくって、リリースしてる。そういうところを心からリスペクトしたし、自分もそうやって作品をつくりたいと。
彼らが作品に込めたメッセージやモノづくりの姿勢には、共感する部分が多かったですね。
表現のレベルを下げたくない
──監督これまでの作品で、LGBT、介護、がん治療などについて、綿密な取材をもとにリアリティにこだわって描かれています。「教祖誕生」のMVでリアリティにこだわった点を教えてください。犬童 それこそ松永さんとのコミュニケーションですね。
言葉の意味は深く追及しないと、どういう意図で歌詞にしているのかわからない。そもそも単語がわからないことも結構多かったので、すべての歌詞において自分がわからないってところは一切無くしました。
特にこの曲をつくった彼らの思いは打ち合わせで何回も聞くようにしました。一番は「なんで二人がこれを作りたかったのか」の部分。「プロリスナー」が主人公だけど、本当の主人公は2人じゃないですか。だから2人の言葉やメッセージは、絶対間違った形で表現したくありませんでした。
──完成したMVをCreepy Nutsの2人が感想は、どのようなものだったのでしょうか?
犬童 すごい喜んでくれました。「意図を汲んでつくってくれた」と言ってもらえたのはうれしかったですね。
ただ、YouTubeのコメントを見てると、本当のメッセージを汲んでくれているのは、かなり少なくて。「表面的に見られている」という部分はすごくありました。
だけど、モノづくりをする上で、常に誰にでもわかりやすい表現を選択すべきなのかどうか。個人的には、わかってくれる人は少なくなるかもしれないけど、表現のレベルを下げたくない。そこは、松永さんとのやり取りで互いにすごく共感したところですね。
「映画は映画館で観るものとしてつくっている」
──最後に、最近では映画のストリーミング配信も普及し、スマートフォンやパソコンで手軽に観られるようになっています。そうした時代に、映画館に映画を観に行くことの魅力をどう考えていますか?犬童 パソコン・スマホで観ることが悪いとは思わないですが、それがきっかけとなって、最終的には作品が映画館に返ってきてほしいですね。
ストリーミング配信によって、映像作品への間口が広がるのは良いことだと思います。けど、やっぱり映画館は環境がまったく違うので。暗闇の中で、視覚と聴覚以外の感覚を制限されますよね。それに対して、パソコンで観るとなると、周囲の情報も視界に入ってきますから。
──作品への没入感は映画館ならではの強みということですね。
犬童 そうですね。そもそも映画は、映画館で観るものとしてつくっていますからね。たとえば、画面のサイズも映画館のスクリーンサイズで撮っています。特に『きらきら眼鏡』はスマホやパソコンで観たら、表情が伝わり切らないところが結構あると思います。
テレビやパソコンで観ることを考えて、画づくりすることが大切な場合もありますけど、そちらに合わせるのは、自分のつくりたい作品とは違うのかな思っています。
当然、音響設備も全然違いますし、同じ空間でたくさんの人と観るのもひとつの大きな醍醐味なので、ぜひ映画館で観ていただけるとうれしいです。
この記事どう思う?
作品情報
きらきら眼鏡
- 公開
- 2018年9月7日(金)TOHOシネマズららぽーと船橋先行公開
- 9月15日(土)有楽町スバル座ほか全国順次公開
【あらすじ】
「時間って命と同じだから、もたもたしてたら時間切れになっちゃうよ」。恋人の死を乗り越えられずにいた明海は、一冊の古本がきっかけで出会ったあかねから、そう教えられる。いつも前向きで笑顔のあかねは、見たものぜんぶを輝かせる“きらきら眼鏡”をかけているという。だが、彼女もまた余命宣告された恋人の裕二と向き合うつらい現実を抱えていた。過去から立ち直れず、もがきながら生きてきた明海にとって、毎日を輝かせようとするあかねに、次第に惹かれていく―。
関連リンク
0件のコメント