8月10日から12日までの3日間、世界最大級の同人誌即売会「コミックマーケット94」(C94)が開催された。
猛暑や台風などが心配されたものの、結果的には天候にも恵まれ、合計53万人が来場し盛況のうちに幕を閉じた。
終了後には、2019年のコミケの日程も発表され、東京オリンピック・パラリンピックの影響から初めて4日間にわたり開催されることが発表された(関連記事)。
熱中症に対する積極的な注意喚起が目立ったC94から、2019年や2020年に開催されるコミケと「DOUJIN JAPAN2020(仮)」など、大きな変化を迎えつつあるコミケについて、共同代表のひとり・市川孝一さんに話を聞いた。
市川孝一(以下、市川) 7月下旬から8月初旬に35℃以上を記録していたものの、コミケ期間中はそこまで気温は上がりませんでした。ただ、僕らとしても、事前のアナウンスやヒヤロン(冷却パック)の用意など、何が起きるかわからない状況に対応できるよう準備していました。
取り越し苦労といえばそうですが、とはいえ熱中症で倒れた方はゼロではありません。そういった方々にもきちんと対応できたのはよかったと思います。
──救護室の定員がオーバーすることはなかったのでしょうか?
市川 2013年のコミックマーケット84での猛暑を受けて、2014年夏のコミックマーケット86より、東地区の救護室の場所を東4ホールから、ずっと広い東1ホールの主催者事務室へ場所を移し、万が一傷病者が増えた場合でも、対応ができるようにしています。
また、その部屋がいっぱいになった場合を想定して、スタッフの休憩室を救護室に切り替えるシステムを構築していますが、今までそこまでの対応をしたことはありません。
──会場内アナウンスやスタッフからの声かけでも、暑さへの注意が多かったように感じました。
市川 最初から「意識的にやろう」という話をしていました。アナウンスに関しては「1日のうちに何回やる」というところまで落とし込んでいました。
暑さへの準備は、スタッフに対しても同様です。「参加者を守る立場のスタッフが倒れることはあってはならない」という話をしていて、それぞれが考え自発的に準備をしてくれたと思います。
──コミケも含め「天候や気候に対して準備されていないイベントは中止すべきではないか?」という議論もありますが、そういう意味での対策としては万全だったということですか?
市川 万全というと語弊があるかもしれませんが、求められる一定ラインはクリアできていると思います。東京ビッグサイトで開催されるようになって20年。その中で蓄積されたノウハウや反省を踏まえて、きちんと準備することができました。
それだけでなく、参加者の皆さん1人ひとりがしっかり準備をして参加しているのも、来場者数に比して、熱中症で調子を崩された方が少ない大きな要因ですね。
──参加者の年齢層など、長年続くイベントだからこそ対策の種類も広がっていくのではないでしょうか?
市川 そうですね。コミケには子ども連れの方もいれば、60代・70代の方もいる。コミケ参加者の年齢層の幅は広がっているので、そういった変化には今後も対応していかなくてはいけません。
また外国人の参加者も増えています。Facebookでも英語・中国語・韓国語で事前の熱中症対策を呼びかけましたし、当日は国際部を設けてさまざまな言語に対応しながら、外国人の方々も救護室が不便なく使えるようにしています。
同時に同人誌即売会やキャラクターコンテンツの展示即売会を主催している計7団体が協力した「DOUJIN JAPAN2020(仮)」(関連記事)も発表されましたが、具体的にはどういったものなのでしょうか?
市川 オリンピックの影響で他のイベントと同様に同人誌即売会の回数がやや減ることは決まっています。コミケも東京ビッグサイトで開催できますが、東展示棟は使用できない。そのため既存の西展示棟と新設される南展示棟、そして青海展示棟で開催します。
僕らも含め、即売会系のイベントは規模を縮小せざるを得ない。その中で、どうやって盛り上げられるのかと考えたときに「各イベント一緒に何かやるのがいいのではないか?」と。
現時点で具体的な内容は言えませんが、毎月7団体が集まって企画について話し合っている段階です。
──どういったことを話し合っているのでしょうか?
市川 たとえば、「どうしたら多くの人が参加してくれるか?」「新刊を出してくれるか?」ですね。コミケは同人誌即売会なので、サークルさんの出す新刊が魅力のひとつです。
従来であれば夏と冬だったものが、GWにタイミングがずれ、他の即売会も日程が変わることでどんな影響があるか。そうした中でも、できるだけサークルさんが新刊を出しやすい環境づくりを目指しています。
──時期ももちろんそうですが、2019年から東展示棟が使えないことで会場自体も大きく変わりますね。
市川 西展示棟と南展示棟の間や、もっと離れた青海展示棟との導線はどうするのか、すでにスタッフからもいろいろな意見が出ています。1年後に控えるコミックマーケット96に向けて、毎週のように集まって議論を進めているところです。
市川 公式サイトでお知らせした通り、東京ビッグサイトの利用制約期間は、東展示棟が使用できないため、先の3つの展示棟を利用しても、1日当たりの面積は現状の約75%になります。さらにサークルに割り当てる面積で比較すれば、今回のコミックマーケット94比の約71%に留まります。
現状の会場面積でも、残念ながら多くの抽選漏れが出ているのが実情であり、多くのサークルに自由な表現の場を提供するというコミケットの理念を鑑みると、4日間開催というのは大きな決断でしたが自然な流れでした。
2〜3年前からスタッフの責任者たちと、どのような開催形態が望ましいか、その運営体制を組むことができるかという議論を重ね、最終判断に至りました。参加者・関係者のみなさんとの協力の下、一緒に楽しめればと思います。
──最後に、2020年GW以降のコミケについてすでに考えていることはありますか?
市川 2019年と2020年のイレギュラーな体制を経て、その後は現体制に戻ります。会場に関していえば、東展示棟・西展示棟・南展示棟の3つの全16ホールが使えるようになる。「規模が広がることで何か新しいことができるのではないか?」とすでに考えています。
たとえばコスプレイヤーの方々が集まるコスプレエリアはすべて屋外で、現状、雨が降ると非常に厳しいわけですが、それなら屋内にコスプレエリアをつくれるのではないかとか。ほかにも、「更衣室が増やせる?」「サークル参加の抽選漏れが減る?」など、さまざまな可能性を話し合っています。
さらに、最近は海外からのサークル参加も増えているので、そういった方々をどうやって受け入れていくのかも課題のひとつです。
アジアをはじめ、海外にもマンガ・アニメ・ゲームのイベントがたくさんあり、そうしたイベントのネットワークとして、2015年春のコミケットスペシャル6がきっかけとなって発足した「国際オタクイベント協会(IOEA:International Otaku Expo Association)」という組織もあります。
将来的には、そういった海外の組織・団体との連携も視野に入れていきたいと考えています。
猛暑や台風などが心配されたものの、結果的には天候にも恵まれ、合計53万人が来場し盛況のうちに幕を閉じた。
終了後には、2019年のコミケの日程も発表され、東京オリンピック・パラリンピックの影響から初めて4日間にわたり開催されることが発表された(関連記事)。
熱中症に対する積極的な注意喚起が目立ったC94から、2019年や2020年に開催されるコミケと「DOUJIN JAPAN2020(仮)」など、大きな変化を迎えつつあるコミケについて、共同代表のひとり・市川孝一さんに話を聞いた。
1日の回数まで決められていた暑さ・熱中症のアナウンス
──コミックマーケット94では、熱中症をはじめ暑さ対策に関する事前のアナウンスを頻繁に行っていましたが、開催してみてどうでしたか?市川孝一(以下、市川) 7月下旬から8月初旬に35℃以上を記録していたものの、コミケ期間中はそこまで気温は上がりませんでした。ただ、僕らとしても、事前のアナウンスやヒヤロン(冷却パック)の用意など、何が起きるかわからない状況に対応できるよう準備していました。
取り越し苦労といえばそうですが、とはいえ熱中症で倒れた方はゼロではありません。そういった方々にもきちんと対応できたのはよかったと思います。
──救護室の定員がオーバーすることはなかったのでしょうか?
市川 2013年のコミックマーケット84での猛暑を受けて、2014年夏のコミックマーケット86より、東地区の救護室の場所を東4ホールから、ずっと広い東1ホールの主催者事務室へ場所を移し、万が一傷病者が増えた場合でも、対応ができるようにしています。
また、その部屋がいっぱいになった場合を想定して、スタッフの休憩室を救護室に切り替えるシステムを構築していますが、今までそこまでの対応をしたことはありません。
──会場内アナウンスやスタッフからの声かけでも、暑さへの注意が多かったように感じました。
市川 最初から「意識的にやろう」という話をしていました。アナウンスに関しては「1日のうちに何回やる」というところまで落とし込んでいました。
暑さへの準備は、スタッフに対しても同様です。「参加者を守る立場のスタッフが倒れることはあってはならない」という話をしていて、それぞれが考え自発的に準備をしてくれたと思います。
──コミケも含め「天候や気候に対して準備されていないイベントは中止すべきではないか?」という議論もありますが、そういう意味での対策としては万全だったということですか?
市川 万全というと語弊があるかもしれませんが、求められる一定ラインはクリアできていると思います。東京ビッグサイトで開催されるようになって20年。その中で蓄積されたノウハウや反省を踏まえて、きちんと準備することができました。
それだけでなく、参加者の皆さん1人ひとりがしっかり準備をして参加しているのも、来場者数に比して、熱中症で調子を崩された方が少ない大きな要因ですね。
──参加者の年齢層など、長年続くイベントだからこそ対策の種類も広がっていくのではないでしょうか?
市川 そうですね。コミケには子ども連れの方もいれば、60代・70代の方もいる。コミケ参加者の年齢層の幅は広がっているので、そういった変化には今後も対応していかなくてはいけません。
また外国人の参加者も増えています。Facebookでも英語・中国語・韓国語で事前の熱中症対策を呼びかけましたし、当日は国際部を設けてさまざまな言語に対応しながら、外国人の方々も救護室が不便なく使えるようにしています。
GW開催で目指すのは新刊が出しやすい環境づくり
──続いて、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに関してうかがいます。2020年のコミケは、オリンピックの影響でゴールデンウィーク開催が決まりました。同時に同人誌即売会やキャラクターコンテンツの展示即売会を主催している計7団体が協力した「DOUJIN JAPAN2020(仮)」(関連記事)も発表されましたが、具体的にはどういったものなのでしょうか?
市川 オリンピックの影響で他のイベントと同様に同人誌即売会の回数がやや減ることは決まっています。コミケも東京ビッグサイトで開催できますが、東展示棟は使用できない。そのため既存の西展示棟と新設される南展示棟、そして青海展示棟で開催します。
僕らも含め、即売会系のイベントは規模を縮小せざるを得ない。その中で、どうやって盛り上げられるのかと考えたときに「各イベント一緒に何かやるのがいいのではないか?」と。
現時点で具体的な内容は言えませんが、毎月7団体が集まって企画について話し合っている段階です。
──どういったことを話し合っているのでしょうか?
市川 たとえば、「どうしたら多くの人が参加してくれるか?」「新刊を出してくれるか?」ですね。コミケは同人誌即売会なので、サークルさんの出す新刊が魅力のひとつです。
従来であれば夏と冬だったものが、GWにタイミングがずれ、他の即売会も日程が変わることでどんな影響があるか。そうした中でも、できるだけサークルさんが新刊を出しやすい環境づくりを目指しています。
──時期ももちろんそうですが、2019年から東展示棟が使えないことで会場自体も大きく変わりますね。
市川 西展示棟と南展示棟の間や、もっと離れた青海展示棟との導線はどうするのか、すでにスタッフからもいろいろな意見が出ています。1年後に控えるコミックマーケット96に向けて、毎週のように集まって議論を進めているところです。
──2019年に開催されるC96とC97はそれぞれ4日間にわたって開催されます。これはどのような経緯や議論の中で決まったのでしょうか?もしかして、コミケット94最大の衝撃は反省会で発表したC96/C97の日程かもしれません。19年に東展示棟が使えないという"壁"に、初の4日間開催という新たなチャレンジで応えていくことになります。青海展示棟の活用、西/南展示棟との移動や屋外スペースの活用など、考えることは山積みです。 #C94
— コミックマーケット準備会 (@comiketofficial) 2018年8月12日
市川 公式サイトでお知らせした通り、東京ビッグサイトの利用制約期間は、東展示棟が使用できないため、先の3つの展示棟を利用しても、1日当たりの面積は現状の約75%になります。さらにサークルに割り当てる面積で比較すれば、今回のコミックマーケット94比の約71%に留まります。
現状の会場面積でも、残念ながら多くの抽選漏れが出ているのが実情であり、多くのサークルに自由な表現の場を提供するというコミケットの理念を鑑みると、4日間開催というのは大きな決断でしたが自然な流れでした。
2〜3年前からスタッフの責任者たちと、どのような開催形態が望ましいか、その運営体制を組むことができるかという議論を重ね、最終判断に至りました。参加者・関係者のみなさんとの協力の下、一緒に楽しめればと思います。
──最後に、2020年GW以降のコミケについてすでに考えていることはありますか?
市川 2019年と2020年のイレギュラーな体制を経て、その後は現体制に戻ります。会場に関していえば、東展示棟・西展示棟・南展示棟の3つの全16ホールが使えるようになる。「規模が広がることで何か新しいことができるのではないか?」とすでに考えています。
たとえばコスプレイヤーの方々が集まるコスプレエリアはすべて屋外で、現状、雨が降ると非常に厳しいわけですが、それなら屋内にコスプレエリアをつくれるのではないかとか。ほかにも、「更衣室が増やせる?」「サークル参加の抽選漏れが減る?」など、さまざまな可能性を話し合っています。
さらに、最近は海外からのサークル参加も増えているので、そういった方々をどうやって受け入れていくのかも課題のひとつです。
アジアをはじめ、海外にもマンガ・アニメ・ゲームのイベントがたくさんあり、そうしたイベントのネットワークとして、2015年春のコミケットスペシャル6がきっかけとなって発足した「国際オタクイベント協会(IOEA:International Otaku Expo Association)」という組織もあります。
将来的には、そういった海外の組織・団体との連携も視野に入れていきたいと考えています。
コミックマーケットのこれまでとこれから
この記事どう思う?
関連リンク
0件のコメント