日常会話で普通に出てくることを聞いている
ニートtokyoの動画の持つ独特な内容。その原動力となっているのが、インタビュイーに投げかける質問の内容である。直接音楽には関係ないながら、アーティストの持つアイデンティティの根本部分に切り込むような質問。そしてその答えの前後を思い切り良く切り取って編集する手法は、彼らの大きな特徴だ。
伊江 30分くらいです。ひたすら質問して、そこからいいのを出してる感じです。作業カロリーを低くしようってのが当初から皆で決めていたので。
──質問の数はどれくらいですか?
山田 15本くらいですかね、平均で。
SEEDA 30分までやって、そっから先は文大さんの気持ちです(笑)。
山田 もうちょっと聞きたいなとか、この人はもうちょっと出そうだな、みたいな判断は、その30分内の手応えと相談して、っていう感じですね。
──質問のスタイルとしては会話っぽい感じなんでしょうか。それとも一問一答みたいな形というか……。
山田 一問一答ですね。全部の回答を使いたいと思ってQ&Aを繰り返すんですけど、やっぱ面白い答えが出る時と、もう他で出てる情報が出てくる時とがあるんで。
伊江 (動画を見た人たちから)たまに、こっちが意図していなかった角度で視聴者が盛り上がったりするのが面白いですけどね。 山田 例えば、質問をつくるときに日本で起こってることをあんまり気にしてないんです。日本のシーンで起こっていることと質問が勝手にリンクしてて──時代的なものだったり現在進行形のビーフだったりみたいな。
全く意図していないところで「誰のこと言ってんだろこれ」って書かれてたり。こっちは全く考えてなかったんだけど。
──質問をつくるときにどういう点を意識していますか?
SEEDA 世界のヒップホップメディアが聞くことを聞いて、日本の社会で……具体的には、あれ、なんだろう? わかんないや(笑)。
伊江 でも、世界中のいろんなインタビュー動画を見て勉強しました。「あれ見た?」みたいな。それをニートtokyoに置き換えて、こう聞けばいいんじゃないか、みたいにしたような、してないような……(笑)。
SEEDA それプラス、ハッシー(HSMT CLUB)さんから「今年日本で起こったのはこういうことだったよ」みたいなのを聞いて、それを足す、みたいな。
HSMT CLUB 炎上案件とか。
SEEDA そうそう、炎上案件とか。YouTuber対ラッパーとか。俺は知らなかったんすけど、こういうのあるよって。「じゃあそれ聞こう」みたいな。 ──先ほどSEEDAさんが言っていた「世界のインタビューでは常識的に聞くこと」っていうのは、日本だとイリーガルなことも含まれている。
SEEDA というか日常会話で普通に出てくることを聞いている感じです。だってウィードなんて高校生の半分くらいは吸ったことあるだろみたいな……。
(全員黙る)
SEEDA 誰かフォローアップしてよ(笑)!
ニートtokyo的にドラッグを推奨してる訳ではなくて。絶対マリファナ吸ってるでしょ? ってアーティストが、意外に否定的な答えだったりで「この人がダメって言うの!?」みたいな面白さとか。
そういう、実際の本人像とアーティスト像の乖離を、インタビューで埋めていく感じです。
山田 なんていうか、ガラパゴスじゃないってことですよね。普通のことをやってる感じ。
あと自分は元々アウトロー雑誌の編集をやってたんで、トピックとしては抵抗がないんですよ。そもそも日本の普通って、別に世界の普通じゃないんで。
SEEDA 文大さんと伊江さんに関して言うと、そういうスキルが高くて、全然2人が動じないんですよ。超心強いですよね。ねえハッシーさん、俺たちけっこうヤワだよね。
HSMT CLUB そうすね。心強いっすね(笑)。 山田 ただ、質問で怒らせようっていう意図は全くなくて、笑顔で来て笑顔で帰ってほしいとは思ってますね。むしろみんなこれを聞かれたいんじゃないのってことを考えて聞いてるつもり。
それに絶対答えてほしいとはいってないです。現場でも、質問が面白くないと思ったらパスしてほしいと言ってます。
──印象的な収録回はありますか。
山田 毎回「今のはすごかった」みたいな瞬間はありますよ。でもやっぱ一番最初のDogmaさんは印象に残ってます。
伊江 あの人だけ登場から撮影場所に酒を大量に持ち込んできて(笑)。そんなの全然ウェルカムだし、こういう感じの方がいいなぁって思ってたことを、全てやってくれて。
それにDogmaさんは、答える時の動きに立体感があって面白かった。動かず淡々と答える人が多い中、Dogmaさんは全身で答えてくれた。
山田 まだお手本がない状態でアレをやってくれたのはすごくよかったと思いますね。
伊江 撮影初日で僕たちもテンパりながら撮ってたんですけど、僕らの分のビールまで持って来てくれて。結局全部Dogmaさんが飲んだんですけど(笑)。そこから、DOMMUNEインタビューの時も急に出演をお願いしたにも関わらず、快諾してくれて。
──ほかのメディアでの取材とニートtokyoでの取材で違うところはありますか?
山田 違うところ、う~ん……。レコード会社の人の顔色をうかがったりしなくていいというのはありますね。それを理解してきてくれているからっていう。
あと、まだ始めて2ヶ月も経ってないのに(※取材は12月末)、出てくださる方が質問とかに対して「これニートtokyoっぽいな!」って言ってくださったりするのがちょっと嬉しい。
質問しやすい環境をアーティストの方がつくってくれてマジ感謝って感じです。 SEEDA 自分の場合だったりほかのアーティストとかを見たりしてても、インタビューで聞かれたかったことを聞かれたっていう人がほとんどいないんですよ。僕もそうだし。
なんでかっていうと、例えば僕に対してラップのことを質問しようとすると、僕よりラップが上手くないと正確なことが聞けないじゃないですか。それは難しいし、的外れな制作に関する質問は聞いてほしくない。
リリースインタビューとか、もっとみんな違うことが言いたいんじゃないかなって思いますね。人はわからないけど。俺は10年くらいやっててよく感じました。
──それがニートtokyoで聞かれているような生活感のある質問につながっているんでしょうか。
SEEDA そうですね。あと音楽のことを聞くんだったら、もっと詳しい方がいいんですよね。渡辺志保さんとか調べているしフェアな人だと思います。
山田 耳が痛いですね(笑)。
知名度だけある人に来てほしくない
ニートtokyoの活動においてもう1つ特徴的なのが、出演者の選定だ。アングラ感がありつつ先鋭的で絶妙なチョイスにも、SEEDAはじめスタッフのこだわりがあった。──ニートtokyoに今後出てほしい人っていますか?
山田 色々と出て欲しい人の名前はいっぱい上がっていて、そういう人たちが実際に出てくれたら嬉しいし、そういう人たちが喜んで出てくれるようになったら最高だなって思いますね。びっくりするような人に出てほしい。
──それは外タレとかも含まれます?
SEEDA 外タレは多分やらないですね。そういうのはもうあると思うんで。日本語で、日本でインタビューしてるのは俺たち以外にいないから。Higher Brothersとかは来てほしいですけどね。
でも、アメリカのアーティストとかはこういうスタイルでインタビューしている人はいっぱいいるので別に……。
──ライターの渡辺志保さんやAmebreakの伊藤雄介さんも出演されてますけど、必ずしもラッパーである必要はないんですよね。
SEEDA そうですね。DJでもいいですし。裏方でもいいです。
山田 その都度ありかなしか決めてます。そんな上からじゃなくて、「誰々ってどうなんすか」「いや、最高っすね!」みたいな。
SEEDA ラッパーに関しては、現代の音楽が好きなんで、オールドスクーラーはあまり呼ばないっすね。若いなら性格が悪くても、上手ければ呼びたい。逆に、知名度だけある人に来てほしくない。
今のメディアって、知名度あるなら呼ぶじゃないですか。おれたちは選びたい。今はあまりにもニュースクーラーを推すメディアもないから。
山田 そういう話を聞きたくてやってるというか、自分たちもそういうことに飽きてたし。
SEEDA 例えば僕90年代の昔ながらなのも好きなんですよ。でもなんかこの番組とはちょっと違うかなと。
別の、なんかリリカルなやつをやるんだったら是非来てもらいたいけど、そんなのはやってる人いっぱいいるじゃないですか。だからリスペクトしてるけど呼べない人もいっぱいいる。
山田 (基準は)あってないようなものなんだけど、あるっていう。
伊江 ニートtokyoの「いいっすねぇ」が明確な基準。
今まで取材させて頂いたり、お世話になったラッパーの方は、みんなすごく尊敬していますが、それは番組の人選の尺度とは関係ない気がします。
そういうことを考え出すと濁るものがあるというか。当たり前のことを言ってますかね……。あんまりかっこよく捉えてほしくないんですけど──新しい、今の音楽を聴いて「これ!」っていう純粋な尺度を、もっと突き詰めたいですね。
SEEDA 平たくいうと「好きな人」のインタビューをやってる感じです。
単純にみんなと仕事するのが楽しい
ヒップホップに関する話題のみならず、取材とは、そしてそこから生まれる面白さとはどういうことかに対してフラットかつフェアな視点から語ってくれたニートtokyoの面々。そのベースにはSEEDAの選球眼とベテランのライター・編集者である山田のテクニック、そして映像系スタッフならではの観点から取材自体をコントロールする伊江・橋本。極めて良好なコンビネーションがあった。
そして何より、4人の「面白いことをやろう」という姿勢から、一連の動画は生まれていたのである。
最後に、ニートtokyoの今後の目標について聞いてみた。
──今後達成したい目標などはありますか?
SEEDA みんなで短期間のうちにYouTubeの登録者数増やそうぜみたいな。今は単純にみんなと仕事するのが楽しいです。あっ!登録者数10万人越したら村上隆さんに来てほしい!!!
──動画以外のメディアに進出する可能性はありますか?
山田 全く考えてないんですよね(笑)。とにかく今は今やってることをちゃんとすることで手一杯で。まだなんせ2ヶ月弱なので。
SEEDA ニートtokyoに出てる人たちが、KAI-YOUだったり、別の媒体にどんどん出ていってほしいですね。
伊江 例えば、ライターさんが取材前に「このアーティストについて調べたい」ってなるじゃないですか。そこでニートtokyoを見て「こんな人なんだ!」ってなって、取材時の質問に深みが増せば面白いなと思います。
──例えば「ニートtokyoでこういう質問をされていましたけど~」みたいに文中で名前が出てきたりとか。
SEEDA 美味しい~(笑)!
伊江 カットされそう~(笑)!
山田 ライターをやってることで得られる喜びが結構ニートtokyoで回収できていて、自分としては本当にやってよかったと思ってます。全ての出演者と見てくれてる人にお礼を言いたいです。ありがとうございます!
特集「2018年のストリート」
KAI-YOU.netが送る特集第3弾「2018年のストリート」は、1月中に更新予定。
記事一覧と更新予定記事の予告は、特設ページから。続々更新していきますので、ご期待下さい!!
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ニートtokyo
インタビューメディア
毎日夜9時に更新するyoutubeチャンネル。ヒップホップ界隈の人々へ、他メディアでは聞かない質問をインタビューして1カット1発で配信中
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1件のコメント
匿名ハッコウくん(ID:1645)
2017.11.20 SEEDAインタビュー書き起こし(素起こし) #DOMMUNE #ニートTOKYO - RED NOTE
http://rednote.hatenablog.jp/entry/2017/11/23/234556