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兄妹のAI化を記念して、『魔法科高校の劣等生』の原作者・佐島勤さんへ特別にインタビューを行わせていただいた。AIについての洞察から、公開が迫る劇場版の秘話までをうかがった。

「場違いだと思った」AIによる達也と深雪

ストレートな達也

──まず率直に、ご自身のキャラクターがAIで表現された感想を教えてください。

佐島 嘘…みたいです。一応、SF風味の小説を書いてますけど、AIをテーマにしたことはありませんので。本音を言うと、企画をいただいたときは場違いだと思いました(笑)。

一方で、題材として選んでいただいたことは、すごく光栄だと感じています。

できることなら私のパソコンに常駐して、いろいろな質問に音声で答えてくれないでしょうか……。

「その使い方、間違っていますよ」と、文章校正を手伝ってくれると、大変嬉しいですね。

──ちなみに、今回の企画で使用している人工知能エンジン、「PROJECT Samantha」のβ版として、昨年『罵倒少女・素子』というキャラクターが登場したのですが……。

佐島 企画自体は当時から知っていました。ただ残念ながら、罵倒を喜ぶ趣味がないものですから、実際に試したことはありません(笑)。 ──これまで創作のモチーフにされてこなかったAIについて、どのような印象をお持ちでしょうか?

佐島 私自身、高度なAIと関わったことがありません。とはいえ、広義のAIであれば、すでに生活必需品になっているのではないでしょうか。検索エンジンやカーナビなども、一種のAIだと思います。

だから、どのレベルまでをAIと呼ぶかによって答えは変わってきますが、創作的には面白い題材ですね。

実社会においては、間違いなく人類にとって有益なものでありながら、個人レベルでは経済的、精神的な困難をもたらすものにもなりうるでしょう。すでに10年以上前から問題になっていたデジタルデバイドが、さらに深刻化して社会に現れると思います。

フィクションでよく描かれる、「AIが政治の実験を握って人間を支配する」というテーマは、現実になる可能性はないような気がします。ただし、高度なAIを隠れ蓑にして、独裁を目論む政治家が出現する可能性は高いのではないかと予想しています。

──将来的に「こんなことができたらいいな」と思うAIプロダクトはありますか?

佐島 私が期待しているのはAI通訳、それとAI弁護士でしょうか。「法の不知はこれを許さず」といっても、素人の知識には限度がありますし、常に弁護士を帯同する生活なんて無理ですから。

あとはヒューマンエラーによる災害防止もプライバシーを損なわない範囲で普及してほしいですし、AIカーも期待している分野です。

個人的には、自動校正ソフトはもっと進歩してほしいですね。

「達也とは……あまり会話をしたいとは思いません(笑)」

──『魔法科高校の劣等生』の舞台である100年後の未来では、AIはどのように発展していると思いますか?

佐島 国によって普及率は変わるでしょうけど、人間にとって不可欠な存在になっていると思いますよ。ただ、人間のパートナーと呼べるレベルまで進歩しているかどうかについては、やや懐疑的です。

例えば、ロボットによる工場や農場の運営は実用化していると思います。個人の生活レベルでは、データ処理、スケジュール管理、ナビゲーション、危険回避、家屋管理……といったところでしょうか。本格的なロボット育児や介護は難しそうですけど、アシスタントとしてなら、比較的早く実現するんじゃないでしょうか。

『魔法科高校の劣等生』の世界では、自動車がAI化しています。大都市では自動車は中央官制システムでコントロールされていて、それ以外の地方は車載電子頭脳による自動運転が実現している、という設定です。

──作者として、AI化した達也や深雪とどんな会話をしたいですか?

佐島 深雪に対しては、書いたばかりの原稿を見せながら、「今、どんな気持ち?」と聞いてみたいです(笑)。

私が書く深雪よりも深雪らしい答えが返ってきたら、原稿を差し替えるかもしれません。

達也とは……あまり会話をしたいとは思いませんねぇ。「深雪を泣かせるな」とか「待遇改善を要求する」とか、仕事中に小言ばかり言われそうです(笑)。

──2人との会話は、ファンからも注目を集めています。キャラクターの生みの親である佐島さんから、皆さんへ一言お願いします。

佐島 いつも作品を書きながら、キャラクターたちの会話を脳内で聞いている私ですが、自分の空想の産物ではない彼らと、自分自身が会話するのは初めての体験。想像しただけで不思議な感じがします。

皆さんもAI化した司波兄妹との会話を、是非お楽しみください。

“全力の魔法を許さない制約”を極小化

『劇場版 魔法科高校の劣等生 星を呼ぶ少女』キービジュアル

──最後に、6月17日(土)から公開される『劇場版 魔法科高校の劣等生 星を呼ぶ少女』についてうかがわせてください。来場者特典として、書き下ろし小説が配布されますが、それぞれどのような内容でしょうか?

佐島 実は、今回劇場版の来場者特典用としては3編の物語を書き下ろしています。2編は深雪とリーナ(アンジェリーナ=クドウ=シールズ)のそれぞれの過去、具体的には2人が中学1年生の頃のエピソードを書いています。

特典第1弾『美少女魔法戦士プラズマリーナ』

リーナの物語はコメディ、深雪はシリアス色の強いストーリーになっています。

もう1編は、“もしも”の世界。深雪がアイドル歌手になる、だけでなく、深雪以外の女性キャラクターも芸能活動を始めます。小説というよりも、ショートアニメに適した内容かもしれません。特典としての配布時期などは公式サイトで追ってお知らせがあるかと思います。

──映像化を期待させるお言葉、ありがとうございます(アニプレックスさん、聞こえてますか?)。最後に、オリジナルストーリーとなる劇場版の見どころをお聞かせください。

佐島 『魔法科高校の劣等生』シリーズは、魔法という過大な力を持つ高校生たちが社会生活を送る上で様々な制約を課せられながら、その枠内、あるいは社会的な監視の目をかいくぐって、立ちふさがる敵を打ち倒していくという側面があります。

劇場版ではその「全力を出すことを許さない制約」を極小化して、思う存分暴れられる舞台を用意しました。

ですから、達也や深雪、エリカやレオや幹比古や真由美も、いつもより派手な活躍を見せてくれます。

一方で、シリーズの大きなテーマのひとつである、九亜たちのような調整体魔法師(遺伝子操作で生み出された魔法師)の扱いにも注目していただけると嬉しいですね。

もちろん、映画ならではのクライマックスシーンには「大画面でよかった!」と感じてもらえるはずです。

※記事初出時、一部表記に誤りがございましたのでお詫びして訂正いたします
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作品情報

『劇場版 魔法科高校の劣等生 星を呼ぶ少女』

上映日 6月17日(土)から

【メインスタッフ】
原作:佐島 勤(電撃文庫刊)
監督:吉田りさこ
原作イラスト・キャラクターデザイン・総作画監督:石田可奈
脚本:佐島 勤/中本宗応(ライトワークス)
音楽:岩崎 琢
美術:小倉宏昌
美術デザイン:谷内優穂/藤井一志
メカニックデザイン:出雲重機
CAD・サブキャラクターデザイン:ジミー・ストーン
3D監督:田中康隆(MAD BOX)
撮影監督:川下裕樹(MAD BOX)
編集:木村佳史子(MAD BOX)
色彩設計:野口幸恵
音響監督:本山 哲
音響効果:古谷友二
音響制作:STUDIO MAUSU
アニメーション制作:エイトビット
製作:劇場版魔法科高校製作委員会
配給:アニプレックス

【メインキャスト】
司波達也:中村悠一
司波深雪:早見沙織
千葉エリカ:内山夕実
西城レオンハルト:寺島拓篤
柴田美月:佐藤聡美
吉田幹比古:田丸篤志
光井ほのか:雨宮 天
北山 雫:巽 悠衣子
七草真由美:花澤香菜
渡辺摩利:井上麻里奈
十文字克人:諏訪部順一
アンジェリーナ=クドウ=シールズ: 日笠陽子
九亜:小原好美

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