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「絵本は1人でつくれ!」批判がチャンスだった

──6月の芸人引退宣言をはじめ、しばしば炎上する西野さんですが、前代未聞の分業制という手法に対して批判はなかったんでしょうか?

にしの 出版社もファンの方々も、最初の反応はすこぶる悪かったですよ!(笑)。意見として多かったのは、「作家性が落ちちゃうんじゃないか?」というもの。

でも、僕は逆に、分業制のほうが作家性を色濃く出せると思っているんです。なぜなら、僕の右腕だけでは、自分の頭の中の景色を100%作品に投影できないから。各分野のプロフェッショナルが集まることで、限りなく100%に近い形で、イメージを再現できるんじゃないかと。

最初の頃は、ファンに向けてひたすら説明してましたね。面白いものができるからって。 キングコング西野亮廣さん4 ──結果的に、制作資金を集めるクラウドファンディングは目標額以上となる169%を達成しました。これはファンへの理解が得られた結果だと考えられますが、一方で、いまだに批判的な声も上がっています。

にしの それもまぁ変な話で「絵本は1人でつくれ!」という(笑)。僕の絵本なので、本来ならどう描こうが僕の勝手なんですけどね。でも、そういった批判の声は、拡散しやすいという意味ではメリットも大きいんですよ。

──というと?

にしの 今年に入って、ようやく『えんとつ町のプペル』のビジュアルを世に出せるようになったんです。そうしたら、テレビでも何度か紹介されるようになって。そのときに、ネット上で「キングコング・西野の今度の絵本はゴーストライターをつかってる! 自分で描いてない!」みたいな声が上がって。それが「最低だ!」って広がったんです。 絵本『えんとつ町のプペル』4 にしの そもそも最初の段階から、複数のスタッフが参加する分業制と明言しているんですけど、立ち上げ時の話は、知らない人も多いわけですよ。だからこその炎上だったので、むしろ僕としては「炎上している今が販売のチャンスだ!」と思いました。

当時は完成の6カ月前。値段も決まってないのに販売サイトを立ち上げて、適当な金額で受注を開始したら、自分でも驚くほど売れました(笑)。だから、炎上やアンチという存在も、考え方によっては悪くないんですよ。

──炎上やアンチとの付き合い方を熟知されているんですね。

にしの これは結果論ですけど、今回は文章ではなく絵だったから、拡散時によくある悪質な切り取り方ができなかったのかもしれません。

西野の絵本、ゴーストライターらしいぜ!(絵がドーン!)」という情報を見た人の中には、「この絵、良くね?」という人がいて、買ってくれたんだと思います。

にしのあきひろはアンチも炎上も気にしない

──実際、『えんとつ町のプペル展』を入場無料で開催するために現在実施しているクラウドファンディングでは、総額は約3400万円(目標金額の1894%)、支援者数は5231人を達成。CAMPFIREはもちろん、国内のクラウドファンディング史上ナンバーワンの支援者数記録を更新しました。ネット上では“嫌われ者”というイメージがある一方で、ファンの熱量のすさまじさや、多くの賛同者の存在が証明されていると思います。この反響の理由をどのように考えていますか?

にしの 1つは、僕自身の考え方だと思います。例えば、僕が何かを発信したときに、「いいね」と言ってくれる人と、批判する人の割合が1:9だったとします。

本来は、その「1」を「2」に変えるようなことを考えるかもしれないですけど、僕の場合、比率は変えなくていい

大事なのは分母を大きくすること。例えば、10人に発信したら1人にしか届かないとしても、1000万人に発信したら100万人に届く。たとえアンチが900万人いても、そういう人は基本的に、賛同してくれたり協力してくれたりすることはないので、そもそも数に入ってない=0(ゼロ)なので、気にしないんですよ。

だから、割合が低いなら、声をでかくして、発信先となる分母を増やしていけばいいんです。そしたら、応援してくれる人が増えて、数として見えてくるようになる。それがわかりやすく現れたのが、今回のクラウドファンディングだと。 キングコング西野亮廣さん5 ──「拡散するという意味で、アンチの存在はメリットでもある」というのは、その拡散力によって分母を増やすことができる、ということですね。

にしの そうですそうです。もう1つは、クラウドファンディングという手法。このサービスを利用するのは、にしのあきひろ名義としては3回目。それ以外に、吉本興業がクラウドファンディングを禁止してたときに、他人名義で利用したのがあるんですけど(笑)、それも含めると10回くらい。

サービスを使っていることで「お金とは何か?」についてよく考えるようになったんです。その答えはいろいろなところで言われているけど、信用を数値化したものだなと。つまり、クラウドファンディングの場合、信用の面積が大きいほど、お金が集まりやすい。 キングコング西野亮廣さん6 にしの いろいろ見ていると、それまで人に対して親切にサービスしてきた人が、「ごめん!今回は助けてくれ!」って言っているようなプロジェクトのほうが、成功していて。クラウドファンディングは信用のある人が、圧倒的に勝ちやすいなと思って。これからの時代は信用を積み上げていこうと思ったんです。

──具体的にはどうやって信用を積み上げていったんですか?

にしの まず、嘘つくのをやめるそして、グルメ番組に出ない(笑)

あと、お金が信用を数値化したものなのであれば、お金と同じような感覚で、“信用の通帳”もつくっておいたほうがいいなと。そのために、年間スケジュールを立てて、「ここで1回感謝されて信用を集めて、それをクラウドファンディングでお金にしよう」みたいなことを考えました。

今回でいえば、夏の独演会がそうです。通常だったら5000〜6000円するライブのチケット代を2000円にして。もちろん完売したんですけど、結果的には赤字になって、それも公開しちゃって。そのときのファンからの感謝によって、信用の面積が大きく広がってたのかもしれないですね。

──……話を聞いていると、今、西野さんが日本で一番信頼されているということに。

にしの そういうことになっちゃいますね(笑)。僕、今すごい技つかいましたね、遠回しに自分を褒めるという。

──絵本としては異例の初版3万部が決定して、Amazonの絵本ジャンルのランキングでは1位。結果的に、信用の貯蓄が大きな成功へとつながっています。

にしの とはいえ、僕は「ディズニー倒す!」とか言ってしまっているので(笑)。まったく成功ではないんですよ。今回も、最低10万部は売ると決めているので、まだまだこれからです。

つくりたいのはアイドルを育成するような絵本のファンクラブ

キングコング西野亮廣さん7 ──『えんとつ町のプペル』で自身は絵本監督という立場から、新たに分業制という体制を確立しましたが、そういった制作体制が今後広がりそうな予感はありますか?

にしの 選択肢の1つになるといいなとは思いますね。誰も見たことがないものをつくりたいのと同じくらい、個人的にも見てみたいので。他の人が分業制でつくった作品を見て、「おっ、すごいのつくるな!」って。

やっぱり僕は常に、見た人を「これはなんだ!」って驚かせるようなものがつくりたいんです。今作でいうと、日本アカデミー賞で音楽賞を受賞した渡邊崇さんが参加しているのも、そういう思いからです。絵本に音楽家って、予想外じゃないですか? ──渡邊さんは主題歌を制作されて、なおかつYouTubeやSoundCloudで公開。それが宣伝になっているという。

にしの 最初は渋谷のスクランブル交差点の看板を買っちゃおうかとか話してたんですけど、広告・宣伝として、最も効果があるのは何かと考えたときに、瞬発力ではなく持久力を重視したんです。絵本は長期間にわたって売れるものだし、自分の作品もそうなってほしいので。

だから、5年後、10年後も機能する広告として主題歌をつくって、なおかつ著作権フリーにしたので誰でも演奏したり歌ったりできる。楽譜もネットで公開しているんです。 絵本『えんとつ町のプペル』6 ──そうした驚きによって、今まで以上に西野さんへの注目度は高まっていると思います。次回作でも何か新しいことを考えているのでしょうか?

にしの 絵本のファンクラブをつくったらどうかなと思っています。タレントのファンクラブのように、毎月一定の金額をいただくようなイメージです。というのも、『えんとつ町のプペル』の制作に4年半かかったように、僕の絵本は2〜3カ月でつくれるものではありません。

なのに、クラウドファンディングの場合、資金調達の期間が3カ月しかなかった。つまり制作期間に比べて、資金調達の期間が圧倒的に短い。ファンの中には、年単位で応援したい人はいるだろうし、企画段階から継続的に支援したい人もいるだろうなと。

だったら、期間を伸ばすことで、ひと月あたりの金額をより抑えて、支援してくれる人には立ち上げから完成まで、制作過程をすべて公開していく。アイドルを育てていくプロデューサーみたいな感覚ですかね。

金額を抑えることで、もっといろいろな年代の人が支援できるようになったり、試しにやってみたりする人も増えるような気がするので、ファンクラブは本当につくりたいですね。 キングコング西野亮廣さん8 ──長期的にお金を作品に投資してもらえるシステムをつくりたいということですね。制作体制についてはどうでしょうか?

にしの 次の絵本でも絶対分業制でやると決めています。それに加えて、今回の渡邊さんのようなかたちで、より意外性のある組み合わせが実現できればと。例えば、日本の伝統工芸の職人の方々など、すごい技術をもった人たちと、いっしょに作品づくりができたらいいなと。

分業制における選択肢として、おそらくイラストレーターだけではない感じがしていて。もしかしたら、絵本ではないのかもしれないですけど、それは“今までの絵本”じゃないだけであって、新しい絵本への拡張なのかな。
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