メディアアーティスト/研究者の落合陽一さんが、初の小説『すべては計算でできている』を9月18日(金)に刊行する。発行はクロスメディア・パブリッシング。定価は2145円(税込)。
29歳のシステムエンジニア・三輪慎一と、不思議なAI「禰宜(ねぎ)」との対話を軸にした物語。落合陽一さんが提唱してきた「デジタルネイチャー(計算機自然)」の思想を背景に、人間と計算機の境界や、記録することのできない経験を描く。
本作の制作では、落合陽一さんの書籍や発話、ノートなど本人に由来する記録を収集。重複を含む約3億4000万字の資料群から、検索や分析ができるデータベース・コーパスを構築。複数のAIモデルを開発しながら執筆が進められたことも明かされている。
29歳のSEとAI「禰宜」が記録されないものを巡る物語
『すべては計算でできている』で主人公の三輪慎一は、ある日の午前4時17分、鯨の声を聞く。そしてその夜、ブラウザ上に現れた「空蝉神社」で、AI「禰宜」と対話を始める。
仕事や結婚、父との関係、大切な人の死。慎一は禰宜から投げかけられる問いを通じ、自身の価値観と向き合っていく。
出版を手がけるクロスメディア・パブリッシングは本作について、人間を「脳」というニューラルネットワークと、「身体」というセンサーを持った一種の「計算装置」として捉える物語だと説明している。

『すべては計算でできている』
現在公開されている公式サイトでは、物語のもう一つの軸として「記録されないもの」を強調。
録音に入らない声、写真に写らない父親の手、送られなかった言葉など、技術によって保存される世界と、その外側に残る身体的な経験を巡る「三世代の家族小説」として紹介されている。
落合陽一本人の約3.4億字を集め、AIモデルを開発
公式サイトによれば、『すべては計算でできている』の制作過程では、企画と最初の打ち合わせを経て、まず落合陽一さんの書籍、発話、ノートなど本人由来の記録を収集。
重複を含めて約3億4000万字に及ぶ資料群をもとに、世代ごとに異なるコーパスを組みながらAIモデルを開発した。
中核となった「ochiai-v20」は、既存の日本語8Bモデル(80億のパラーメタを持つモデル)をベースに、用途に合わせて最適化を行う「LoRA」で落合陽一さんについて追加学習したモデル。
原稿の執筆と並行してv21からv26までモデルの世代を重ねたものの、作中の禰宜の「声」を選ぶ際には、繰り返しv20へ戻ったという。
AIが生成した文章をそのまま小説にしたわけではなく、原稿は複数のエージェントの間を往復しながら加筆・削除され、最終的にどの文章を残すかを落合陽一さんが判断した。
公式サイトでは、その制作過程について「どの一行を誰が書いたかは、もう数えられない」と説明。一方で、作品をこの形で世に出す責任は人間に残ったとしている。
落合陽一さんはこれまで、『魔法の世紀』『デジタルネイチャー』など、計算機と人間、自然との関係を巡る著作を発表。今回、はじめて小説という形式で作品を刊行する。
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出版社:クロスメディア・パブリッシング(インプレス)
発売日:2026/9/18
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