インターネットカルチャーを起点にした音楽や映像、ライブドローイングが融合したイベント「FOUND Vol.0」が、8月1日に開催された。
手がけたのは、音楽アートフェス「NIGHT HIKE」を手がけるTRIBALCON.と、デザインチーム・中央町戦術工芸から派生した合成音声系音楽レーベル・CTC RECORDS。
会場となった渋谷WOMBでは、フロアごとにそれぞれ異なるプログラムが展開。1Fでは複数の作家によるリレー形式のライブドローイングや体験型インスタレーションなどが行われた。

複数の作家によるリレー形式のライブドローイングで完成した作品
メインフロアの2Fでは、合計5組のDJとイラストレーターのペアによるDJライブ&ライブドローイングを実施。VJがライブペインティングの映像を取り込みながら、リアルタイムでエフェクトを加えて映像を生成していった。
そして、この一夜を舞台裏から支えていたのが、ハイパフォーマンスPCブランド「GALLERIA(ガレリア)」だ。

2FのDJライブ&ライブドローイングの様子
イベント開始の15時から終了の21時まで、6時間にわたってノンストップ──そんな異例のDJライブ&ライブドローイングは、どのような技術によって実現したのか。出演者やスタッフへの取材をもとに、その舞台裏を追った。
取材/文:フガクラ 編集:恩田雄多(KAI-YOU)
目次
様々なカルチャーの“楽しみ方”が融合したクラブイベント「FOUND」
イベント全体を包んでいた空気は、従来のクラブイベントとは少し異なっていた。フェスやボカロ系ライブ、同人イベントなど、さまざまなカルチャーが混ざり合った、“楽しければなんでもあり”という雰囲気だ。
当日の渋谷は36度に達する猛暑日。それにもかかわらず、開場前からWOMB前には来場者の列が伸び、周辺ではSNSでつながった知人同士が、オフ会も兼ねて合流する姿があちこちで見られた。
SNS上では、「FOUND」や「NIGHT HIKE」をきっかけにはじめてクラブへ足を運んだという声も少なくない。

「FOUND Vol.0」の会場となった渋谷WOMB
場内には、マサラダさんや読谷あかねさん、r-906さんらクリエイターが手がけた等身大イラストパネルをはじめ、中央町戦術工芸プロデュースのアパレル、えいりな刃物さんによるメインビジュアルをもとにしたAdd9さんの刺繡作品、フロクロさん×ゆうもやさんによる体験型インスタレーションなどが並んだ。
メインフロアでは、ネットミームとして親しまれている楽曲が流れれば笑いが起こり、有名曲には大合唱がはじまる。手拍子やコール&レスポンスが自然と生まれ、フロア全体が一体となって盛り上がっていた。

等身大イラストパネル

メインビジュアルをもとにした刺繡作品
ヒューマノイドロボット・足立レイが3Dで登場する映像型ライブDJでは、さながら応援上映のような熱気があった。曲に合わせてただ踊るだけではなく、ペンライトを振る人もいれば、ぬいぐるみを手に“ぬい撮り”を楽しむ姿もある。

ヒューマノイドロボット・足立レイによる映像型ライブDJ
クラブという空間に、それぞれが慣れ親しんできたカルチャーの楽しみ方をそのまま持ち込んでいるような印象だ。
DJ×イラストレーター×VJが生み出す映像体験とその特殊なシステム
そんななか、ひときわフロアの注目を集めていたのが、メインステージの2Fで行われた複数のDJとイラストレーターによるDJライブ&ライブドローイングだ。「FOUND」には、舞台構成と技術の両面で、一般的なDJイベントとは異なる仕掛けが施されていた。
最も特徴的な点が、DJ、イラストレーター、VJの配置。DJとイラストレーターが演者としてステージ上に並び、VJがフロア後方などから映像を操作する構成も多いが、「FOUND」ではその配置が大きく異なっていた。

2Fのステージで観客と向き合うDJ

3Fではイラストレーターがライブドローイング
2Fのステージで観客と向き合うのはDJのみ。一方、イラストレーターとVJは3Fの吹き抜けからフロアを見下ろす位置に横並びになり、それぞれ制作と操作を行う。
そのため、客席からイラストレーター自身の姿を直接見ることはできない。描かれたイラストはフロアのスクリーンに投影されて、はじめて観客の前に姿を現す。

メインステージで行われたDJライブ&ライブドローイングを側面から見た図
ライブドローイングならではの予測不可能性を際立たせる一方で、DJはステージ全体を使って自由にパフォーマンスできる。WOMBの2Fと3Fを立体的に使いながら、それぞれの演者の仕事をひとつの映像体験へと結びつける、本イベントならではの演出だ。
「FOUND」の映像面を全面的に支えたのが、映像作家でありプログラマーであるVJの.+(テンプラス)さんとmelonadeさんのタッグ。2人は数週間にわたる準備期間をかけ、イラストとVFXをより一体化させるための映像処理システムを独自に構築した。

3Fの作業風景。左側にいるのがVJの2人。右側がイラストレーターで、パフォーマンスごとに入れ替わる
システムとしては、2台のキャプチャーボードを使ってイラストレーターの制作画面をそれぞれ取り込み、そこにVJが用意した映像素材を加え、自作のVJ用ソフトでリアルタイムに処理。
扱うのは、①現在進行形で描かれている画面、②VJが用意した映像素材、③イラストレーターの手元カメラの映像。これらをリアルタイムでGALLERIAのデスクトップPCで走る自作ソフト上に流し込んで統合し、ひとつの映像としてフロアへ投影する仕組みだ。

DJライブ&ライブドローイングで用いられた仕組み
たとえば、イラストレーターの2番手をつとめたユウマさんのライブペインティングでは、共にボカロPの平田義久さんと只野楓さんがDJプレイするなか、「和×ストリート」をテーマにしたイラストが描かれていった。
その上を、VJが用意したランダムな幾何学模様や機械的なエフェクトが高速で走り、さらに時折、トップバッターのイラストレーター・山本さんが描いた、どこか脱力感のある重音テトのイラストがグリッチするように差し込まれる。

手前で作業しているのがイラストレーターのユウマさん。画面奥のスクリーンには制作中のイラストを用いた映像が流れる
ユウマさんの絵をそのまま映し出すのではなく、前の出演者が残したイメージとVJによる映像処理が同じ画面上で絶えず干渉し合う、さながら“マルチバース”的な演出だ。
DJセットの最終盤、ラストを飾る只野さん作曲/平田さんRemixの「くらしとファッションのフロア」が鳴り終わると、完成したユウマさんのイラストがついにその全貌を現す。その瞬間、フロアからは拍手と歓声が上がった。
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