イラストレーター/ボカロPの証言 音と映像がリアルタイムで融合する面白さ
それでは、実際にステージを終えた出演者は今回の挑戦的な舞台をどう受け止めていたのか。平田義久さんと只野楓さんによるDJライブと、ユウマさんによるライブドローイングの終演直後、3人に話を聞いた。

イラストレーターのユウマさん。ゲーム会社を経て2021年8月からフリーランスに。『Apex Legends』、ホロライブプロダクション、にじさんじのビジュアル関連などを手がける。実はイベント当日、左手デバイスと「Ctrl+Z」が使えなくなるトラブルに見舞われながらもイラストを完成させた
まずユウマさんは、「とにかく平田さんと只野さんの楽曲を最高の音響と特等席で聴けたのが素晴らしかったです」とコメント。
「音楽を聴きながら絵を描くという行為が、普段の何倍も贅沢になったというか、描くモチベーションもすごく高まりました」と今回ならではの体験を振り返った。
機材については、普段からGALLERIAのPCを使っていることもあり、「操作性にもまったく違和感なく描けましたし、クラブという環境でも、熱暴走などによるエラーなくスムーズに動いていました」とその性能に太鼓判を押した。

作業中のユウマさん

ユウマさんが完成させたイラスト
一方、DJをつとめた平田さんは、描かれていくイラストを観客と共有しながら演奏することで、普段のライブとは異なる熱量を感じたそうだ。
「音楽を楽しみながら、同時にイラストが完成していく過程をフロアの皆さんと共有することで、いつものDJとは違う時間の流れが生まれていたように感じました。それから、途中でなみぐるさんがサックスで飛び入り参加してくれたのですが、演者同士の突発的なパフォーマンスが次々に生まれていく瞬間がとても楽しかったです」 (平田さん)

DJを担当した平田義久さん。2016年ボカロPデビュー。ジャズやヒップホップ、ロックなどを折衷した独自のサウンドで知られる。映像制作集団を主宰するほか、ボカロに関する批評も行うなど幅広く活動
只野さんもまた、ユウマさんのライブドローイングと自身のプレイが噛み合っていく瞬間に手応えを感じていたという。
「DJブースから離れてステージ上でコール&レスポンスをしたとき、ユウマさんが楽曲の雰囲気や色味に寄せながら、自分の世界観をイラストに落とし込んでいく様子が大スクリーンに映っているのが見えて。VJとDJ、イラストが一つになるダイナミックな面白さが、観客の皆さんにも伝わっていたと思います」(只野さん)

DJを担当した只野楓さん。斬新な展開やノリの良さが特徴のトラックメイカーで、2021年10月よりボカロPとして活動開始。手がけた楽曲は『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』にも収録
今後、「FOUND」でチャレンジしたいことについて尋ねると、ユウマさんから「音楽に合わせて、描いているイラストそのものをアニメーションさせてみたい」とコメント。
只野さんからは「ライブストリーミングを行って、視聴者のコメントや反応までリアルタイムに拾えたら、さらに面白いのではないか」と、新たな構想が語られた。

DJを担当した只野楓さん(左)と平田義久さん(右)
「絵チャットをやりたい」その一言から実現したDJ&ライブドローイング
「『FOUND』というイベントは、TRIBALCON.、GALLERIA、CTC RECORDSの綿密なチームアップが欠かせませんでした」──そう語るのは、中央町戦術工芸/CTC RECORDS代表のLuchiaさんだ。
Luchiaさんにとって、大きな転機のひとつとなったのが、2020年前後から再び大きな盛り上がりを見せはじめたボカロカルチャーだった。当時は、「The VOCALOID Collection」(通称・ボカコレ)をはじめとするオンライン参加型イベントも誕生し、ボカロを取り巻くシーンそのものが新たな広がりを見せていた。
「ちょうどコロナの頃に、ボカロがまた盛り上がってきたのを見て、『やっと来た!』と思いました。一方で、当時はリアルなイベントの機会が大きく失われた時期でもあって。ずっとアナログな体験から離れていたぶん、それ以降は没入型や体験型のイベントをみんなが求めている感覚があります」


ネット発のカルチャーとリアルな場をどう接続するか。その可能性を模索するなかで、Luchiaさんは「NIGHT HIKE」と出会った。
すぐに運営のTRIBALCON.へ連絡して、「一緒に何かやりたい」と熱意を伝えたという。そこからイベントのポップアップなどでコラボレーションを果たした後、「FOUND」では主催を株式会社リグラフィックス、企画・制作をCTCRECORDSとTRIBALCON.が共同で担当することになった。
「今回のイベントで目指したのは、完成品を一方的に見せるだけではなく、演者や来場者の接点が生まれる場所です。その場にいる人たちがお互いに刺激を受けながら、新しいアイデアを生み出す。そんなクリエイティブの実験場がFOUNDだと思っています」

クリエイターによるトークセッションも行われた
Luchiaさんによれば、企画段階から制限を設けず、「新しい表現や試してみたいことがあれば、遠慮せず言ってほしい」と関係者全員に伝えたという。たとえば、DJライブ&ライブドローイングも、もともとは演者側から出た「絵チャットをやりたい」というアイデアから発展したものだ。
「そこにVJチームから『高性能なPCが必要ではないか』という提案があり、企画が具体化していきました。そうしたチャレンジングなアイデアを実現するうえで、TRIBALCON.がこれまで『NIGHT HIKE』で積み重ねた知見と、強力なハイスペックPCは必要不可欠だったと思います」
クリエイターと技術と現場が一体となった「FOUND Vol.0」
“その場にいた人全員が刺激を受ける、クリエイティブの実験場”──Luchiaさんが描いたFOUNDの理想像は、しっかりと来場者にも伝わっていたようだ。
SNSで感想を覗くと、当日に見たパフォーマンスやイベント体験をモチーフにしたファンアートや、「クリエイティブを続けるモチベーションをもらった」という投稿が数多く並んでいた。
もちろん、イベントの主役は演者たちであったことは間違いない。

しかし、フロアで楽しんだ来場者はもちろん、リアルタイムで映像を組み上げるVJや、企画から当日の進行までを担ったスタッフ、そして複数の映像処理を一手に引き受けたPCが、それぞれの役割を果たしたからこそ達成できた光景があった。
「FOUND Vol.0」は、クリエイターと技術と現場が一体となることで生まれる、新たな可能性を示した一夜だったのだ。
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