ゲーム『プラトニカ・スペース』クリエイター座談会 somuniaらが紡ぐ“わかり合う”ことの諦念と希望

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ゲーム『プラトニカ・スペース』クリエイター座談会 somuniaらが紡ぐ“わかり合う”ことの諦念と希望
ゲーム『プラトニカ・スペース』クリエイター座談会 somuniaらが紡ぐ“わかり合う”ことの諦念と希望

『プラトニカ・スペース』クリエイター座談会

人は、他人のことをどこまで理解できるのだろう。

相手の記憶を追体験すれば、同じ気持ちになれるのか。あるいは、同じものを見たからこそ、互いの違いはかえって鮮明になるのか。

KAMITSUBAKI STUDIOのゲーム×音楽プロジェクト「ANMC(アノマチ)」から登場した『プラトニカ・スペース』は、そんな“わかり合えなさ”を見つめるSFアドベンチャーだ。

『プラトニカ・スペース』キービジュアル

『プラトニカ・スペース』キービジュアル

舞台は出口のない部屋が無数に連なる空間。記憶を失った登場人物たちは、脱出を求めて彷徨い続ける。しかし探索の中で見つかるのは、自分のものとは限らない「誰かの記憶」。

過去を取り戻すにつれ浮き彫りになる互いの違いに、当初築かれていた協力関係さえも揺らいでいく──。

本作のシナリオと開発を担当したのは、ゲームクリエイターのKazuhide Okaさん。挿入歌曲には、KAIRUIさんが作詞/作曲/編曲を手がけ、somuniaさんが歌う「ねむるそら」と、長瀬有花さんが作詞/作曲/歌唱を担う「グッドナイトヒーラー」が採用されている。

今回、Kazuhide Okaさん、KAIRUIさん、somuniaさんによる座談会を実施(※編注:長瀬有花さんはスケジュールの都合で参加できなかった)。作品制作の舞台裏を紐解く中で見えてきたのは、“他者とわかり合うこと”を巡る三者三様の考えだった。

取材/文:Yugaming 編集:都築陵佑

目次

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ゲーム『プラトニカ・スペース』の主題は“人はわかり合えない”

──Okaさんが手がけた「ANMC」の前作『ムーンレスムーン』は、現代人の“コミュニティへの帰属意識”を肯定する作品でした。対して、今作の『プラトニカ・スペース』は“人はわかり合えない”という、一見すると真逆のテーマへ舵を切っています。Okaさんの中で考え方や心境の変化はあったのでしょうか?

Kazuhide Oka 結論から言うと心境の変化は全くなくて、根本的には『ムーンレスムーン』も『プラトニカ・スペース』も、まったく同じ地平にある話を描いています。

Kazuhide Oka

Kazuhide Oka:ストーリーライター、インディーゲームクリエイター。2024年5月よりKAMITSUBAKI STUDIOに所属。『プラトニカ・スペース』のほか、『ムーンレスムーン』『ナツノカナタ』『午前五時にピアノを弾く』を手がけてきた

Kazuhide Oka 前作『ムーンレスムーン』は「いろいろなコミュニティがあって、それぞれの場所にいる自分が違っても、それは全部自分だし、全部あなたの人生だよね」と、個人の多面性を肯定するお話でした。

一方の今作『プラトニカ・スペース』は「私とあなたはわかり合えない。けれど、わかり合えないまま一緒に生きていくことはできるんじゃないか」という、他者との共存を肯定する話です。

日々、SNSのタイムラインを眺めていると「やっぱり僕たち、たぶんわかり合えないな」と痛感する瞬間はたしかにあります。だけど「それでも、僕らは一緒に生きていけるはずだ」という、人間への肯定や希望は今も手放していません。

表現の角度が変わっただけで、根底にある僕のスタンスは、前作からずっとブレずに地続きのままですね。

──本作の「他人の記憶を辿る(アイテムを回収/設置して記憶を復元する)」というゲームシステムは、どのように生まれたのでしょうか?

Kazuhide Oka 実は、最初から「記憶を辿るゲームにしよう」と決めていたわけではありませんでした。

プロジェクトの本当に初期、3Dモデラーの片倉もえさんにお声がけした段階では「室内をキャラクターが歩き回る、ちょっとSFチックなものにしたい」という漠然とした枠組みしか決まっていなかったんです。

そこで片倉さんに「何をやりたいですか」と伺ったところ、「記憶をテーマにして、記憶の世界を探索するのはどうでしょう」と提案していただきました。

『プラトニカ・スペース』場面写真[1]

『プラトニカ・スペース』場面写真:記憶喪失の主人公は、同じように記憶を失っている4人の人々と出会う

Kazuhide Oka そのアイディアは、もともと僕の中にあった「人はわかり合えないままでも、一緒に生きていける」というテーマと相性が良さそうだな、と。

記憶がないからこそ分け隔てなく協力し合えていた人たちが、記憶を取り戻すほど、互いの決定的な価値観の違いを知っていく──そんな物語とゲームシステムを、そこから逆算して設計していきました。

記憶を取り戻すほど、人はわかり合えなくなる?

──本作の提供楽曲は、開発初期のキービジュアルやテキスト資料などを元に制作されたと聞いています。KAIRUIさんとsomuniaさんは、楽曲制作の依頼を受けた段階で、本作のテーマをどのように捉えていましたか?

KAIRUI 最初にお話をうかがった時点で、表現したいビジョンやメッセージの軸がものすごく強固な作品だと感じていました。その中で、特にキーワードとして印象に残ったのが「人と人との関係性」です。

KAIRUI

KAIRUI:ソングライター/トラックメイカー。2021年4月、「空想」にてデビュー。自主音源のリリースを軸に数多くの楽曲提供も行っている。透明感溢れる音像で独特の世界観を描き出すのが特徴。

KAIRUI わかり合えることもあれば、どうしてもわかり合えないこともある。できることもあれば、できないこともある。その“あわい(間)”の中で生きていく──。

そんな本作のコアにある哲学を、ゲームの世界観に寄り添う言葉でどう表現するか。それを楽曲制作の大きな軸に据えました。

その後、実際に開発中のプロトタイプを触らせていただく中で、「他者の記憶を追体験して散策する」というシステムそのものがすごいと思ったんです。それって、他者理解における究極のアプローチのひとつじゃないですか。

でも、全く同じ記憶を追体験したとしても、ゲームのキャラクター本人とプレイヤーとでは抱く感想が異なるかもしれませんし、「自分だったらこうするのに」と介入したくなる瞬間もあるはずです。

共通の体験を通して、むしろ自分と他者の違いがはっきりしてしまう。その紙一重の構図を、ゲームの設定やストーリーと結びつけて、言葉として歌詞へ組み込んでいきました。

somunia 一般的なハッピーエンドの物語って、最後には「手を取り合えたね」「わかり合えたね」と結ばれることも多いと思うんです。でも、この作品は、“わかり合えなさ”をそのまま認めてくれる。

somunia

somunia:インターネットのどこかにある部屋で歌う少女。 バーチャルアーティストとして唯一無二の存在感を放ち、作詞から作品のプロデュースまでを自ら手掛ける。一度聴いたら忘れられない透明感のある歌声が特徴で、独自の感性で紡がれる歌詞と中毒性の高い楽曲が、多くのリスナーを魅了している。

somunia これまであまり出会ったことのないテーマだったので、すごく新鮮でびっくりしたし、同時に「なんて素敵な作品なんだろう」と思いました。

 「あなたはあなた、私は私」というタイプの寄り添い方というか……。寄り添うって、必ずしも同じにならなくてもいい、違うままでも一緒にいていいんだなって。レコーディングするときも、その気持ちを大切に歌っていました。

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Kazuhide Oka

ストーリーライター、インディーゲームクリエイター

2024年5月よりKAMITSUBAKI STUDIOに所属。『プラトニカ・スペース』のほか、『ムーンレスムーン』『ナツノカナタ』『午前五時にピアノを弾く』を手がけてきた。

somunia

バーチャルシンガー

インターネットのどこかにある部屋で歌う少女。 バーチャルアーティストとして唯一無二の存在感を放ち、作詞から作品のプロデュースまでを自ら手掛ける。一度聴いたら忘れられない透明感のある歌声が特徴で、独自の感性で紡がれる歌詞と中毒性の高い楽曲が、多くのリスナーを魅了している。

A girl who sings from a room somewhere on the internet. As a virtual artist with a truly unique presence, she handles everything from lyrics to creative production. Known for her unforgettable, crystal-clear voice, she continues to captivate listeners with her unique lyrical sensibility and addictive soundscapes.

KAIRUI

ソングライター/トラックメイカー

2021年4月、「空想」にてデビュー。自主音源のリリースを軸に数多くの楽曲提供も行っている。透明感溢れる音像で独特の世界観を描き出すのが特徴。

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