ゲーム『プラトニカ・スペース』クリエイター座談会 somuniaらが紡ぐ“わかり合う”ことの諦念と希望

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わかり合えなくても──三者三様の思想は共存する

──本作の“わかり合えないまま共存する”というテーマは、意見が激しく衝突する昨今のSNS環境にもつながります。皆さんは、他者と“わかり合うこと”についてどのように考えていますか?

Kazuhide Oka 僕は「わかり合えないまま一緒に生きることだって、できるんじゃないの」とずっと思っています。

そういうメッセージを世の中へ発信して、少しでも社会が変われば嬉しい。それが、僕がゲームをつくっている理由の一つです。

もちろん、僕だって日常の中でめちゃくちゃイライラはしますよ。「もう少しみんな、穏便にやりませんか」と、いつも思っています。ただ、最近のSNS、特にXを見ていると、アルゴリズムやシステムそのものが議論や対立を呼ぶようにつくられていると感じるんです

人間は争っている方がアドレナリンが出る生き物なのかもしれません。そうした人間の本能的な部分と戦いながら、どう社会をつくるか。これはすごく長い闘いだと思いますし、日々自分の無力さも感じます。

somunia 私は、相手と違う意見を持ったときに「私はこう思っています」と伝えることが苦手なタイプなんです。「そういうこともあるよね」と、穏便に済ませてしまうことがほとんどでした。

でも『プラトニカ・スペース』をプレイしたとき、登場人物たちが意見がぶつかっても話し合おうとし、自分の意思を相手に伝える場面がありました。

自分だったら避けてしまうので、すごくハッとさせられたんです。相手を傷つけるような議論は良くないけれど、「私はこう思っている」「あなたはこう思っているんだね」と伝え合うことは、大事なんじゃないかと。

『プラトニカ・スペース』場面写真[3]

『プラトニカ・スペース』場面写真

──特にsomuniaさんは、バーチャルシンガーとして矢面に立つこともあり、ネット上の様々な意見に直面して、思い悩んだり葛藤されたりすることも多いのではないでしょうか。

somunia そうなんです。私は今でも、相手から受け取った言葉をどうしても流すことができなくて、一つひとつの言葉を重たく受け止めすぎて疲れてしまう時もあります。

実は以前、ボイストレーニングを受けて歌声が変化した時期があり、その過程で発表した楽曲に、「somuniaらしくない」という反応をいただいたことがあって。そのときはすごく落ち込みました。

けれど、時間が経った今なら、「その『らしくない』と言った人は以前の歌い方を好きでいてくれたんだ」と考えられるようになりました。それも大切な感情で、「そんなことを言わないで」と突っぱねるのも違うな、と。

その気持ちを受け止めた上で、「ワタシはこういうシンガーになりたいんだ」という自分の意思も、ちゃんと大事にできるようになりました。

お互いの考えを知ることと、自分の意見を伝えること。その上で、「違うままでもいい」と認めることが大事なんだと最近になって思います。

KAIRUI これだけ誰とでも繋がれるようになり、言葉を発信する手段が増えれば、衝突が起こらない方が難しい。それでも、互いに寄り添おうとすることや、理解しようとすることには価値があると思います。

理解しきることを目指すのではなく、理解し合おうと努力するプロセスを重んじる。その結果がどうであれ、相手を尊重しようとする心があったかどうか。それこそが、極めて重要なことだと思うんです。

今、自分の目の前にいる人がどんな喜びや悲しみを抱えているか、僕一人の頭では想像しきれません。それでも、その誰かの気持ちを想像しようとしながら生きていくことはできる。そして、その想像を形にできるものが、僕にとっては音楽なんです。

全員がわかり合えるとは思わない。それでも、理解しようとする姿は、絶対に美しいものだと信じたいです。

Kazuhide Oka KAIRUIさんが言った「わかり合おうとする努力の美しさ」を、僕はたぶん諦めています

僕は、「私たちはわかり合えないし、わかり合おうとする努力にも、あまり意味がない」と考えている、かなり諦念を抱いているタイプなんですよ。

その上で、『プラトニカ・スペース』では、「お互いにわかり合えなくても、それでも一緒に生きていける」という希望を描いています。

『プラトニカ・スペース』オフィシャルトレーラー

Kazuhide Oka 僕はいつも、これをコンビニのレジに例えるんです。お客さんと店員さんが、何かについて、全く違う意見を持っていたとしても、「商品を買いたい人」と「商品を売る人」としてのやり取りはできる。

思想や価値観は一致していなくても、そうした社会的な仕組みをつくることができれば、僕たちはわかり合えないまま、一緒に生きていける。そこに、僕が考える絶望と希望の境界があるんだと思います。

──今回の座談会を通じて、作品の見え方に変化はありましたか?

KAIRUI お互い、同じ方向を向いているところもあれば、それぞれ全く違うアプローチや、違う場所を見ているところもあった。この揃わなさこそが、この作品の内容と、僕たちの実際の制作のあり方に噛み合っているんだと、改めて感じました。

自分は、努力と信じることをモットーに生きています。このゲームを通して、人と人との関係の見方や、自分の付き合い方を改めて見つめ直すことができました。

最終的には、自分はやっぱり、人を信じる方向へ舵を切って生きていくんだと思います

somunia 今日お話をして、KAIRUIさんと私の音楽への向き合い方や、創作のスタンスには、近いところがあると感じました。今回、一緒に制作できたことが嬉しかったですし、とても刺激を受けました。

一方、Okaさんの「絶望と希望」という割り切った考え方にも、すごく感じるものがありました。人同士の関係は、綺麗事やハッピーエンドばかりでは絶対に終わらない。でも、このゲームは、そこへちゃんと焦点を当てている。

私は自分の意見を伝えることが苦手なので、ゲームのプレイと今日の座談会を通じて、ちょっと大げさですけど、また少し心が成長した気がします。

Kazuhide Oka KAIRUIさんが、“わかり合おう”とすることに希望や勇気を見出していると直接聞けたのが、本当に良かったです。

僕はそこを半ば諦めて絶望しているので、世の中には「それでも信じる」という、自分とは違う光のような人がちゃんといるんだということを知れた。それ自体が、まさに“わかり合えなさ”でもあるし、同時に幸せなことでもあると思います。

KAIRUI 自分は信じ続けますよ。

Kazuhide Oka ぜひ、世の中をいい感じにしてください(笑)。

somunia 光ですね。

Kazuhide Oka 僕自身は、わかり合うことについて、これからも「緩やかな諦め」を持ち続けると思います。急にすべてが変わることはない。でも、それでも最終的には希望を捨てていません。

私たちはきっとわかり合えない。それでも、きっとやっていけると思っています。

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Kazuhide Oka

ストーリーライター、インディーゲームクリエイター

2024年5月よりKAMITSUBAKI STUDIOに所属。『プラトニカ・スペース』のほか、『ムーンレスムーン』『ナツノカナタ』『午前五時にピアノを弾く』を手がけてきた。

somunia

バーチャルシンガー

インターネットのどこかにある部屋で歌う少女。 バーチャルアーティストとして唯一無二の存在感を放ち、作詞から作品のプロデュースまでを自ら手掛ける。一度聴いたら忘れられない透明感のある歌声が特徴で、独自の感性で紡がれる歌詞と中毒性の高い楽曲が、多くのリスナーを魅了している。

A girl who sings from a room somewhere on the internet. As a virtual artist with a truly unique presence, she handles everything from lyrics to creative production. Known for her unforgettable, crystal-clear voice, she continues to captivate listeners with her unique lyrical sensibility and addictive soundscapes.

KAIRUI

ソングライター/トラックメイカー

2021年4月、「空想」にてデビュー。自主音源のリリースを軸に数多くの楽曲提供も行っている。透明感溢れる音像で独特の世界観を描き出すのが特徴。

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