ゲーム『プラトニカ・スペース』クリエイター座談会 somuniaらが紡ぐ“わかり合う”ことの諦念と希望

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<蕾の中>と<蛹のなか>──同じ物語から生まれた二つの曲

──「グッドナイトヒーラー」は最後に<蛹(さなぎ)のなか/目を開いた>と歌い、「ねむるそら」は<おやすみ>で終わるのも対照的ですよね。

ANMC「グッドナイトヒーラー feat.長瀬有花」ジャケット写真

ANMC「グッドナイトヒーラー feat.長瀬有花」ジャケット写真

KAIRUI そうなんですよ。これも事前に何も打ち合わせしていないんです。

さらに言えば、「ねむるそら」には<蕾(つぼみ)の中>という言葉が出てきます。一方「グッドナイトヒーラー」の歌詞には<蛹のなか>と書かれている。

どちらも閉じた状況から何かがはじまろうとする、似た状況を表す言葉で、語数も同じなので、入れ替えようと思えば入れ替えられるかもしれない。

でも、長瀬さんは、これまで見てきた世界から<蛹>を選び、自分は無意識に<蕾>を選んだ。

そこに、二人が見てきた景色や、歩んできた道の違いといった作家性が表れていると思います。そうした構造の違いを見ながら、二つの曲を聴くのも面白いんじゃないでしょうか。

somunia 私も、二つの曲に違う役割を感じました。

「ねむるそら」は子守歌のように、そっとそばで見守り、隣へ座ってくれる楽曲。一方で「グッドナイトヒーラー」は、手を繋いで一緒に走ってくれるというか、むしろ前へ引っ張ってくれるような感覚があります。

実際にゲームをエンディングまでプレイして、登場人物たちが未来へ歩いていこうとするところで「グッドナイトヒーラー」が流れた瞬間は、本当に感動しました。

長瀬有花さんの作品の受け取り方というか、才能の恐ろしさを、まざまざと見せつけられました

長瀬有花

長瀬有花:活動の媒体によって形態・表現⼿法を使い分けるマルチアーティスト。2026年よりCAMBRに所属

Kazuhide Oka 僕は正直、<大喝采><大洪水>という言葉がどこから来たのか、自分の感覚では理解しきれていなかった。でも今、KAIRUIさんの話を聞いて腑に落ちました。

実は最初、エンディングに「グッドナイトヒーラー」を入れることに不安もあったんです。物語自体は、静かにフェードアウトするような終わり方をするので、その後に、これだけ明るく、前へ引っ張ってくれる曲が流れて大丈夫かな、と。

もちろん、長瀬有花さんにお願いしたら、こういう曲が返ってくるとは想像していたんですが、実際にゲームに入れたらどうなるかドキドキでした。

でも、いざ入れてみると、somuniaさんがおっしゃってくれた通り、物語を素晴らしい温度感で未来へ引っ張ってくれている。明るいエンディング曲として、うまく機能しているんですよね。

「ズレたままでいい」尖ったものをさらに尖らせる共同制作

──本作では、クリエイター自身の作家性やそれぞれの解釈が、削られることなくそのまま息づいていますよね。しかし、昨今のタイアップでは、作品の世界観やイメージに深く寄り添い、その魅力を忠実に反映させることが求められる傾向にあるのではないかと思います。

Kazuhide Oka 例えば「ねむるそら」の最後にある、<私だけの心の中で、/君だけの心を抱えて>という言葉は、僕の感覚とは違うんです。

それは僕が最初から『プラトニカ・スペース』の中に持っていた概念ではない。はじめて聴いたとき、違和感も感じた。でも、それでいいんですよ。

僕たちがつくっているものは、個々人の作家性によって成り立っている。

丸く収めるのではなく、尖っているものを、さらに尖らせようという方向性なので「ズレています。でも、いいよね」でいいんじゃないかと思います。

KAIRUI Okaさんが、歌詞のその部分に違和感を持ったことは、このゲームが内包する“わかり合えなさ”というテーマから鑑みても、むしろ一番良い形になったんじゃないかなと。

自分は作品の資料を受け取って、自分なりに解釈し直した結論を、最後の歌詞へ置きました。同じ出来事に直面しても、人は全く同じ気持ちにはならない。

そのリアルな感性の違い──「お互いにわかり合えなくても、そのズレを抱えたまま並立している」という、この作品のテーマを何よりも体現できているんじゃないかと思うんです。

somunia 一人は“A”だと思っていて、もう一人は“B”だと思っている──そういうズレは、生活の中にも、創作物を受け取るときにもあると思います

ある曲を恋愛の歌だと感じる人もいれば、美しい友情だと捉える人もいる。今回のゲームは、まさにそうした受け取り方の違いを強く感じさせる作品です。

だからこそ、解釈が最初から一つに揃っていないという意味で、「ねむるそら」も「グッドナイトヒーラー」も逆にゲームへすごく寄り添っている。

KAIRUI 何かの作品に寄り添う曲であっても、自分の中で解釈し直し、自分の言葉や世界観で作品にする。それが意味のあるものとして形になったんだと思います。

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Kazuhide Oka

ストーリーライター、インディーゲームクリエイター

2024年5月よりKAMITSUBAKI STUDIOに所属。『プラトニカ・スペース』のほか、『ムーンレスムーン』『ナツノカナタ』『午前五時にピアノを弾く』を手がけてきた。

somunia

バーチャルシンガー

インターネットのどこかにある部屋で歌う少女。 バーチャルアーティストとして唯一無二の存在感を放ち、作詞から作品のプロデュースまでを自ら手掛ける。一度聴いたら忘れられない透明感のある歌声が特徴で、独自の感性で紡がれる歌詞と中毒性の高い楽曲が、多くのリスナーを魅了している。

A girl who sings from a room somewhere on the internet. As a virtual artist with a truly unique presence, she handles everything from lyrics to creative production. Known for her unforgettable, crystal-clear voice, she continues to captivate listeners with her unique lyrical sensibility and addictive soundscapes.

KAIRUI

ソングライター/トラックメイカー

2021年4月、「空想」にてデビュー。自主音源のリリースを軸に数多くの楽曲提供も行っている。透明感溢れる音像で独特の世界観を描き出すのが特徴。

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