AIを活用して制作されたショートドラマ『非妖哉』が、大きな注目を集めている。制作者は中国の個人クリエイター・不吃榨菜(意:ザーサイは食べない)さん。
公開されている2話の累計再生数が1億回を突破。中国のメディア「深圳新闻网」の報道によれば、いいね数は400万件超。さらに不吃榨菜さんのDouyin(中国版TikTok)のフォロワーも、1000〜2000人ほどから50万人近くまで増加したという(外部リンク)。
『非妖哉』は中国の短編小説集『聊斎志異』を思わせる世界観の中で、デマや人身売買など現代社会の問題を描くショートドラマシリーズ。
不吃榨菜さんはAIを用いて、脚本から映像生成、編集までをほぼ1人で手がけている。
中国の怪異譚を引用しながら、現代社会を描くAIドラマ『非妖哉』
『非妖哉』は、7月23日に第1話『哑女小荷』、8月14日に第2話『莽夫阿牛』がDouyinで公開されたAIショートドラマ。
特に第2話は公開から10日間で300万件以上のいいねを獲得。本作のヒットによって、不吃榨菜さんのフォロワーも40万人以上増加した。
第1話『哑女小荷』では、口のきけない女性・小荷が「狐妖」だとする噂が広まり、人々が真実を見失っていく様子を描写。

人々が真実を見失っていく様子を戯画的に描写/画像はDouyinより
第2話『莽夫阿牛』には、女性を閉じ込めた絵を購入した人間が、絵の中から女性を引きずり出して子を産ませるという物語を通じて、女性の人身売買や監禁、出産を強いる社会規範を寓話的に描いている。
不吃榨菜さんは『非妖哉』について「借妖写人、以奇幻照现实(妖を借りて人を書き、幻想によって現実を照らす)」という考え方を意識していると説明。
登場する怪異はあくまでも作品の外枠であり、「核にあるのは人間」と語っている。

第2話『莽夫阿牛』/画像はDouyinより
生成AI登場以前から培った映像制作の経験 声の収録を除いて1人で制作
不吃榨菜さんは、キャラクターの声のみ外部の声優に依頼し、脚本、映像生成、編集などを1人で担当している。制作には、複数のAIモデルを利用できる映像制作プラットフォーム・LibTVを使用しているという。

人身売買を巡る物語が展開される『莽夫阿牛』/画像はDouyinより
不吃榨菜さんは生成AIの登場によって映像制作をはじめたのではなく、もともとはDouyinで約300万人のフォロワーを抱えるインフルエンサー・江问渔さんのチームで、数年間にわたって撮影や編集などを担当。
そこで培ったカメラワークなどの経験が、現在のAI映像制作にも生かされているという。
2026年4月には初めてのAI短編『衡水模式』を制作。その後、本格的にAI映像制作へ移行し、『非妖哉』を立ち上げた。
1話の制作費は約24万円 1カットを50回生成することも
『非妖哉』では、1話あたり約10日間、制作費約1万元(約24万円)を費やして制作。通常のドラマ制作とは比較するべくもなく安価だが、試行錯誤がうかがえる。
第1話では、作品全体の美術を決定する最初のイメージをつくるだけで3〜4日を費やし、LibTVのポイントを10万ポイント以上消費。金額に換算すると約6000元(約14万円)だったという。
不吃榨菜さんは、AIが生成しがちな「網紅顔(インフルエンサー風の顔)」を避けるため、当時の線描画や古代家具の装飾なども研究。同じくAI特有の急激なズームなども抑え、ゆっくりとしたカメラワークを意識したという。

40〜50回ほど生成して制作された子どもが巻物に閉じ込められる場面/画像はDouyinより
また、第2話で子どもが巻物へ閉じ込められる場面では、狙った動きを表現するために同じカットを40〜50回ほど生成。
不吃榨菜さんは、AIでは実写で難しい大規模な映像表現が容易になる一方、人物の微妙な立ち位置や感情表現など、実写なら簡単な調整がかえって難しくなると説明している。
不吃榨菜さんは『非妖哉』第1シーズンを全6話で構想。今後は月1〜2話ほどのペースで制作を続ける予定だという。
この記事どう思う?
関連リンク
0件のコメント