ハンガリーの作家クラスナホルカイ・ラースローさんの小説『サタンタンゴ』の邦訳版が、6月22日に国書刊行会から刊行された。
翻訳は早稲田みかさん。368ページで定価は2970円(税込)。
『サタンタンゴ』は、2025年にノーベル文学賞を受賞したクラスナホルカイ・ラースローさんが、1985年に発表したデビュー作にして代表作。タル・ベーラ監督による7時間超の映画の原作としても知られている。
邦訳企画は以前から進行しており、今回待望の刊行となった。
偽りの救世主を待つ人々を描く『サタンタンゴ』
『サタンタンゴ』の舞台は、ハンガリーの寂れた農場。
住人たちは、かつてのリーダーが戻ってくるという知らせを受け、居酒屋に集う。彼らは酔ってタンゴを踊り、互いを牽制しあいながら、その帰還を待ち続ける。ある人妻は、その来訪を不遇からの救いとみなし、ある男は英雄に疑いのまなざしを向ける。
『サタンタンゴ』帯/画像はAmazonより
泥濘に沈む村、永遠に続くかのような雨、死んだはずの男の帰還。そこに陰謀と悲劇が交錯し、見捨てられた人々は狂乱の渦へと突き動かされていく。
偽の救世主に振り回される人々を描いた、現代に通じる寓話とも読める内容になっている。
タル・ベーラ監督による7時間超の映画の原作でも知られる代表作
『サタンタンゴ』は、ハンガリーの巨匠であるタル・ベーラ監督によって映画化されたことでも知られている。
映画『サタンタンゴ』は、上映時間7時間18分に及ぶ長大な作品。原作小説の世界を、長回しを多用した約150カットで描く。
完成までに約4年の歳月を費やした大作で、ベルリン国際映画祭フォーラム部門カリガリ賞を受賞している。
小説版もまた、終わりのない独創的な文体によって、出口の見えない世界を描き出す作品として評価されてきた。2014年には、アメリカの文学賞「ベスト・トランスレイテッド・ブック・アワード」に選出されている。
今回の邦訳版では、原書にない蜘蛛のモチーフを忍ばせた装丁も見どころになっている。
ノーベル文学賞作家クラスナホルカイ・ラースローとは
クラスナホルカイ・ラースローさんは、1954年、ハンガリーのジュラ生まれ。編集者を経て、1985年に『サタンタンゴ』で作家デビューした。
現代ハンガリー文学を代表する作家の一人であり、作品は世界40か国語以上に翻訳されている。代表作に『抵抗の憂鬱』『戦争と戦争』『ジェムレはどこへ』などがある。
2015年にマン・ブッカー国際賞、2019年に全米図書賞翻訳文学部門を受賞。2025年には、「終末的な恐怖の渦中で芸術の力を再確認させる、説得力と先見性のある作品群」により、ノーベル文学賞を受賞した。
日本との関わりも深く、2度の長期滞在を通じて日本の伝統文化に関心を持ち、その経験は作品の重要なモチーフにもなっている。
これまでの邦訳作品に、『サタンタンゴ』と同じく早稲田みかさん訳の『北は山、南は湖、西は道、東は川』がある。
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