ボカロPのOrangestarさんが、およそ2年ぶりの新曲でTVアニメ『春夏秋冬代行者 春の舞』の主題歌を担当する。
その一報は、長く彼の音楽を聴いてきたリスナーにとって、少なからず驚きをもって受け止められたのではないだろうか。
Orangestarさんといえば、「アスノヨゾラ哨戒班」「快晴」「Henceforth」などの楽曲を通じて、ボカロシーンの中でもひときわ強く「夏」「空」「青春」のイメージと結びついてきた作家だ。
そんなOrangestarさんが春をモチーフにした物語の主題歌を担当──意外にも思える組み合わせだが、これまでの楽曲を振り返るとむしろ必然と感じられる。
なぜ、Orangestarさんの音楽は『春夏秋冬代行者 春の舞』に相応しいのか。彼の歩みと作家性を辿りながら考えてみたい。
文:highland 編集:恩田雄多(KAI-YOU)
目次
Orangestarがアニメ主題歌を担当するという意味
夏の澄んだ青空、眩しい日差し、夜明け前の疾走感、もう戻れない時間への眼差し──それらはイラストレーターのM.Bさんらが手がける美麗なイラストと相まって、Orangestarさんの音楽を特徴づける大きな要素として、多くのリスナーの記憶に刻まれてきた。
彼自身、過去のインタビューにおいて「夏生まれであり、夏の音や匂いが好きで、夏を中心に一年がまわっている」とまで発言している(外部リンク)。Orangestarさんにとって夏は単なる季節ではなく、創作衝動の中心にある時間と言っても過言ではないだろう。
そのOrangestarさんが今回向き合うのは、春を主題とする物語である。
4月から放送中の『春夏秋冬代行者 春の舞』は、四季の神々から力を与えられた代行者たちが季節を巡らせる世界を舞台にした作品だ。原作は『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の作者・暁佳奈さんが手がけている。
『春夏秋冬代行者 春の舞』
春の代行者・花葉雛菊が行方不明になってから10年間、この国では春だけが失われていた。やがて雛菊が帰還し、春の護衛官・姫鷹さくらとともに、春を届ける旅へ出る。季節の美しさをバックに、奪われた時間、取り戻せない過去、それでも誰かと共に歩き出そうとする意志の物語である。
一見すると、「夏の作家」として語られてきたOrangestarさんが「春」をテーマにすることには意外性がある。しかし、彼の楽曲を改めて振り返ってみると、その接続は決して唐突なものではない。
2010年代のボカロシーンの象徴であり、2020年代以降のボカロPにとっての参照点
Orangestarさんは、2013年にボカロPとして活動を開始。2014年に投稿された「イヤホンと蝉時雨」「アスノヨゾラ哨戒班」が大きな話題を呼び、以降、ボカロシーンにおける代表的な作家の一人として存在感を強めていく。
その影響は、リスナーの記憶に残っているだけではない。後続のボカロPたちも、Orangestarさんからの影響やリスペクトをたびたび語ってきた。
たとえば、現在のボカロシーンにおける主要なアーティストの1人であるMIMIさんは、自身のボカロP活動の原点としてOrangestarさんの名前を挙げている。
Aqu3ra(あくえら)さんは「アスノヨゾラ哨戒班」について、爽快感やサビで開けている感じ、自由な表現に勇気をもらった経験を語っている(外部リンク)。
Guianoさんもまた「Orangestarさんの曲を聴いて作曲をはじめた」と語り、影響を受けた作家の一人として名前を挙げている(外部リンク)。ほかにも、■37さんやCieloさんなど、Orangestarさんからの影響を示す作家は少なくない。
つまりOrangestarさんは、2010年代のボカロシーンを象徴する作家であると同時に、2020年代以降のボカロPたちにとっても一つの参照点であり続けている。彼の楽曲は、単に一時代のヒット曲として消費されたのではなく、次の世代のつくり手たちに「自分もつくってみたい」と思わせる強度を持っていた。
ボカロP Orangestarの王道感 推進力を生む音楽的特徴
では、その強度はどこにあるのか。Orangestarさんの音楽的特徴は、ある意味では非常に明快だ。
楽曲の土台には、いわゆるポップパンク進行や小室進行に代表される、シンプルで循環的なコード進行が置かれることが多い。複雑なハーモニーでリスナーを惹きつけるというより、まっすぐに走っていく推進力を生むための設計だろう。
Orangestarさん:2013年4月にボカロPとして活動開始。2014年に投稿した「アスノヨゾラ哨戒班」が大きな話題を呼んだ。2017年〜2019年にかけての休止期間を経て2020年に活動を再開。2021年8月カロリーメイト web movieのテーマ曲「Surges (feat.夏背&ルワン)」をリリース。2024年6月、自身初となる東名阪でワンマンライブを開催した。
その上に乗るメロディは、ハイトーンのボーカルを中心に組み立てられている。IAや初音ミクの声は、楽曲全体の中心を貫く一本の線のように扱われており、高音域へ向かって言葉が詰め込まれ、終盤では転調によってそれをさらに上へと引き上げることもある。
清々しく空へ抜けていくような高音の歌声は、Orangestarさんの音楽が「透明感」「清涼感」と評される大きな理由の一つだ。
アレンジ面では、ロックやパンク的な疾走感のあるリズムに、清廉なピアノや透明な電子音を重ねている。派手に音数を増やすのではなく、イントロや間奏で音数を絞り、余白を多く残すことも多い。
たとえば「Surges」のイントロが顕著だが、最初はピアノとキックだけのミニマルな構成ではじまり、そこからシンセ、クラップ、ドラムが加わることで全体のサウンドへと一気に広げていく。
このような、少ない音からサビで視界が開けるように広がっていく構成は、Orangestarさんの楽曲にある空や海、夜明けのイメージと強く結びついている。
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イベント情報
Orangestar 「Petals / 花筏」
- 発売日
- 【CD】2026年5月27日(水)
- 【レコード】2026年7月1日(水)
- 価格
- 【CD】¥1,800(税込)
- 【レコード】¥5,500(税込)
- 品番
- 【CD】XSCL-138
- 【レコード】XSJL-8
- 収録曲
- 【CD】M1 Petals, M2 花筏, M3 Petals instrumental , M4 花筏 instrumental
- 【レコード】A面(M1 Petals, M2 花筏)/B面(M1 Petals instrumental , M2 花筏 instrumental)
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