トレーディングカードゲーム『マジック:ザ・ギャザリング』において、近年世界的に存在感を増しているフォーマット「コマンダー」。
日本では長らく「統率者戦」や「EDH」という名称で親しまれてきたこの遊び方について、ウィザーズ・オブ・ザ・コースト日本チームは、今後「コマンダー」という名称へ統一していく方針を発表した。
同時に、日本国内でコマンダー文化をさらに推進するプロジェクトチーム「ジャパン・コマンダーネクスト」も発足(外部リンク)。
かねてよりその長い歴史と共に“競技性の高いカードゲーム”という印象が強かった『マジック:ザ・ギャザリング』。なぜ今、カジュアルに多人数で楽しむコマンダーが強く打ち出されることになったのか。
KAI-YOUでは、ウィザーズ・オブ・ザ・コースト日本チーム「ジャパン・コマンダーネクスト」のメンバーにインタビューを実施。世界的なコマンダー人気の現在地と『マジック:ザ・ギャザリング』というゲームが迎えつつある、新たな局面について話を聞いた。
目次
- 1. 新プロジェクト「ジャパン・コマンダーネクスト」とは何か?
- 2. コマンダーは“自由”で“自己実現”が可能なフォーマット
- 3. 日本での急速なコマンダー需要はいつ起こったのか?
- 4. 海外では圧倒的主流──コマンダーが『マジック』の王道になった理由
- 5. 日本と海外、コマンダー文化の違いはある?
- 6. コマンダーに注力しても、競技プレイは絶対になくならない
- 7. 『マジック:ザ・ギャザリング』全体におけるコマンダーの重要度
- 8. TCG市場全体の隆盛は『マジック』にどのように作用しているのか?
- 9. 「勝ち」を目指すと上手くいかない──改めてコマンダーとは、何を楽しむ遊びなのか?
- 10. 「甘口/辛口」はデッキの強さではなく、ゲーム体験の違い
- 11. コマンダーの楽しみ方を拡大するのは、公式だけではなく“コミュニティ”の力
新プロジェクト「ジャパン・コマンダーネクスト」とは何か?
──今回は「ジャパン・コマンダーネクスト」を動かしている方々に集まっていただきました! まずは自己紹介をお願いいたします。
前野ジョナサン和志 ブランドマネージャーをしている前野です。ブランドマネージャーというと、主には屋外広告の企画だったり、日本で出していくトレーラーや映像の企画だったり。セットによってはソーシャルメディアで話題になるような施策を考えたりしています。
いかに『マジック』というブランドを広く知ってもらえるか、ということをメインに仕事をしています。
金子真実 ソーシャル&コミュニティマネージャーをしている金子です。普段はソーシャルメディアやWebサイト運営をはじめ、プレイヤーとのコミュニケーションに関わる仕事をしています。
伊藤豪志 ウィザーズ・オブ・ザ・コーストの伊藤です。トレードマーケティングマネージャーとして、お店を通したプロモーションを担当しています。店頭に置いていただく看板をつくったり、イベントを設計したり、キャンペーンなどを担当しています。
「ジャパン・コマンダーネクスト」は5人のメンバーで運営されている。
──それぞれ本来の業務がありつつ、「ジャパン・コマンダーネクスト」が新たにはじまった形なんですね。
前野 そうです。もともと各々の役割があって、セットごとにどうプロモーションしていくか、どう楽しんでもらうかを考えるのと同時に、このプロジェクトもやっているという感じです。
伊藤 単純に仕事が増えた感じですね(笑)。
──新たに発表された「ジャパン・コマンダーネクスト」について教えてください。これまで日本では「統率者戦」と呼ばれることが多かった遊び方を「コマンダー」に名称統一する発表と同時に、このプロジェクトの発足も明かされました。どのような背景で誕生したチームなのでしょうか?
前野 去年ぐらいから、2026年度以降の『マジック:ザ・ギャザリング』をどう打ち出していこうか、という話を日本チーム内でしていたんです。
その中で、近年は日本でもコマンダー──以前は統率者戦と呼んでいましたが──の需要がすごく高まっているという実感がありました。イベントの参加人数だったり、製品の売れ方を見ても、コマンダーの人気がかなり高まっていることが見て取れたんです。
それに加えて、社内にもコマンダーが好きな人がすごく多かった。そういった背景もあって「今年の戦略として、もっとコマンダーを打ち出していきたいよね!」という話が自然と出てきました。
そこから、みんなでアイディアを出していく中で「プロジェクトという形で立ち上げて、既存のプレイヤーや、これからはじめる方に、コマンダーってこんなに面白いんだよと伝えていく活動をしたい!」ということで生まれたのが「ジャパン・コマンダーネクスト」です。
コマンダーは“自由”で“自己実現”が可能なフォーマット
──なるほどです。改めて、コマンダーという遊び方やそのゲームの目的について教えてください。
前野 コマンダーは、もともと海外ですごく人気があった遊び方です。『マジック』をやっている方であればご存じだと思いますが、アメリカを中心に、もともとはプレイヤーコミュニティで生まれた遊び方/文化でした。
前野 ジョナサン和志さん(ウィザーズ・オブ・ザ・コースト日本チーム ブランドマネージャー)
前野 その文化を公式がバックアップしていったり、アメリカではYouTubeチャンネルですごく話題になったりして、コミュニティと一緒に成長していったフォーマットなのかなと。
遊び方としても、従来の1対1で遊ぶゲームとは違って、3~4人以上の多人数で遊びます。もちろん真剣勝負も可能ですが、よりカジュアルに、気心の知れた仲間内でワイワイと盛り上がりながら遊べるフォーマットになっています。
金子 おそらく『マジック』というゲームの中で、最も“自由”なフォーマットかなと思っています。自由で、多様で、好きなことができる。“自己実現”も大切なキーワードです。
伊藤 僕は2014年にウィザーズ・オブ・ザ・コーストに入社して、その時にリリースされた統率者デッキをいまだに使っているんです。ずっと細かくアップデートを繰り返しながら。
金子 デッキを少しずつ育てていくのは、コマンダーの大きな魅力の一つですね。
1対1のフォーマットだと、最初から完成形を目指すことが多いじゃないですか。でもコマンダーって“完成”の概念があまりないんですよね。少しずつデッキを成長させていく。育てていく。そういう楽しさを味わえるフォーマットだと思っています。
金子 真実さん(ウィザーズ・オブ・ザ・コースト日本チーム シニア・ソーシャルメディア&コミュニティマネージャー)
──たしかに、従来の『マジック』とは時間感覚がだいぶ違う感じがします。
金子 そうですね。競技的なフォーマットでは、めまぐるしく環境やメタゲームが変わったりして。その時々で強いデッキやその対策を追いかけることが多いと思います。
でもコマンダーは、ひとつのデッキを長く使いながら、自分の好きなカードを足したり、テーマを変えたり、ちょっとしたこだわりを入れたりできる。その意味では、デッキが自分の分身みたいになっていくところがあります。
伊藤 僕のデッキも、かなり長く使っていますからね。もちろん最初に組んだ時とは全然違う形になっているんですけど、それでも同じデッキをずっと更新している感覚なんです。
伊藤 豪志さん(ウィザーズ・オブ・ザ・コースト日本チーム トレードマーケティングマネージャー)
日本での急速なコマンダー需要はいつ起こったのか?
──「ジャパン・コマンダーネクスト」が結成された理由として、日本でのコマンダー人気の高まりを挙げられていました。公式として、その盛り上がりはいつ頃から感じはじめたのでしょうか?
前野 ここ1〜2年でかなり劇的にプレイヤー人口が増えている印象があります。数年前までは「ちょっと来ているかもしれないね?」ぐらいの感覚でした。
日本の『マジック』といえば、長らく競技的なプレイスタイルが主流でした。2〜3年前まではスタンダードやモダンといったフォーマットがたくさん遊ばれていて、コマンダーはそれ以外のフォーマットの一つ、ぐらいの立ち位置だったんです。
今でもプレイヤー人口の総数で言えば、競技的に遊んでいるプレイヤーの方が多いのかもしれません。でもそれが明確な差ではなくなるくらいの勢いでシェアを伸ばしています。
伊藤 イベント運営の目線で言うと、店頭イベントの参加者数やイベント数は、年々右肩上がりで増えていますね。
「コマンダーの構築済みデッキが買えない」という声が聞こえはじめたのも、去年くらいからですよね。確実にコマンダー人気が増加したといえる状況になったのは、その頃からです。
『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』の構築済みコマンダーデッキ。発売直後から品薄が続いていたが、現在は流通が進んで手に取りやすい状況となっている。
──急激に人気が伸長した理由について、どのように分析されていますか?
金子 明確に「これが理由です」と言えるものがあるわけではないんです。様々な要因が総合的に重なっています──ただ、「ユニバースビヨンド」の展開は大きなきっかけの一つだと個人的には思います。
──「ユニバースビヨンド」。外部IPとのコラボ製品ですね。
「ユニバースビヨンド」は2021年に『ウォーハンマー40,000』や『ストリートファイター』などのコラボカードが発売されたことから本格的にスタート。以降「ファイナルファンタジー」や「マーベル」とのコラボセットなどが発売され、大きな反響を呼んだ。
金子 はい。外部IPのカードって「このキャラクターを使いたい」「このキャラクターを活躍させたい」という欲求を非常に刺激するものだと思うんです。それって、コマンダーという遊び方にすごくフィットするんですよね。
好きなキャラクターを統率者に据えて、そのキャラクターを中心にデッキを組める。「ユニバースビヨンド」が広く行き渡ったこととコマンダーという遊びが合致した。これはかなり大きいと思います。
──キャラクターの存在がプレイの入口になるというのは今までの『マジック』ではあまり観られない事象でした。先ほどの話の通り、コマンダーの構築済みデッキがすぐ売り切れてしまうというような状況も起きていますね。
前野 競技的なフォーマットだと「このカードが好きだから使いたい!」と思っても、環境的に強くなければ採用しにくいことがありますよね。でもコマンダーなら、「このキャラが好きだから使う!」がそのまま遊びの軸になるんです。そこが「ユニバースビヨンド」と非常に相性が良い理由だと思います。
あと、構築済みデッキの品薄に関しては──具体的な数字は言えませんが「こんなに増やしていいのかな……?」と不安になるぐらいの数をどんどんと製造中です。ご不便をおかけしますが、どうかお待ちください!
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