「甘口/辛口」はデッキの強さではなく、ゲーム体験の違い
──日本独自の展開として、「甘口/辛口」という表現がありました。ゲームレベルを示す言葉として打ち出されたのかと思いますが、その背景にはどういう思いがあったのでしょうか? コマンダー本来の取り決めである「ブラケット」と異なる概念なのでしょうか。
日本独自イベント「コマンダー交流会:甘口/辛口」が5月16日より開催中(画像は公式サイトより)
伊藤 「甘口/辛口」は、コマンダー交流会におけるイベントの温度感を直球で表現するためにつくりました。甘口は、リラックスして楽しみたい人向け。辛口は、駆け引きを楽しみたい、勝利を優先して遊びたい人向け。そういう形で分けています。
──なるほど。それはデッキのレベルや強さではなく、楽しみ方の違いなのでしょうか?
伊藤 楽しみ方ですね。
金子 ここはすごく大事なところです! ブラケットの話になると、皆さんデッキ構築の話、ルール的な概念だと思われることが多いんです。
でも、ブラケットって本来は「ゲーム体験に求めるもの」のガイドラインなんです。あくまで、そういう体験をするためにはこのぐらいのデッキレベルがいいですよ──という概念の話なんです。
甘口/辛口は、まさにそのゲーム体験を直感的に思い浮かべられるようなワードとして選びました。
前野 みんなでどうしようと話して、いろいろ候補がありました(笑)。
伊藤 けっこう出ましたよね。
前野 その中で、「カレーを想像したら、甘口/辛口ってわかりやすいよね」と(笑)。
ただ、その裏側にはちゃんとブラケットの考え方もあります。でもブラケットを前面に打ち出すと、どうしてもデッキ構築の話にすぐなってしまうと思ったんです。
そうではなく、まず「こういうプレイ体験ですよ」と直感的に伝えるメッセージとして甘口/辛口があって、その裏に、ブラケットでいうとこういうことですよというメッセージがある。
伊藤 実際に5月16日からはじまったイベントで、自分も最初のイベントに行ってきました。その時は甘口が35人ぐらい、辛口が16人ぐらいの卓に分かれていたんです。
外から見た時に、甘口はワイワイゆっくり楽しんでいて、辛口は真剣に勝利を目指している──見た目の印象としても、私たちが目指した空気感になっているなと感じました。良い棲み分けができていると思います!
──成功ということですね。
前野 現時点では、そう言っていいと思います。
伊藤 それを継続して成功させるのが大事ですね……!
前野 これから全国のお店でもコマンダー交流会が行われていくと思うので、そういった声を吸い上げながら、より良い形を目指していけると思います。
──プレイヤーとして、SNSでブラケットを軸に揉めている様子を見ることもあるんです。それを見て、コマンダーって少し怖い雰囲気なのかな? と感じてしまう人もいるかもしれません。そういう状況も改善されると良いなと思っています。
金子 難しいところですね……! でも前提として、ブラケットは今でもベータ版なんです。なので、議論が巻き起こることに対して、それを止めるようなことを言うつもりはありません。
むしろコミュニティによる健全な議論によって、コマンダーという遊びをどんどん良くしていくことが、ベータ版の目的としてあると思います。さらに良くしていくために、コマンダーフォーマット委員会という組織もあります。
ウィザーズ日本チームとしても、ブラケットの考え方を広めていく施策はやっていきます。ただ、今回のプロジェクトの声明でも言ったのですが、“コマンダーのコミュニティはみんなでつくり上げていくもの”だと思っています。
誰かが何かを決めて、それに従うだけなら、それはコミュニティというより統括組織ですよね。そうではなく、みんなでつくり上げていく。「ジャパン・コマンダーネクスト」としては、それを最大限サポートしていく方針です。
コマンダーの楽しみ方を拡大するのは、公式だけではなく“コミュニティ”の力
──日本でコマンダーを広めていく上で、今現在感じている課題はありますか?
前野 長年『マジック』を遊んでくれているプレイヤーの方でも「コマンダーでは遊んだことがないよ」という方はたくさんいると思うんです。
あとは1〜2回だけ遊んで「ちょっと思ってたのと違ったかな……」と思って辞めてしまった方もいるかもしれません。あるいは、なんとなく「自分が好きなものとコマンダーは違うんじゃないか」と思って、一度もやっていない方もいるかもしれません。
まずは僕たちがコミュニティの皆さんと一緒に働きかけて、一回でも二回でも多く、コマンダーを遊んでもらう。その中から、自分が楽しめる部分を探してもらいたいと思っています。
コマンダーには、誰が遊んでも楽しい部分、楽しめる部分が絶対にあると思っています。
──「コマンダーは人を選ぶ」と言う人もいます。真逆の考え方ですね。
前野 「人を選ぶ」と感じている方は、もしかしたら、まだコマンダーを深く遊びきれていないのかなと思います。
金子なんて、最初は「俺は絶対にコマンダーなんか楽しめない!」と言っていたのに。気づいたらコマンダーのデッキを8個も持っているわけですから。
金子 (笑)。
前野 1対1の真剣な競技プレイを楽しんでいた人が、気づいたらコマンダーにどっぷりハマっている例はいっぱいあります。
金子 やっぱり、まだハードルを感じられている状況が少なからずあると思います。既存の『マジック』プレイヤーもそうですし、まだ『マジック』をやっていない方も含めて、本当に気軽に参加できる環境をつくることが、ぼくらのミッションかなと思います。
特に、最近の構築済みデッキは非常に完成度が高くて。もうそれですぐ参入できるくらいの内容なんです。そういう商品を手に取れるタイミングやきっかけ、場所をたくさんつくっていければと思っています。
──最後に、改めて日本においてどのようにコマンダーを遊んでほしいと考えていますか?
前野 まず本当に、騙されたと思って一回やってみてほしいです! 「俺は競技プレイしかしないんだ」と思っている方も、「これから『マジック』をはじめるんです」という方も、騙されたと思って一回コマンダーを遊んでほしいです。
そして最初に「うん?」と思っても、飽きずに二回、三回と遊んでいただきたいです(笑)。まずは気心の知れた仲間内でやってみるのも良いと思います。「コマンダー交流会」の甘口からスタートして「こういう雰囲気なんだ」と感じてみてもいい。
そうすると、自分の遊び方だったり、「もっとこういうデッキをつくりたいな」という気持ちだったり、人のプレイを見て「ああいうプレイを自分もやりたいな」と感じる部分が出てくると思います。
伊藤 とりあえず、コマンダー交流会の甘口に、構築済みデッキを持って参加していただけると良いと思います。温度感の合った新しいコミュニティに出会えると思いますので、ぜひお店に行っていただきたいです。
金子 まずはじめてほしいというのは間違いないです! そしてハードルを感じないように、僕たちも頑張っていきたいと思っています。自分がやりたいことをやるでもいいですし、みんなと遊びたいでもいい。
きっかけやモチベーションは何でも大丈夫なぐらい、自由なフォーマットだと思っています。騙されたと思って騙されてください。大丈夫です。いずれ、騙されたと思っていたら本当にハマっているはず。
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