『マジック:ザ・ギャザリング』全体におけるコマンダーの重要度
──競技プレイヤーの身として安心しました。とはいえ、コマンダープレイヤーが急増しているのは事実です。実際、『マジック』というゲームにおいて、コマンダーの重要度はどのくらいのものになっているのでしょうか?
金子 かなりの割合になっているのは事実だと思います。我々日本チームとしても、「今後、ゲームの何を推していくのか」と言われたら、スタンダードとコマンダーの二本柱というラインになります。
前野 もともとはずっと「スタンダードを盛り上げよう」という方針だったんです。そこから今年に関しては、スタンダードもコマンダーも両軸で押していこうという話になっています。
海外では逆に、コマンダー人気が突出しすぎていて「もう少し他のフォーマットを推進した方がいいんじゃないか?」という議論が出るぐらいになっています。それぐらい『マジック』全体の中でコマンダーが占める割合は非常に高くなっていると思います。
──その人気は、ゲームデザインにも影響してくる部分はありますか?
前野 私たちは開発に携わっているわけではないので明言が難しいです──が、あると思います。今後も「コマンダーに関わるカードがまったく出ない製品」があるかというと、おそらく想像しにくい部分はあります。
間違いなく、コマンダーも競技も両方楽しめる製品、みんなが楽しめる製品をつくっていくはずです。
TCG市場全体の隆盛は『マジック』にどのように作用しているのか?
──近年は『マジック』はもちろん、“トレーディングカードゲーム”という遊びそのものの注目度が国内外で高まっています。他タイトルも含めて、カードゲームを遊ぶ人の母数が急激に増加した印象です。そういった状況は『マジック』にどのような変化をもたらしていますか?
前野 実は『マジック』をはじめる方って、いきなり『マジック』からはじめる方は少ないんです。これは皆さんの体感でもわかるかもしれませんが(笑)──『マジック』から入るというより、他のカードゲームを経由して『マジック』に行き着く方が多い。
そういう意味では、カードゲーム市場全体が賑わっていることは、向こう数年間をかけて、『マジック』がさらにプレイヤーを増やしていける土壌が育まれている、ということだと思います。
なので、近年のトレーディングカードゲーム全体の盛り上がりは、プラスの要素しかないです。
──母数が増えたことで、従来よりもカードゲームの向き合い方がカジュアル化している側面もあると思いますか?
前野 それも非常にあると思います。これまでカードゲームという遊びは、非常に熱意のあるコアなプレイヤーがコアな遊び方をしていた部分がありました。
しかし母数が拡大した分、カジュアルに遊びたいプレイヤーもすごく増えています。実際、2025年に『ファイナルファンタジー』とのコラボ製品を出させていただいた時に、プレイヤーも増えました。そこからコマンダーに入ってくる方もいます。
カジュアルに『マジック』を楽しみたい方、あるいは本気で楽しみたい方、どちらも増えていますが、特にカジュアルに楽しみたい方が増えている印象です。全体の母数が増えるというのは、そういうことかなと思いますね。
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金子 プレイヤー層が横に広がって、カジュアルに楽しまれる方が増えているのは間違いないと思います。あとは年齢層が縦に広がっているところもあります。
親子ではじめる方もいて、そういう方はやっぱりカジュアルに遊びたい方が多いですよね。
──そういった状況が、コマンダーのファン数を増やしているとも考えられますか?
前野 そうですね。でもそれはコマンダーだけではなく、スタンダードでもそうだと思います。
去年、一昨年からやっている店舗大会「プレインズウォーカーシリーズ」などでも、もともとは勝った人だけがもらえるプロモカードを用意していたところを、じゃんけんでもらえるようにしました。
それはゲームに勝てる強い構築でなくても、イベントに参加して、プロモカードをもらって楽しい経験として帰ってもらえるような意図で設計しています。
金子 実際にそれでプレイヤーの人数が増えたところもあります。お店の現場を見ると、競技的な雰囲気を高めるというよりも、カジュアルに参加できる方が新しい人は入りやすいんだなというのは感じていました。
──長い『マジック』の歴史の中で、今が一番プレイヤーが多いのでしょうか?
前野 毎年のアンケート、製品の売れ方や売上データ、店舗イベントの参加人数などを総合すると、『マジック』が持つ30年以上の歴史の中で、今が一番日本のプレイヤーが多い瞬間だと思います! そして、それは今も増え続けています。
伊藤 いつもは昼に1卓だった社内のコマンダーイベントが、今日は2卓立っていますからね(笑)。
前野 社内的にも増えています!
「勝ち」を目指すと上手くいかない──改めてコマンダーとは、何を楽しむ遊びなのか?
──コマンダーの歴史や哲学についても聞きたいです。日本では、コマンダーのルールはわかるけれど、実際に何を目指していいのかわからない、どう楽しめばいいのかわからないという人もいると思います。「ジャパン・コマンダーネクスト」の皆さんは、そこをどう考えていますか?
伊藤 僕の経験談からお話しすると──僕も最初は1対1のカードゲームとして『マジック』を楽しんでいました。大会にも行って、もちろん勝ちを目指しますよね。そこからコマンダーに移行した時に「勝ちを目指すとうまくいかない」という感覚がありました。
前野 わかります(笑)。
伊藤 そこで「どうやったら楽しめるんだろう?」と疑問に思いました。1対1を遊んでいる方がコマンダーに参加した時に感じるギャップは、たしかにあると。そこで一回遊んで「もうやめた!」とならないようにするのが大事かなと考えています。
──もともと対戦用のカードゲームなのに「勝つこと」だけを目指すと、逆に楽しみ方が見えにくくなるんですよね。
前野 そうなんです。コマンダーは自分にとっての楽しみ方を探求する“試行錯誤”が必要なフォーマットだと思います。そして、その試行錯誤を楽しむべきフォーマットでもあります。
スタンダードやレガシーなどは、環境の中で最適解を求めることが多いです。デッキ構築でも、メタゲームの中で自分がどの最適解を持っていくかに終始するから、楽しみ方がわかりやすい。
でもコマンダーというフォーマットは、ゲーム的な最適解があるわけではありません。自分が好きなプレイスタイルを探す。あるいはシンプルに「ユニバースビヨンド」のようなコラボ製品も増えているので、好きなキャラクターを統率者に据えて、どう活躍させてあげるかを考える。そういった自分なりの楽しみ、楽しさの軸を見つけるのが大事です。
でも、それを一回で見つけるのは結構難しいと思います。自己探求に近いところがあるので。いろいろやっていく中で、「自分はこういうスタイルが楽しいんだな」と見つけていく。そのプロセス自体も楽しんでもらえると良いと思います!
金子 今出ていた「最適解がない」というのは、すごく重要な話だと思います。
コマンダーは最適なプレイをしたり、最適なデッキを使ったから勝てるゲームでは全然ないんです。なんなら、序盤に事故って「僕、全然ゲームに関われないです……」と言っていた人が、いつの間にか勝っていたりする。死んだふりじゃないですけど(笑)。
正しいことをする、という従来の『マジック』の概念からは離れた世界なんです。自分のやりたいことをやれる自由なフォーマットで、その自由を楽しむ。それを広めていくのが、まさに僕たちのプロジェクトのミッションかなと思います。
──「最適解がない」というのは、長く競技的に取り組んでいるプレイヤーだからこそ、最初に戸惑うポイントかもしれませんね……!
金子 そうだと思います。たしかにギャップがあって、それを感じる方もいらっしゃると思います。
だからこそ、コマンダーがどう楽しいのかを、プロジェクトとして、日本チームとして継続的に発信し続けていくことが重要だと考えています。
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