海外では圧倒的主流──コマンダーが『マジック』の王道になった理由
──海外、特に北米では、コマンダーが圧倒的な人気を得ている印象があります。実際にラスベガスのイベントに赴いた際、プレイヤーの9割以上がコマンダーで遊んでいるんじゃないかと思うくらい圧倒的でした。コマンダーがここまでの人気になった理由は、どこにあると思いますか?
前野 海外のことなので、私たちが100%知っているわけではありませんが──本社の人たちと会話していて感じるのは、プレイヤーたちが自発的に推進して遊びはじめて、それを口コミで広めていったという点です。
純粋に“遊び”としてすごく面白かった。だから広まりやすかったのだと思います。そこに、エンジンとして機能したのがYouTubeチャンネルです。
──《The Command Zone》ですね。
前野 そうです。《The Command Zone》というYouTubeチャンネルがあって、今も多くの人に視聴されています。それをきっかけに、コマンダーについて投稿するインフルエンサーのような方々もどんどん増えていった。
金子 海外のカードゲームは、ボードゲーム文化の延長線上に近いところがあると思います。実際に海外のカードショップは、ボードゲームカフェのようなものと併設している店舗も多いんですよね。
そしてコマンダーは、ボードゲームに非常に文化的に近いところがあるんです。だから日本よりすんなりと入りやすい文化的な土壌があったのかなとも思います。
──多人数で卓を囲んで、会話しながら遊ぶという点では、たしかにボードゲーム的ですね。
金子 勝敗だけではなく、その場の“体験全体を楽しむ”感じは、かなり近いと思います。
──先ほどの競技性の高いフォーマットとコマンダーのプレイヤー比率が明確に差があるものではなくなっている、という話には驚きました。
伊藤 もちろん競技プレイも人気ですし、強い熱意で取り組んでいるプレイヤーがたくさんいらっしゃいます。しかし伸び率に関しては、コマンダーの方が成長しています。
前野 大型イベントや「マジック大戦祭」のようなイベントを見ていても、もともとはサイドイベントとしてコマンドゾーンを小さくつくっていたのが、最近はとてもエリアが大きくなってきています。ずっと人が絶えずプレイしている状況です。
今、日本で一番プレイヤー人口が伸びているフォーマットであることは間違いないと思います。
日本と海外、コマンダー文化の違いはある?
──アメリカ以外、日本以外の国でもコマンダーの需要は増えているのでしょうか?
前野 はい。世界的に、間違いなく増えています。日本以外の地域の方が勢いが強い部分もあります。北米だけではなく、ヨーロッパ、シンガポールのような非英語圏の国でも、コマンダーは中心的な遊びになっています。
中国などではまだスタンダードが強いという話も聞きますが、ほとんどの国でコマンダーを中心に伸びている状況は間違いないと思います。
──世界的に『マジック』の遊ばれ方自体が変化しているんですね。
前野 そうですね。もともと『マジック』というと、競技的なイメージが強い、むしろそれを魅力としたカードゲームでした。今も当然、競技プレイはサポートしていますし、世界大会も継続して実施しています。賞金制の大会も含めて、競技プレイは今後もずっと存在し続けるものです。
ただその裏で、ユーザー発の、よりカジュアルに仲間内で楽しめるコマンダーが、どんどん勢いを伸ばしています。
──「ジャパン・コマンダーネクスト」は日本での展開に特化したプロジェクトです。その目線から、国外のコマンダーコミュニティと、日本のコマンダーの遊ばれ方やプレイスタイルに違いは感じますか?
金子 根本のところに、そこまで大きな差があるとは思っていません。お店などで遊んでいる方たちがコマンダーを楽しんでいる姿は、国内外でそんなに変わらないと思います。
唯一あるとしたら、日本人は、知らない人と突然遊ぶのが少し苦手かもしれないですね。それは国民性、文化的な部分としてあるかもしれません。
──たしかにそれはありそうですね。
金子 でもそれ以外は、そこまで違うとは思わないです。
あとは海外文化的なところでいうと、海外のプレイヤーはリアクションが大きいですよね。それが卓全体の盛り上げに貢献しているところもあるので、日本でも自分が少しオーバーリアクションするぐらいのつもりの方が、体験として楽しいかもしれないです(笑)。
コマンダーって“卓の空気”がかなり大事な遊びなんです。だから自分が楽しんでいることを少し大きめに表現すると、周りも楽しみやすくなると思います。
前野 日本でさらにコマンダー熱を加速させるには、知らない人と遊ぶハードルをどう下げるかが大事だと思っています。
仲間内で遊ぶのもめちゃくちゃ楽しいですが、お店のイベントを通じて新しい人と出会う楽しさもある。そこをどう支えていくかは、日本でコマンダーを広げる上で重要なポイントだと考えています。
コマンダーに注力しても、競技プレイは絶対になくならない
──今回、「ジャパン・コマンダーネクスト」の発表があった際、既存の競技プレイヤーの中には不安に思った人もいたと思うんです。コマンダーに注力することで、競技プレイの環境がないがしろにされるのではないか、という不安です。その点についてはどう考えていますか?
金子 まず競技プレイヤー向けの、いわゆる「組織化プレイ」は、基本的にグローバル主導の企画です。なので、日本でそれを撤退していくというラインは基本的にありません。今まで通り、グローバルに沿った形で続けていきます。
その上で、競技プレイヤーの皆さまが不安に思う気持ちはわからなくはありません。僕自身ももともと競技勢ですし……。
ただ、例えばトッププレイヤーのウィリアム・ジェンセン選手が組織化プレイを統括する立場に入っていたり、日本では世界的にも珍しい独自の大型イベントとして「プレイヤーズコンベンション」を開催していたりします。
「プレイヤーズコンベンション」には競技的なイベントもありますし、コマンドゾーンのようなカジュアルなスペースもある両義的な空間です。競技もカジュアルも共存した世界で、『マジック』を楽しめる環境は成立すると思っています。
競技プレイの最高峰「マジック:ザ・ギャザリング 世界選手権」。年に一度開催され、賞金総額100万ドルと栄誉をかけて世界中の強豪を競い合う(画像は公式サイトより)
前野 僕個人の思いとしても、競技プレイは競技プレイでしっかり楽しんでもらいたいですし、コマンダーはコマンダーで楽しんでもらいたい。どちらも遊んでいただけるのが理想です。
「ジャパン・コマンダーネクスト」の発足によって、競技プレイがないがしろになることは一切ありません。その上で、同じコミュニティでも、別のコミュニティでもいいので、新しい形でコマンダーを楽しんでほしい。楽しみ方が全然違う部分はありつつも、毛嫌いせずに両方遊んでもらえたら嬉しいです。
──今はまだ、競技プレイヤーとコマンダープレイヤーの間に少し距離があるように感じます。その間は繋げていくことができるものなのでしょうか?
金子 会社として絶対こうなります! とは言えないのですが──先ほどの通り、僕自身はもともとかなり競技寄りのプレイヤーでした。昔でいう「プロツアー」を回ったりしていたんですけど、それでも今はコマンダーをめちゃくちゃ楽しんでいます。
なぜ僕がコマンダーを楽しめているのかというと、競技プレイヤーも、ただただ競技を追及したくて『マジック』をやっている人ばかりではないと思うんです。例えば、トッププロの方でも、最後にどのデッキを選択するかとなった時に「こういう種類のデッキが好きだから」という感覚はあると思います。コマンダーの自己実現って、その感覚の延長線上にあると思うんです。
僕は一昨年ぐらいにコマンダーをはじめて。今はデッキが8個ぐらいあるんですよ。増えていくんです。
『マジック』って、いろんなことができるゲームです。カードプールは途方もなく膨大で、広くて、すごく自由なんですよ。その中でコマンダーという世界があると、やりたいことがありすぎる。
デッキを組む時も、最初はカードが300枚ぐらい候補にあって、そこから減らさなきゃいけないんです。だから今は、競技勢/コマンダー勢が違う層だと思われている部分はあると思いますが、『マジック』を好きで楽しんでいるという点は同じ。実際はそんなに遠くないと思うんですよ。
──なるほどです。それぞれに特化した施策を行っていくというよりも『マジック』全体を盛り上げるような目線も大切になりそうですね。
前野 そういうイメージであってほしいです! 実際、日本でつくっているイベントに関しても、スタンダードイベントを削るのではなく、それを維持しながらコマンダーイベントの種類を増やして盛り上げていく形です。1対1のイベントを少なくしていくという感じではありません。
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