ボカロP Orangestarはなぜ今、春を奏でるのか アニメ『春夏秋冬代行者 春の舞』主題歌から辿る作家性

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ボカロシーンの内側から、外へ届いた作家

ライターのFlatさんは、Orangestarさんについて「逆に過激性を見い出してしまいたくなるほどシンプルな音色や編曲で知られるボカロP」と評している(外部リンク)。これは非常に的確な指摘とも言えるだろう。

Orangestarさんの音楽は、複雑さによって個性を出すのではなく、むしろシンプルな音色と構成を徹底することで、風景と感情をストレートに立ち上げる。その真っ直ぐさが、結果としてほかの作家にはない強度になっている。

特筆すべきは、Orangestarさんが常に大量の楽曲を発表し続けてきた作家ではないという点だ。活動休止の期間を挟んでおり、近年のリリース数も決して多いわけではない。

それでも彼の楽曲は、今なお再生され、歌われ、カバーされ続けている。「アスノヨゾラ哨戒班」「快晴」「空奏列車」などの楽曲は、歌い手やVTuberによるカバーを通じても新しいリスナーに届き続けている。

「空奏列車」音乃瀬奏&町田ちま(cover)

この持続する人気は、単に「懐かしいボカロ曲」としてのものではない。Orangestarさんの楽曲は、ボカロシーンの内側で強く支持されながら、同時にその外側にも届くポップスとしての強度を持っている。

ボーカロイドの声が持つ透明感を活かしつつ、メロディは明快で、情景は鮮やかで、感情は普遍的である。そのバランスこそが、Orangestarさんを特異な作家にしている。

Orangestarの楽曲が持っていた物語の風景

今回のように、OrangestarさんがTVアニメの主題歌を担当する機会は珍しい。しかし、Orangestarさんがもともと物語性やアニメ的な情景と近い場所にいた作家であることは、改めて確認しておきたい。

近年の活動を振り返っても、Orangestarさんはキャラクターや物語を持つコンテンツと少なからず接点を持ってきた。「ポケモン feat. 初音ミク Project VOLTAGE」への参加、『デジモンシーカーズ』や『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』への楽曲提供などは、その代表例だろう。

これらは直接的なアニメ主題歌とは異なるが、Orangestarさんの音楽がキャラクターや物語を持つコンテンツに開かれてきたことを示している。

「ポケモン feat. 初音ミク Project VOLTAGE」への参加曲「Encounter」

とはいえ、Orangestarさんとアニメ的想像力の関係は、外部IPとの仕事が増えたから突然生まれたものではない。活動初期の時点で、すでにその気配ははっきりと存在していた。

2015年リリースの1stアルバム『未完成エイトビーツ』発売の際のコメントで、Orangestarさんは『化物語』や『凪のあすから』といったアニメが好きだと述べている(外部リンク)。

さらにReal Soundのインタビューでは、それらの作品との出会いが、楽曲制作において「現実的な非現実世界」を意識する大きなきっかけになったと語っていた(外部リンク)。

この「現実的な非現実世界」という言葉は、Orangestarさんの楽曲を考えるうえで重要だ。彼の楽曲には、夏休み、海辺、夕暮れ、夜明け……といった現実の風景がある。

しかし、彼の楽曲の世界観は現実の延長線上にありながら、少しだけ非現実へ踏み出している。「アスノヨゾラ哨戒班」の夜空や哨戒、「空奏列車」の空と列車、「DAYBREAK FRONTLINE」の夜明けへ向かう前線。そうしたトーンが、Orangestarさんの音楽が持つ独特の魅力である。

初期曲「真夏と少年の天ノ川戦争」も、その意味で象徴的な楽曲だ。夏の地方風景、少年少女の出会い、星空、喪失、衝動的な感情の噴出を描くストーリー仕立ての楽曲であり、MVにも、〈物語〉シリーズを彷彿とさせる字幕演出が挿入される。その語り口や映像の感触からは、『化物語』に代表されるような青春アニメ/ジュブナイル的想像力との近さも感じられる。

「真夏と少年の天ノ川戦争」

彼の作品には、現実的な風景を出発点にしながら、そこにキャラクターや物語を立ち上げるような感覚がある。

だからこそ、アニメ『春夏秋冬代行者 春の舞』との接続は、唐突なタイアップというより、もともとOrangestarさんの楽曲が持っていた物語性が、より明確な形で現れたものとして捉えることができる。

そしてその物語性は、『春夏秋冬代行者 春の舞』が持つ「喪失と再起」「巡る季節」という主題によって、さらに具体的な接点を持つことになる。

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イベント情報

Orangestar 「Petals / 花筏」

発売日
【CD】2026年5月27日(水)
【レコード】2026年7月1日(水)
価格
【CD】¥1,800(税込)
【レコード】¥5,500(税込)
品番
【CD】XSCL-138
【レコード】XSJL-8
収録曲
【CD】M1 Petals, M2 花筏, M3 Petals instrumental , M4 花筏 instrumental
【レコード】A面(M1 Petals, M2 花筏)/B面(M1 Petals instrumental , M2 花筏 instrumental)

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