地域に根づく伝統芸能は数多くあれど、なかなか知る機会は少ないもの。
当事者たちも認知拡大のため、様々なアプローチを試みていますが、2025年はその選択肢にソーシャルVRサービス・VRChatが浮上してきそうです。
本記事では、5月28日に公開されたVRChatワールド・島根県江津市 石見神楽『大蛇』をご紹介。日本神話でも有名なスサノオとヤマタノオロチの対決が描かれる、伝統芸能・石見神楽の舞台をいつでも体験できる場へご案内しましょう。
大人も子供も楽しめる伝統芸能「石見神楽」とは?
石見神楽は、島根県西部の石見地方などに伝わる伝統芸能。
日本神話などを題材とし、派手な演出や衣装、勧善懲悪のわかりやすいストーリーが特徴の神楽です。2019年5月には日本遺産に認定されています。
石見地方では郷土芸能として親しまれており、大人はもちろん、子どもからも人気を集めています。神社で実施される奉納神楽以外にも、石見地方各地では定期公演も開催。
担い手である団体も多く、「しまね観光ナビ」では130以上もの団体がリストアップされています。(外部リンク)
演目数が多いのも特徴で、その中でも花形とされるのが、スサノオのヤマタノオロチ退治を題材とした「大蛇」。火を吹く8つの首を持つヤマタノオロチを相手に、勇猛なスサノオが大立ち回りを見せます。
VRChatで、スサノオとヤマタノオロチの対決を見届けよう!
全国出張公演もあるものの、それ以外は石見地方まで出向かなければ見る機会のない石見神楽。その一部を、VRChatで体験できるワールド・島根県江津市 石見神楽『大蛇』が公開されています。(外部リンク)
本ワールドは、島根県江津市が大丸松坂屋百貨店とともに制作。
演目「大蛇」のうち、スサノオとヤマタノオロチの対決を10分のダイジェスト版として鑑賞することができます。
スサノオとヤマタノオロチの動きは本物の神楽の担い手によるもの/撮影ワールド「島根県江津市 石見神楽『大蛇』」
スサノオ役1名と、ヤマタノオロチ役8名がめまぐるしく動く舞台は、それだけで迫力満点。吹き上がる炎と、軽快な笛の音色と太鼓囃子が盛り上げる一進一退の攻防は、さながら特撮ショーです。
鮮やかに剣を振るうスサノオと、迫るヤマタノオロチのモーションは、実際の神楽舞の担い手を撮影/記録し、調整したもの。本家本元がベースの動きには、舞手の息遣いすら感じられます。
ヤマタノオロチは火を吹く!/撮影ワールド「島根県江津市 石見神楽『大蛇』」
現実の神楽公演と異なるのは、上演中の舞台に上がっても良いこと。
舞台上で舞手の動きを間近に観察できるのはめったにない機会です。この特性を活かし、大丸松坂屋百貨店では「大蛇に巻かれる」をテーマにしたフォトコンテストも仕掛けています。(外部リンク)
そしてなにより、この公演は何度でも再生できます。いつでも、どこでも、日本遺産認定の神楽舞を見ることができる。VR機器があれば、文字通り眼の前で鑑賞できる──これ、なかなか贅沢な体験です。
いつでも伝統芸能を体験できる場としてのVRChat
島根県江津市と大丸松坂屋百貨店は、「大蛇」鑑賞ワールドのほかにも、演目「鐘馗」に登場する鐘馗と疫神の装束を再現した3D衣装を発表しています。(外部リンク)
無償配布中の「疫神」衣装/アバターは璃空(筆者改変済み)
金色の豪華絢爛な衣装ですが、なんと価格は無料。対応アバターであればすぐに袖を通すことができます。
もちろん、この衣装は現実ではそうそう着る機会はありません。伝統芸能の舞台を見て、伝統装束にも袖を通す、まるで万博のようなVRChat上でできるのはユニークですし、なにより地域の伝統芸能を身近に感じられます。文化振興として、かなり有効なアプローチかもしれません。
ちなみに、島根県江津市のご担当者とお話しした際、「現地の人はお酒を飲みながら楽しく神楽を見てる」と教えてもらいました。仕事上がりに、VRChatでお酒片手に石見神楽……一味違う飲み会が楽しめそうですね!

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