シンガーソングライター・キタニタツヤさんの新曲「れびてーしょん」のMVが、4月26日に公開されました。
現在放送中のTVアニメ『NEEDY GIRL OVERDOSE』のEDテーマに採用されている本楽曲。そのMVは、全編をソーシャルVR・VRChat上で撮影しています。
3DCG映像ながらも、どこかリアリティを感じる質感と、なつかしさを感じられる不思議なMV──本記事では、MVの構成要素を分析しつつ、なぜ本映像がVRChatで撮影されたのかを、少し考察してみたいと思います。
“どこかで昔撮ったような”3DCGの街と少女
VRChatでの撮影だけでなく、「れびてーしょん」MVは画面比率が4:3になっているのも大きな特徴。さらに、映像全体には少し昔のテレビ映像を取り込んだような加工も施されています。
映像中に登場するのは、人が寝静まった夜の街と、一人の少女。時には自撮りアングルで、時には固定アングルで映る少女は、生身の人間のようにコロコロと表情を変えています。とても愛らしい。
「れびてーしょん」MVに映る、謎の少女/画像はYouTubeスクリーンショット
映像そのものは全て3DCGのはずなのに、画面比率や加工も相まって、「どこかで昔に撮ったビデオ映像」のように見えてしまうのがポイント。
最先端だけど、ノスタルジー。ゆえにちょっとエモい。そんな感情が、キタニタツヤさんの歌とともに呼び起こされます。
制作にはVRChatシーンの著名クリエイターが関与
このMVで監督をつとめているのは、背景アーティスト/3Dモデラーの藍上アオイさん。
VRChatでクラブイベント「青色クラブ」を主催しているほか、VRゲーム「神椿市建設中。VIRTUAL REALITY」の背景ディレクター/モデリングなども手がけており、今回のMVでは空間制作と撮影などを担当したのだそう(外部リンク)。
また、MV中に映る少女は、VRChat向けアバター「Lowtus(ロータス)」。3Dモデラー・とまさんが制作した、2024年発売の市販3Dモデルです。
市販3Dモデル「Lowtus(ロータス)」/画像はBOOTHショップより
ただし、MVに登場している「Lowtus」はカスタマイズされたもの。髪色が変更されているほか、衣服は3Dモデラーのえれさとさんが制作した市販衣装に差し替えられています。
そして、制作クレジットには「Face Tracking Add-on」の表記が確認できます。ここから、MV中のアバターはなにかしらの方法で表情がトラッキングされていることが読み取れます。
ニカ~と笑う様は、表情トラッキング技術のたまもの/画像はYouTubeスクリーンショット
おそらくこの表情の撮影は、VRChatの一部ユーザーも利用している技術が用いられています。一部のVRヘッドセットや関連アクセサリーを使うことで、一般のユーザーでも同様の表情トラッキングは可能です。
この用途でよく名前が挙がるVRヘッドセットが「Meta Quest Pro」。終売したにも関わらず、今なお一部のVRChatユーザーから根強く支持されています。
失われていく“インターネットの居場所”への想い
「れびてーしょん」MVがVRChatで撮影された理由について、公式からの説明などは現時点では確認されていません。
その制作理由を推測するならば、インターネット文化が主題となっている『NEEDY GIRL OVERDOSE』の楽曲であることが、大きな理由かもしれません。ここで、キタニタツヤさんが『NEEDY GIRL OVERDOSE』へのEDテーマ提供に際して寄せたコメントを振り返ってみましょう。
誰も見向きもしなかった手つかずの空き地。好きに大声を出して暴れていられた非現実の無秩序。私の、私たちだけのおもちゃだったその場所にビルが建って、「みんな」がやってきて、通知と広告を介して現実と同じになっていく。全てが移ろっていく中で、ひとり何かにしがみつき老いていくことは悪だとして、お別れを言えたとして、私たちはこの先どこに吹き溜まっていけばいいんだろうか。この嘆きすら、もはや許されないのだろうか。
「ずっとここで悪い子でいたかったのに」といった歌詞からも、インターネットで見つけた誰も知らない居場所が、多くの人に知られ、どこかクリーンになっていくことへの寂しさ、かつてあった遊び場への郷愁が感じ取れる「れびてーしょん」。
そんな想いをこめた歌だからこそ、そのMVをインターネットの最新の遊び場/居場所にして、ちょっとずつ知名度も増え、アングラな雰囲気からクリーンな方角へと歩みつつあるVRChatで撮影したのでは……と考察することもできそうです。
余談ですが、MV中に映る少女は、誰が操演しているのかは明言されていません。キタニタツヤさんかもしれないし、別の誰かかもしれない。
“誰かわからない人”という余白もまた、このMVにちょうどいい余韻を残していそうです。
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