美術集団・カオス*ラウンジを主宰する合同会社カオスラと代表の藤城嘘さんが、進行していた1件の労働訴訟および2件の名誉毀損における勝訴を発表した。
名誉毀損は、騒動について安西彩乃さんがnoteなどを用いて事実と異なる主張を行なっていたとして、カオスラ側が安西彩乃さんを訴えたというもの。労働訴訟は、その名誉毀損訴訟への反訴として、同社の元スタッフ・安西彩乃さんが、会社側から不当に退職を迫られたとして訴えを起こしたもの。
カオスラ側の発表によると、労働訴訟については、会社側の退職勧奨が「任意の退職を求めるものとして許容される限度を超えるものでない」と判決が下されている。
また名誉毀損については、安西彩乃さんが発表した記事に「重要な部分に真実とは認められない表現が含まれて」いると認定され、賠償金の支払いが命ぜられたとしている。
社内のトラブルから労働・名誉毀損訴訟へ発展
同件は2020年5月ごろ、当時カオスラの代表をつとめていた黒瀬陽平さんとスタッフの安西彩乃さんとの不貞関係が発覚したことに端を発している。
発表によると、2人の関係が黒瀬さんの家族に発覚したことからトラブルに発展。黒瀬さんの家族に退職を迫られたという安西さんは、会社側に相談することとなった。
安西さんは同年8月、この協議の中で黒瀬陽平さん、藤城嘘さん、そして当時スタッフであった小松尚平さんから組織ぐるみでのハラスメントがあったとする記事をnoteに投稿していた。
カオスラ側がこの記事の内容が事実に反するとして同年10月に名誉毀損訴訟を起こすと、2021年2月にはその反訴として安西さん側も退職はパワーハラスメントが原因だとして労働訴訟を提起している。
騒動の最中には、2020年7月に黒瀬陽平さんがカオスラを退社。当時アートスクール「ゲンロン カオス*ラウンジ新芸術校」を共同運営していた株式会社ゲンロンがカオスラとの契約解除を発表している。
謝罪から訴訟へ、カオスラの対応が転換した経緯
騒動の全容を把握することが難しくなっていた一因として、当初は謝罪文などを投稿していたカオスラ側が、2020年10月にそれまでの発表内容を不正確だったとして謝罪を撤回、安西さんを提訴したことが挙げられる。
この対応の転換に関して、今回のカオスラ側の声明では当時の状況を、当時の代表・黒瀬さんが退社し、抱えていたプロジェクトを藤城さんと小松さんだけで回さなければならず憔悴していたと説明。
安西さん側の意向もありやむなくSNSに謝罪文を投稿したとしつつ「事後的に見れば、正確な事実関係を確認することなく、専門家への相談もせず、場を収めるためにこのような対応をとり、混乱を招いてしまったことを、残念に思います」と綴っている。
また、その後訴訟へと至った経緯として、謝罪の投稿後に安西さん側から事実と異なる記載がある記事が公開され、和解交渉も破棄されてしまったことから、「事実の調査は公平な判断の期待できる司法に委ねる」べく訴えを起こしたと説明している(一連の投稿は現在、削除されている)。
裁判はカオスラ側の勝訴で終結
今回の騒動は、美術界における性差や雇用関係の不均衡を問うこととなり、大きく注目を集めた。
今回カオスラ側が発表した3件の裁判については、カオスラ側の勝訴という形で幕を閉じた。
労働争議に関しては、一部未払い賃金が認定されたものの、安西さん側の訴えはほぼ棄却。
カオスラがnoteと安西さんに対して行った名誉毀損訴訟では、noteに対しては記事から特定の文言を削除すること、安西さんに対しては55万円の支払いが命じられた。既に命じられたnoteの文言は削除されている。
もう一件の名誉毀損訴訟では、安西さんに対して、藤城さん、小松さんへ55万円ずつの支払いが命じられている。
ただし、判決文の中では、黒瀬さん個人に対する名誉毀損は否定されている。
安西さんのnoteでは、黒瀬さんが立場の不均衡を利用したセクシャルハラスメントに起因する不貞関係だったと主張された。また黒瀬さんはそれに先駆けて、カオスラ退職の際、「私の行動によって被害者の方を傷つけ、このような事態を招いてしまったこと、深くお詫び申し上げます」とTwitter(現X)で投稿していた(現在は削除されている)。
名誉毀損の裁判の中で、「意に反する性的関係の要求というセクハラを継続的に行なっていた」と認められている(黒瀬さんは当該訴訟には関わっていない)。
安西さん支援団体は判決に「公正な視点を欠いていた」とコメント
安西さんを支援している団体「Be with Ayano Anzai」 は、判決が出た後、11月7日付で「すべての訴訟を終えて」と題した声明を発表している(外部リンク)。
その中では判決について「今回の判決を下した裁判官らは法の専門家ではあっても安西さんが置かれていた立場については理解がなく、退職勧奨にかかる事実認定において必要であるはずの公正な視点を欠いていたと当団体は考えます」との主張が綴られている。
ただし、控訴しても判決が覆る見込みはないことを鑑み、裁判は終結となる。
声明は「安西さんと当団体は、本件に限らず立場の不均衡の上に起きるさまざまな問題に対して、より多くの人が誰かが下した結論だけではなく過程を知ること、各々が自身の意見を持ちそれを表現できること、その結果として議論が社会に開かれていくことを望んでいます」と締め括られている。
12月11日追記:黒瀬陽平さんが声明
12月10日、黒瀬陽平さんもXで、一連の訴訟終結について声明(外部リンク)。
黒瀬陽平さんは会社を離脱しているためカオスラから提訴した訴訟には関わっていない。
前述した通り、名誉毀損をめぐる裁判の中では黒瀬さんによるセクハラの事実は認められている。
そのことについて、黒瀬さんは声明の中で、「事実と異なる認定をされてしまったことについては誠に遺憾」「私自身が十分に主張や立証を行うことができていれば、 セクハラの事実が認定されることはなかった」と主張している。
その上で、裁判は終結し、公の場でこれ以上本件については発言しないとしている。
この記事どう思う?
関連リンク
2件のコメント
匿名ハッコウくん(ID:11816)
カスラジまだいたんですね
匿名ハッコウくん(ID:11814)
小松さんのフルネームを掲載していることについて、SNSでご本人が言及されています
https://x.com/komanbe/status/1866482357676777925