読む度に、尊み溢れ、声にならない声が出る
主役2人にもう少し言及すると、小村くんは自分に自信がなくてあと一歩が踏み出せず、三重さんも彼に告白する勇気が振り絞れません。
故に、ゆっくり、じわじわ、ちょっとずつ距離を縮めていきます。その微笑ましさはいつまでも見守っていたい。甘い関係に身悶えます。
読む度に「ぃ……ぎっゅ!」みたいな、声にならない声が声帯から漏れ出てしまう。だからこそ、公共の場で読んじゃダメなのです。自戒。
変わらないことを願いながら、彼の背は伸びてゆく
ただし、ただ甘いだけではありません。
2人は、もしかすると身体的にも精神的にも、人生で最も変化に富んでいる中学生です。
学生生活という限定的な時間、ともすれば刹那的な時間を生き、一方で社会が少しずつ大人になることを要請しはじめる複雑な時期を過ごしています。
作中では3年生に進級して、卒業後の進路も具体的になってくる。怖いけれど、いつまでも変わらないわけにはいかない時期が来ます。
お互いになんとなく想い合っていることが分かる、温かなまどろみのような関係を変えたくない小村くんは、ある時「もう少しだけこのまま……」と願うのですが、止まらない時間の流れを表すかのように、彼の背はどんどん伸びていきます。
小村くんと三重さんが出会った当初は同じぐらいの背の高さだったのに、いつの間にか目線に差ができている。そうした変化が、2人の関係も押し進めてゆきます。
大人と子どもの間をたゆたいながら、成長していこうとする彼と彼女。完結間近の物語。その行く末に幸あれ。
この記事どう思う?
関連リンク
連載
テーマは「漫画を通して社会を知る」。 国内外の情勢、突発的なバズ、アニメ化・ドラマ化、周年記念……。 年間で数百タイトルの漫画を読む筆者が、時事とリンクする作品を新作・旧作問わず取り上げ、"いま読むべき漫画"や"いま改めて読むと面白い漫画"を紹介します。
0件のコメント