AIアニメダンスが流れ込んできた──「Gambare Gambare Senpai」のダンス動画より考察

年初から急に、AIで生み出されたアニメキャラクターによる「Gambare Gambare Senpai」ダンスチャレンジ(踊ってみた)のショート動画群が筆者のYouTubeフィードを占領してきた。

はじめは『薬屋のひとりごと』の猫猫だった。そして『鬼滅の刃』の竈門禰豆子、『五等分の花嫁』の中野三玖、『チェンソーマン』のマキマ、台詞元の『イジらないで、長瀞さん』の長瀞早瀬など……あらゆるアニメ/ゲームキャラクターによるダンスチャレンジが次から次へとフォードに流れてくる。

AIアートに賛否両論が巻き起こる現在。それらはどのような経路で私たちに辿り着き、楽しまれているのだろうか?

「Gambare Gambare Senpai」の元ネタ

まず楽曲「Gambare Gambare Senpai」はYouTuber・Bemaxさんのディープハウス曲である。

アニメ『イジらないで、長瀞さん』に登場するキャラクター・長瀞早瀬の挑発的な台詞がサンプリングされており、ドロップでリフレインする。
Nagatoro - Gambare Gambare Senpai (Bemax Remix) [AMV]
本楽曲は2021年に配信シングルとしてリリースされたが、サンプルクリア(サンプリング元からの承認)がされたのかは不確かだ。

とにかく楽曲は2023年下半期頃より、TikTokを中心にダンスチャレンジが流行。そして本楽曲の主なAIアニメカバーダンスは以下の動画を参考にしている様子がうかがえる。

@yyyoungggggg 인기 많은 센빠이는 하나더 💘 #onepickent #gambaregambaresenpai #leeadol #cheerleader #kpop#korean ♬ Gambare Gambare Senpai - Bemax

一方、「Gambare Gambare Senpai」のAIアニメダンスカバー映像はすべてBeautyInBitsというチャンネルより発信されている(外部リンク)。

AIによるアニメダンスカバーの流行

画像生成AIがインターネット上で普及するようになってから、AIイラストがXやInstagramなどのSNSやpixivなどのイラスト投稿サイトに大量に投稿されるようになった。

それらと時を近くして、YouTubeやTikTokのユーザー投稿コンテンツもその影響を受けている。
[AI edit] Excused
上のショート動画は筆者がYouTubeではじめて視聴したAIアニメダンスカバーだ。

イメージの一貫性が崩れているとはいえ、きちんとアニメ風に描かれたキャラクターが、人間のダンスらしき動きをシームレスに見せてくれているのは確かだ。

上の動画の投稿主であるQuadra Anime Mix外部リンク)もBeautyInBitsも動画制作において画像生成AIのStable Diffusionを使用したことを明かす。
Mastering Parody and Meme AI Animation: Step by Step
画像生成AIと聞くと、誰でも簡単に一瞬でつくれると思ってしまうが、想像よりサクッとつくられるものではなさそうだ。

BeautyInBitsはAIアニメーションの制作チュートリアルを1時間ほどの動画におさめている。

元の動画よりアクションを真似する部分を切り抜いて、キーとなるフレームをi2i(image to image)技術でコピーして画像を生成する。そしてそれらの画像を時系列で並べて動かすようにする制作過程が紹介されている。

このチュートリアルでは、私が使っている詳細な動画制作プロセスについて詳しく学びます。主に2D、SDキャラクターのパロディアニメーション向けの高度な映像を扱います。現実的なアニメーションや通常のアニメ映像を制作することは簡単に見えるかもしれませんが、このSDキャラクターアニメーションは優れた土台になります。このチュートリアルで共有されるテクニックを理解することで、私のTikTokとYouTubeチャンネルで見られる多くの動画を再現する準備が整います。 Mastering Parody and Meme AI Animation: Step by Step」動画の説明欄中

AI動画に託される願望と、懸念点

架空のキャラクターをより現実に近い解像度と密度を高めて具現させたい──AIは、二次創作の願望を実現させる術の一つとして既に利用されている。

もちろん、二次創作作品といえども、多くのAIアートにかけられる懸念からは逃れられない。著作権周辺の問題に行くまでもなく、肖像権・人格権の問題とも関わる。

YouTubeで「AI dance cover」と検索してみてすぐわかるように、これは実存するアイドルやタレントにおいても適用される技術であるからだ。「ディープフェイク」の経路がもう一つ増えたことでもある。

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