イラストレーターなのに初仕事はずとまよアニメMV
──廃墟のイラストを投稿した同年、ずっと真夜中でいいのに。の楽曲「ヒューマノイド」のMV制作を担当されています。sakiyama 「ヒューマノイド」のMVは、はじめてのお仕事でした。廃墟のイラストがきっかけで、声をかけていただいたみたいです。
当時はまだ会社勤めで、本業も忙しくなるタイミングだったこともあって、正直かなり大変でした。睡眠時間を削って作業をしていたので、あんまり大きい声で言えないんですが、会社のトイレに10分くらいこもって仮眠をとったり、会議中に意識が飛ばないようにずっとシャーペンで太ももを刺してたり、毎日更衣室でエナジードリンクを一気飲みしたり、ギリギリの生活で(笑)。
──初仕事がアニメMVということ自体、なかなかのチャレンジだと思います!
sakiyama それまでイラストしか描いてこなかったので、当時はアニメーション制作がどれくらい大変なのかもわかっていませんでした。それでもやりたいと思えるほど、魅力的なお仕事だったんです。
とはいえ、「ヒューマノイド」以前のずとまよのMVは、Wabokuさんが制作された素晴らしいアニメーション作品だったので、プレッシャーはめちゃくちゃありました。でも、楽しみながらも気合いで描き上げました。
sakiyama そうですね。方法論やAfter Effectsの使い方もよくわからなかったので、とりあえず本を買い漁って勉強して。
最初だったのもあって、まずは描きたい絵を描いて、その中で動かせるものを動かしながら制作していきました。
最近は、「#indie_anime(インディーアニメ)」の盛り上がりもあって、個人でアニメやアニメMVを制作する人がすごく増えてますよね。個人制作はクリエイターの味や作家性がダイレクトに出るので、とても濃度の高い作品ばかりなので観ていて楽しいです。 sakiyama 一方で、私の作品はアニメーションと呼ぶのはおこがましいというか……私個人的には、あくまでもイラストレーターで、アニメーションも少しやらせていただいている感覚ですね。
──翌年の2019年にイラストレーターとして独立されていますが、苦労しながらも完成させた「ヒューマノイド」で得た手応えが大きかったのでしょうか?
sakiyama 正直、手応えがあったから、イラストレーターとしてやっていける自信ができたからというよりも、単純に時間がなさすぎて、絵を完全に諦めるか、仕事を辞めて絵一本にするかの2択で……。
でも、直感的に「イラストをやるタイミングは今なんだろうな」と思ったんです。それこそ、やってみて無理だったら、また頑張って再就職すればいいくらいの気持ちで。
「アニメを一人でつくっている人は変態」
──それ以降、多くのアニメMVを手がけていますが、制作時にはクライアントとの間でどのようなやり取りがあるのでしょうか?sakiyama ケースバイケースですけど、基本的に最初は一枚絵で全体の雰囲気がわかるラフを、キービジュアルとして提出しています。
あわせて、文字情報でも「こういう世界観で、こういう人が、こういうことをするストーリー」と伝えた上で、ベースの世界観がOKだったら、そこからもう少し細かいプロットとキャラクターデザインをつくっていきます。
それを確認してもらったら、本格的につくり始めるという。本来のアニメーションと比べれば、だいぶ簡略化されているとは思いますけど。
──とはいえ、改めて聞いても一人でやる作業量としては膨大ですね。
sakiyama 良い意味で、アニメーションを一人でつくっている人は変態というか、執念や情熱が相当ないと描けないと思います。
私に執念があるとしたら、ただただ「クライアントさんやMVを受け取る人たちに喜んでもらおう」という気持ちかもしれません。
──今まで制作したアニメMVの中で、一番納得のいったものを挙げるとすれば?
sakiyama 個人的に一番しっくりきたのは、ずとまよの「眩しいDNAだけ」のMVです。
着想からベースのストーリーをつくるまでに、一番時間がかかることなく完成したんですよね。アニメーションの技術的には拙いですけど、雰囲気やストーリーがすごく気に入っています。
sakiyama お仕事をする上では、何をきっかけに自分の絵を知ってくれて、そこから自分のどんな絵が求められているかを考えることを、特に大事にしています。
ずとまよから知ってくれた方は少し退廃的な雰囲気だったり、可愛い女の子だったり、サイバーパンク風のイラストを求められていることが多い印象です。逆に、一枚絵から興味を持ってくれた方は、もっと暗くて退廃的な世界に男の人がいるイラストを求めているのかなって。
お仕事と同人活動、どちらにも共通するのは、私が描く意味を持たせること。絵を描ける人はたくさんいるし、ジャンルもたくさんあるし、みんなすごく上手い。
そんな中で、私に求められているものや“sakiyamaらしさ”は、常に考えていきたいです。 sakiyamaさんが使った「Adobe Express」を試してみる
この記事どう思う?
関連リンク
0件のコメント