連載 | #98 渋谷万歳

厳戒態勢の渋谷ハロウィン 若者たちが語る「コロナ禍ももう終わったし」

バイカーたちもはりきり、エンジンをうならせる

去年は見られなかった光景としては、バイカーたちの存在があった。

東急ハンズ前の通りでは、独自にカスタムされたマシンを披露している人たちもいて、そこで仮装と一緒に写真を撮っている人たちも。 交差点で待っている人から手を振られると、一層エンジンをうならせてコールしていた。

ほかにも、周辺の通りをウーハーを搭載した車で巡回し、人が溜まっているところでは爆音のEDMを提供して去っていくと人も。

取材後一緒に帰ったKAI-YOUスタッフは「マジでちゃんと治安悪いじゃん」と言っていたが、それは本来の意味で渋谷らしい光景だったように思う。

全部間違っていても、良い日もあるんじゃないか

取材をしていた中で一番印象に残ったのは、『SPY×FAMILY』の人気キャラクター・アーニャのコスプレをした5人の男性だった。

何故アーニャのコスプレをしているのか聞いてみると「僕らはいつもこの辺でこうして遊んでるんで、なんか今日はみんな食いついてきますね」とタバコを吹かして素知らぬ様子。

何か面白いことがあったかと聞いてみると「一緒に写真撮ったらお●ぱい触らせてくれるって言われましたわ!」とニッコリしていた。

渋谷区は路上喫煙禁止だし、そもそもアーニャは女の子だし、彼らに正しい部分は1つも無かった。ましてや、見知らぬ異性と出会いたい、女の子と写真を撮りたいとせっせとコスプレの衣装を用意する姿は人によっては不純に見えるかもしれない。

それでも、「よかったですね!」と笑いあってる瞬間は「たまにはこういう日もないとやってられないよな」と思ってしまったのが正直なところだ。あまりに多くの我慢や理不尽を、この数年に僕らは抱えてしまっている。

取材に協力してくれた人の中には、ご飯を食べようと声をかけてきた男性と歩いていたら「手を引かれて、危うくホテルに連れていかれそうになった」と語る女の子もいた。

もちろん、そういった卑劣な行為は許されてはいけないし、自分が街のゴミを片付ける立場になったらやってられないと思う。

しかし、だからこそ、その瞬間を楽しんでいる人がどういう姿をしていて、そこにはどのような意味があるのかを知って、考える必要がある。実際に街へ出て、体験し、また来年も届けていきたいと感じた。

改めて、梨泰院の事故で亡くられた方達へ、心からの敬意と哀悼の意を表します。





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渋谷万歳

日本が世界に誇るべき最高のポップシティ、渋谷。 あらゆるカルチャーと人種が集まるこの街で、毎日のように繰り広げられるパーティー、愛のはじまり、夢の終わり、高揚感と喧噪、その捉えがたきポップの断片をかき集める人気連続企画。 2010年代は渋谷から発信されていく、と思う。

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