脳裏をよぎったのは、ムキムキのアンパンマン
もう1作紹介したいのが、Seakerzxさんの『Horizon Project』(外部リンク)。機械に統治される世界と、その中で進化した人類「Deviants」が生きる世界を描くSFチックな作品です。たまたま開いたのがトップページに表示されていた第7話だったのですが、この作品は1ページ目から度肝を抜いてくれました。
ページを開いた瞬間登場したのは、作品の雰囲気をぶち壊すかのごとく真ん中に鎮座するビカビカの蛍光色で縁取られた作者のSNSへの案内文言と、一切脈絡なく居座っている、こちらも蛍光色で縁取られた主人公と思われるキャラクター……。 それはまさに「ファンサブ」でした。
※日本のアニメを見る手段が海賊版や違法アップロードしかなかった時代に海外で発達した翻訳字幕文化。次第に字幕職人たちの個性が発揮されていき、中にはアニメの雰囲気を無視するような字幕演出や、違法アップロード者自身のSNSなどへの導線が貼られているものも登場した
それらを見ていてふと脳裏をよぎったのは、ムキムキになったアンパンマンのやりすぎなほどに派手なFLASHアニメや「うごメモ」でした。 どこかの誰かが自分の面白いと思ったものを詰め込んだ、めちゃくちゃな作品でゲラゲラと笑っていた、かつてのインターネット。あの時に感じていた「ぶっ飛んでいて面白いものが無限に眠っている場所」としてのインターネットが、確かにここにもあるように感じられました。
防御力は低くても唯一無二の攻撃力がある
『魔人探偵脳噛ネウロ』や『暗殺教室』で知られる松井優征さんは、「ジャンプの漫画学校」の講義にて、作家の重要な考え方の1つとして「防御力」を挙げていました(外部リンク)。松井優征さんの言う「防御力」とは、面白いストーリーや引き込まれる演出といった読者に刺すセンスを「攻撃力」としたとき、その対極に来るいかに読者へ労力をかけずに漫画を読ませるのかというテクニックのこと。
その基準で言うなら、「MPC」に掲載されている作品には防御をかなぐり捨てたような作品も多いです。しかし、彼らにはその分研ぎ澄まされた唯一無二の攻撃力がある。
紙ではなく、画面で見ることに意味がある、繊細にして大胆な演出を持った『Ramia-Yana』(外部リンク)、ダイナミックなアクションと、そしておそらく村田雄介さんに影響を受けたんだろうなということがヒシヒシと伝わってくる『WATCHA LAND』(外部リンク)。
少し掘ってみただけでも、個性豊かな作品があふれてくる「MPC」。ここでしのぎを削った世界中の漫画家たちがどんな作品を生み出していくのか、とても楽しみです。
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