2019年以来、3年ぶりとなった夏コミは、新型コロナウイルスの影響下で初開催となった2021年12月の「コミックマーケット99」から、一日あたりの来場者数の上限を5万5000人から8万〜9万人に引き上げ。
加えて、ワクチン・検査パッケージ(ワクチン接種証明または検査結果の確認)は社会状況の変化を踏まえて撤廃。一方で、前回から導入された有料チケット制などは継続した。
検温・アルコール消毒といった感染対策は徹底しつつ、会場内の行動制限が緩和。より自由度が高まった一方で、コロナ第7波の真っ只中、台風8号も接近するという状況下で開催された100回目のコミケ。
これまで通りが通用しなくなったコロナ禍で、同人誌即売会の最適解を模索してきたひとりであるコミックマーケット準備会の共同代表・市川孝一さんに、100回目のコミケをどう受け止めているのか、そして2025年に迎えるコミケ50周年に向けたプランを聞いた。
取材・文:小林優介 編集:恩田雄多
※取材は2022年8月14日の「コミックマーケット100」開催当日に実施。
目次
コミケ100回という節目、とびきりの「ハレの日」
──3年ぶりの夏コミです。初日を終えた現時点での率直な印象を教えてください。市川孝一 初日は天候がよくなかったので、参加者のみなさん、そしてスタッフも大変だったと思います。それでもコミケットに来たいと思ってくれている人たちがたくさんいてくれたのはすごく嬉しかったですね。
悪天候の中、初日には8万5000人の方が来てくださいました。コロナ禍であってもこれだけたくさんの仲間が集まってくれるのは、我々にとって励みになりますし、改めて、これからもしっかりと運営を続けていかなきゃいけないんだなと感じてます。
──台風が過ぎ去った2日目は日差しも戻り、100回目という節目にふさわしい天気ですね。
市川孝一 そうですね。我々はよくコミケットについて「ハレの日」という言葉を使いますが、イベント当日は天気だけじゃなく、心も晴れてほしいです。会場で本を手に取ったり、知り合いと再会したりすることで、日常で溜め込んだストレスから解放されてほしいんです。
会場を見渡すと、訪れた人たちは元気にサークルや企業ブースを巡っていますし、コスプレイヤーのみなさんもはつらつとしている。私自身も、開幕が宣言されて以降、気分が晴れやかになっていくのを実感しています。今回は100回という節目でもあるので、特にその傾向は強いかもしれません。 ──確かにスタッフのみなさんの楽しそうな表情も印象的でした。
市川孝一 3年ぶりの夏コミである点も大きいと思います。特に運営側は、「天候はどうなるのか」「冷却剤は足りるのか」など、いろいろな事態を想定して準備を進めます。すると必然的に心配事が増えて、当日まではどうしても臆病にならざるを得ない。
でも、それだけ入念に準備を重ねてきたからこそ、コミケット当日は「とにかく楽しもう!」と切り替えることができるんだと思います。
そしてそれはサークルさんも同じはずです。必死に原稿を書(描)いて、当日は自分のスペースに完成した同人誌が置いてある。本を会場で手に取ってもらう、読んでもらうことで、気分が晴れていく──そういったコミュニケーションの集合体がコミケットなんじゃないかなと、改めて感じました。
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連載
2022年8月13日(土)・14日(日)の2日間にわたって東京ビッグサイトの東・西・南展示棟(サークル・企業ブース)で開催される「コミックマーケット100」(C100)を特集。 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で中止・延期を経て、2021年12月に2年ぶりに現地開催された世界最大級の同人誌即売会が迎える、記念すべき100回目。 冊子版カタログの復活、ワクチン・検査パッケージの非導入、東西エリアの移動制限解除、そして来場者数上限を8〜9万人に引き上げ──。 1975年の第1回開催以来、コロナ禍という特殊な状況でも歩みを進めるコミケ。サークル、コスプレ、一般参加者、さらには準備会と全参加者を追う。
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