連載 | #34 コミックマーケット100特集

「コロナ前を知らない人も出てくる」コミケ代表が模索する、10年後の即売会の在り方

10年後を見据えた新たなスタンダードの模索

──お話をうかがっていると、状況に応じた対策を講じながら、コロナ禍以前の形に近づけられるかどうかを模索している印象を受けます。

市川孝一 コロナ禍以前に戻すことを視野に入れつつも、現状において何が最適なのか、どこまでできるのか、そのときのベターを模索しています。その上で、次の開催に向けて、以前の状態も含めて何がベストなのかを踏まえて計画を立てていきます。

コロナ禍はいつ終わるのかわからない。当然、いずれはコロナ禍前を知らない世代がコミケットに参加することも出てくるでしょう。

そういう人たちに、以前はこうだったと押し付けることはできない。だからこそ、今後の開催を通じて、向こう10年を見据えた新たなスタンダードも探っていかなければならないと思っています。

コミケットは1975年にスタートしているわけで、過去の話を持ち出しはじめたらキリがありません。もちろん、尊重すべき歴史や慣習はあります。それらは引き継ぎつつも、新たなスタッフや新しい考え方も柔軟に受け入れていく。

実際、今では当たり前になっている腕章やIDカード、スタッフ用の帽子なども、最初からあったわけではなく、どこかのタイミングで新たなアイデアとして導入されたものです。

古き良きものも、新しいものも、適材適所で柔軟に取り入れて考えていくことが、今後コミケットを継続していくために必要なことだ思います。

冬コミ、そして2025年に迎えるコミケ50周年に向けて

──次回の冬コミ「コミックマーケット101」について、現時点で決まっていることはありますか?

市川孝一 日程は前年末の「コミックマーケット99」と同じく、12月30日(金)・31日(土)に、東京ビッグサイトの全ホールを使用して開催予定です。今回のイベント終了後に、内外から上がってくる反省点を活かしつつ、8月16日には早速冬コミに向けた会議を行っていきます。

コロナの状況に応じて、政府・東京都・会場が定める指針がどう変わっていくのか注視しつつ、会場や様々な人と話し合いを通じて、維持するのか、緩めるのか、決めていくことになるでしょう。

少し先の話をすると、3年後の2025年にコミケットは50周年を迎えます。半世紀にもなると、生まれる前からコミケットがあったという人も増えてきますよね。お父さんやお母さんの時代からコミケットに参加している人も出てくるでしょう。

同人誌をはじめ、サークルのみなさんが発表してくれる作品は、そのときのコミケットにおける最も先鋭的な表現だと感じています。だからこそ、新たな世代が参加するようになったときに、コミケットが過去のもの、古臭い場所のように思われてほしくない。繰り返しにはなりますが、そのために運営面も含めて、時代ごとに開催の最適解を目指していきたいです。
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コロナ禍、100回目のコミケを振り返る

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コミックマーケット100特集

2022年8月13日(土)・14日(日)の2日間にわたって東京ビッグサイトの東・西・南展示棟(サークル・企業ブース)で開催される「コミックマーケット100」(C100)を特集。 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で中止・延期を経て、2021年12月に2年ぶりに現地開催された世界最大級の同人誌即売会が迎える、記念すべき100回目。 冊子版カタログの復活、ワクチン・検査パッケージの非導入、東西エリアの移動制限解除、そして来場者数上限を8〜9万人に引き上げ──。 1975年の第1回開催以来、コロナ禍という特殊な状況でも歩みを進めるコミケ。サークル、コスプレ、一般参加者、さらには準備会と全参加者を追う。

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