連載 | #6 藤本タツキ『チェンソーマン』超特集

『チェンソーマン』第2部5話レビュー パワーがあれば、トロッコ問題もぶっ壊せる 

『チェンソーマン』第2部/画像は『チェンソーマン』公式Twitterから

藤本タツキさんが『少年ジャンプ+』で連載中の漫画『チェンソーマン』第2部。

ついにチェンソーマンが登場し、その力を見せつけた第2部5話(102話)「セーブザキャット」。動きだした物語、来週が休載だなんて、待ちきれない!

【前の記事】『チェンソーマン』第2部4話レビュー デンジとアサ、対比される2人の主人公

目次

ついに現れたチェンソーマン、ネコを助ける

前回から引き続き、コウモリ(?)の悪魔に追われる三鷹アサとユウコが描かれる場面から始まった第5話。

ユウコが足を負傷したのに対し、ヨル(=戦争の悪魔)は三鷹アサに彼女を殺し、武器とすることで自分だけ助かる道を選ぶことを迫る。それでもユウコを助けることを選んだ三鷹アサだが、あっけなく追いつかれ、飲み込まれてしまう──。

と思ったところに、あのエンジン音とともに突っ込んできたチェンソーマン。見開きも使いまくったゴキブリの悪魔との大迫力の戦闘シーンが展開され、チェンソーマンがネコを助け出したシーンで今回は幕を閉じた。

トロッコ問題への第3の選択肢「ネコもいたよ」

第2部で、ついに初登場したチェンソーマン。これまで数話にわたって一般人の生活が描かれ、力を溜めに溜めた状態で描かれた「血しぶき! 内臓! グロテスク!」という感じのハイスピードなバトルは迫力満点で、興奮した人も多いのではないだろうか。

とはいえ、彼がチェンソーの悪魔であるポチタなのか、デンジなのかはまだわからない。今回のチェンソーマンの行動をどう受け止めるのかをちゃんと決めるのは、彼がどちらなのかが判明してからではないと難しいだろう。

その上で、やはり印象的だったのは、ゴキブリの悪魔がチェンソーマンに投げかけた「若者1人を救うか、老人5人を救うか」という問いに対するチェンソーマンの行動だ。

SNSでは、どちらも救わずにネコを救ったという今回のチェンソーマンの行動は、いわゆる「トロッコ問題」へのアンサーだという意見が多く見られた。個人的には“アンサー”ではなく“ちゃぶ台返し”なのではないかと思う。

理不尽な問いにはさらに理不尽な答えを 

ゴキブリの悪魔を殺した後、チェンソーマンは「ネコもいたよ」とネコを抱え上げながら言った。

しかし、それまでのコマでネコの存在が描かれていなかった以上、読者の視点から見ればそのネコの存在は急に生えてきたにすぎない。読者からすると、その選択肢はなかったのと同じである。

ならば、チェンソーマンは、「1人の若者か5人の老人か?」という問いには答えてはいないのではないだろうか。出題者ごと問題そのものをぶち壊し、どちらも見捨てた上で、勝手にあとから第3の選択肢を生やしたのだ。

他人が強いた理不尽な問いに対し、ちゃぶ台返しを行い、勝手に答えを決められるほどにチェンソーマンは強い

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藤本タツキ『チェンソーマン』超特集

2019年1月より『週刊少年ジャンプ』で第1部が連載、2022年7月より『少年ジャンプ+』で第2部の連載がスタートした漫画『チェンソーマン』。 ダーティーかつスタイリッシュな描写とアクの強いキャラクターを武器に次々とヒット作を生み出していく、さんの代表作です。 2022年10月からはMAPPA制作のTVアニメが放送が決定。「藤本タツキ『チェンソーマン』超特集」では、『チェンソーマン』に魅せられたKAI-YOUの面々が、その魅力を紐解いていきます。

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