三鷹アサは「都会のネズミ」になるのか?
また、レゼ編では緩やかな苦しさと安寧をとるか、リスクも大きいが夢を見られる選択をするかという「田舎のネズミと都会のネズミ」の寓話も描かれた。「死んでも…(学校に)入りたくない…!」と、学校という場所にある緩やかな苦しさを拒否しながらも、現状はまだ戦争の悪魔に振り回されているだけの三鷹アサ。
戦争の悪魔に絶対に体を返してほしいという彼女だが、現段階では、様々な環境に対して否定的な態度をとるばかりで、体を取り戻してどう生きたいのかはあまり描かれていない。
彼女が肉体を取り戻した後の自分の人生に何を見出していくのか、それとも見出さないまま終わっていくのかにも注目したい。
ルックスの良さでトレンド入りを果たす吉田ヒロフミ
個人的に第2話「2羽」を読んでいて改めて感じたのは、作者・藤本タツキさんの描く顔・表情の秀逸さだ。例えば、戦争の悪魔が吉田ヒロフミに唐突に告白したシーン。三鷹アサの反応が描かれたコマは、驚いたことを伝えるために、顔のバランスを崩し、デフォルメした表情で描かれてもいいような場面だ。しかし、あくまで強調とリアルな表情でその驚き具合を表現しきっている。
そこに続く、三鷹アサが戦争の悪魔に「なんで告白したの~!?」と詰め寄り、戦争の悪魔が自身の力について語りだす一連のシーンでは、ほぼ同じアングルでの顔のアップが続き、微細な表情の変化と、演出だけで緩急をつけている。そこから生まれるテンポは、非常に読んでいて気持ちのいいものになっている。
また、ラストページで、イケメン・吉田ヒロフミと、謎の女子学生と同じ班に放り込まれてしまった三鷹アサの表情も見事としか言いようがない。多くを語らずとも、読者に様々な情報をありありと伝えてくる表情の力は凄まじい。
そして、その表情の力を使って描かれるイケメン・吉田ヒロフミもまた凄まじい。作中でほとんど出番がないにもかかわらず、その容姿の力によって、再登場しただけで長時間にわたってTwitterのトレンドに入るキャラクターがほかにいるだろうか? 三鷹アサ、戦争の悪魔、吉田ヒロフミ、そしてまだ姿を見せていない主人公・デンジ。彼らがどうなっていくのか、楽しみだ。
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連載
2019年1月より『週刊少年ジャンプ』で第1部が連載、2022年7月より『少年ジャンプ+』で第2部の連載がスタートした漫画『チェンソーマン』。 ダーティーかつスタイリッシュな描写とアクの強いキャラクターを武器に次々とヒット作を生み出していく、さんの代表作です。 2022年10月からはMAPPA制作のTVアニメが放送が決定。「藤本タツキ『チェンソーマン』超特集」では、『チェンソーマン』に魅せられたKAI-YOUの面々が、その魅力を紐解いていきます。
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