そんな映像を手掛けるクリエイターの中で異彩を放つのが、22歳という若き俊英・Nate(ねいと)さんだ。
そんな彼は6月4日(土)、新たにクリエイティブチーム「nim」を設立。チームとして、クリエイターとして新たな一歩を踏み出す。
Nateさんはどのような道を歩んで、今ここに立っているのか。映像制作のルーツはどこにあるのか。前編ではCGを用いて「視覚からの快感」を生み出す、映像に込めたこだわりに迫る。
目次
『うごメモ』から始まったNateの映像制作
──Nateさんが映像制作に興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか?Nate PCを使った映像制作でいうと、多分僕はニコニコ動画の文化から入った人間なんですよ。
ただ、それはあくまでPCの話で、もっとルーツをたどると、ニンテンドーDSiの『うごくメモ帳』(以下、うごメモ)というパラパラ漫画をデジタルでつくるゲームソフトがあったんです。
僕が中学生のとき、『うごメモ』でつくられた棒人間バトルのアニメとかが流行ってました。それにどハマリしたのがきっかけで、ボーカロイド楽曲の歌詞を動かす──映像制作用語で言うとキネティックタイポグラフィのようなアニメーションを、本当に何曲何曲もつくっていました。多分それが制作のルーツになってるのかなと思います。
映像制作用ソフトと違って『うごメモ』はパラパラ漫画をつくるゲームなので、制作するのはめちゃくちゃ面倒だったんですよ。2ピクセル右に動かして、遅くしたいから次は1ピクセル……みたいに、微調整しながら動きを1枚1枚描く地味な作業で。
──動画制作や動画投稿は最初『うごメモ』からスタートしたということですね?壇上トークの時に話した「うごメモ」のやつです。中学生の時はこんなのばっかりつくってました。("bird"というのは当時のハンドルネーム)#FRENZ_JP pic.twitter.com/DC7uuGuA9J
— Nate / ねいと (@nate_nate_co) September 24, 2016
Nate はい、実は意外と『うごメモ』から映像制作を始めた人が僕の世代には多いんです。僕は今22歳なんですけど、同じぐらいの世代の映像作家には過去に『うごメモ』をやっていたっていう人がちらほらいますね。
『うごメモ』では、ちゃんと作品を「うごメモシアター」という掲示板サイトに投稿できたんですよね。
YouTubeとかニコニコ動画とかみたいに、作品を投稿してコメントをもらったり、スターをもらう。そういう観てくれる人とのやりとりにもめちゃくちゃハマって、それでPCでも同じようなことをやろうとした流れで映像制作を始めたんです。
魅せられたCGの世界
──自身のクリエイティブにおいて中心的な役割を担っている、CGの魅力はどこにあると考えていますか?Nate 自分の頭の中で想像していることを形にできることですかね。簡単に言うと、そこが決定的に(実在するものを)カメラで撮る実写映像と違うところです。
僕のつくる映像では、現実にはありえないものが登場したり、あり得ないことが起きたりする。自分の頭の中で「こんなことさせたいな」「こんなことやりたいな」と思ったことを自由自在にできるのがCGの魅力だと思ってます。
Nate 部分的に取り入れたり、実写素材の上にCGのグラフィックを乗せたりすることはたまにあるんです。
ただ、僕個人としては「リアルにないことを表現したい」というモチベーションがあるので、CGを採用することが多いですね。僕が頭で想像したことは、僕の頭の中だけにしかないわけじゃないですか。
他の人には伝えられないのがもどかしいので、「俺こんなにすごいこと頭の中では考えてるから」とみんなに共有したいというか。シェアハピです(笑)。
──映像制作において、影響を受けた人はいらっしゃいますか?
Nate 初めの頃は、日本のmurAta Yuziさんに影響を受けていました。
もちろん、いろいろな映像作家の作品をVimeoやBehanceで観たんですけど、特にこの人の映像が大好きで、僕の今の作風の原型になってます。ボカロP・かめりあさんの「ココロの質量」のMVは映像1フレームずつ研究しましたね。
感覚的な動きや、音とのシンクロみたいなところがめちゃくちゃ気持ちいい。VJもされている方なので、音楽と視覚的な情報が密接に関わる分野が得意なんだと思います。直接お会いしたこともあって、そのときは「本当に本当に大好きです、めちゃくちゃ影響されてます」って告白しました(笑)。
──海外のクリエイターではどうですか?
海外にも影響を受けた人はたくさんいます。アメリカのAndrew Kramer(アンドリュー・クレイマー)さん、中国のSOMEIさんやzaoeyoさんはリスペクトして参考にもしています。
特に、Andrew Kramerさんは日本で開催されたイベントで、僕を「若き日本人アーティスト」みたいに紹介していただいたこともあり、個人的にめっちゃ良くしていただいています。
Andrew Kramerさんはソフトの使い方などのチュートリアル動画をYouTubeに出していて、そういう他のクリエイター育成の姿勢も含めて憧れている存在ですね。
──Nateさんご自身が「映像について語らせてくれ」というタイトルで配信されているのもそういった意図からなんでしょうか?昨日のイベントにてAndrew( @videocopilot )に日本のアーティストとして紹介して頂きました。とても幸せです。Thank you so much, Andrew. pic.twitter.com/580HyIgfeu
— Nate / ねいと (@nate_nate_co) December 20, 2019
Nate そうですね。ただ、Andrew Kramerさんがやってることって映像をつくっている人向けのコンテンツなんですよね。
僕はちょっと違って、どっちかというと映像を知らない人に向けて配信しています。いずれ、もうちょっと技術的なことを話すチュートリアル動画のようなものを撮る気がないわけではないんですけど、現段階ではまだかなって思いますね。
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Nate
ディレクター / CGデザイナー / モーションデザイナー
クリエイティブチーム「nim」代表。
2D、3DCGによるモーショングラフィックスを軸に、ジャンルやスタイルを問わないアプローチが可能。
動きから生まれる気持ち良さ、視覚からの快感を大切に、映像でしか表現できないものをデザインする。
最近は映像にストーリー性を持たせることで、人の心にハマるコンテンツを模索している。
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