盗作疑惑と訴訟問題
2つ目の理由は、「Creep」にまつわる盗作疑惑と訴訟問題だ。先んじて盗作疑惑の話だが、同じくロックの殿堂入りを果たしたThe Hollies(ザ・ホリーズ)の楽曲「The Air that I Breathe」と「Creep」が酷似しているとの指摘が、「Creep」が世間に認知され始めたあたりから挙がり始めた。
その後レディオヘッドとザ・ホリーズは和解をしたものの、こうした背景もあって「Creep」は演奏するだけであの盗作疑惑事件を観客の脳裏をよぎらせてしまう1曲になってしまったのだ。
そしてもうひとつが訴訟問題。こちらは逆にレディオヘッド側が訴訟を起こしたとされるもの。
内容は、アメリカのシンガーソングライター・Lana Del Rei(ラナ・デル・レイ)がリリースしたアルバム『Lust For Life』の収録曲「Get Free」が、レディオヘッドの「Creep」と似ているとして、著作権料のなんと100%を要求したとされる。 ただし、この訴訟問題には、真相については藪の中であることも強調しておきたい。
というのも、ラナ・デル・レイ側は訴訟について言及したものの、レディオヘッド側はラナ・デル・レイ側と話し合いを持っているのは事実ながら訴訟および取り分の要求については否定。
これらの訴訟問題を巡っては双方の主張が食い違っており真相は不明ながら、「Creep」を巡ってそうした疑惑などが取り沙汰されてきたこと自体は事実である。
「Creep」の“歌ってみた”問題
楽曲が大きな反響を得てしまったということは当然、多くの人々が口ずさむということだ。今で言うところの「歌ってみた」的な反応が方々で起こるのは当然だった。
基本的に「歌ってみた」に関しては国内外問わず、どちらかと言えばアーティスト側は好意的に受け止める割合が高いと言える。が、こと「Creep」に対しては少々度が過ぎていたところもある。
実際、一般人が弾き語りアレンジで投稿した「Creep」動画は今でもYouTubeなどで大量に上がっている。問題だったのは、大手事務所に所属している名の知れたアーティストたちも、彼らの楽曲に飛び付いたことだった。
しかもそれらのアーティストたちは全員、唯一無二の音楽性を武器に活躍する者ばかり。特にPearl Jam(パール・ジャム)やMoby(モービー)らのカバーはレディオヘッドと比較するとあまりにもオリジナリティを前面に押し出した作風になってしまったことにより、賛否両論も相次いだ。
ゆえに、言葉を選ばずに記すならば「とりあえずバズるために『Creep』歌っとくか!」と捉えられかねない安易な動きもいくつか見られた。
それらの楽曲が思惑通りに広く伝わったりもしたことで、もはや「Creep」を本家がライブで解禁してしまえば、それ以上の弊害が新たにつくり出される可能性も出てきてしまったのだった。
それが、レディオヘッドが「Creep」を封印してきた要因の一つにもなっていると考えられる。
大手事務所所属アーティストのカバー問題
様々なしがらみによってすっかり「Creep」を封印したレディオヘッドだが、前述の通り、2003年の『SUMMER SONIC』で何年かぶりに同曲をライブで解禁した。今でもこの伝説的な一夜は海外で有名な出来事として語られている。なお現在のレディオヘッドはかつての封印時代からうって変わって、「Creep」をライブで披露することはあまり珍しくもなくなってきている。
だからこそ今鳴らされる「Creep」を、我々はしっかりとその背景を知った上で聴かなければならない。
なぜならそこには間違いなく、多くのドラマと思いが詰まっているのだから。
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キタガワ
島根県在住音楽ライター。酒好きの夜行性。rockin‘on外部ライター他諸々。
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