アニメ化前の『チェンソーマン』が『呪術廻戦』や『鬼滅の刃』と肩を並べる理由
アニメ化の持つ影響力は確かに大きいが、それ自体はこれまでも同じような傾向が見られた。上記のランキングで注目すべきなのは、ランクイン作品の中で、アニメ化されていないにもかかわらず『呪術廻戦』や『鬼滅の刃』と同等かそれ以上の人気を見せている『チェンソーマン』だ。
集英社の作品がアニメ放送というブーストを経ずにこれだけの売り上げを見せている理由だと考えられるのが、多言語に対応し、日本国内での発売と同じタイミングで全世界に向けて「ジャンプ」作品が配信される集英社の公式サービス「MANGA Plus by SHUEISHA」の存在。
これまで、海外での出版はどうしても日本国内とタイミングがずれてしまったり、国によっては正規品が出版されなかったりといった事情があった。そのため、国外ではアニメが放送され人気が出てから漫画も売れるという順番となることも多くみられた。
しかし、「MANGA Plus」の登場によって、アニメ化されていない作品でも国内と同じように話題をつくり、知名度を獲得できるようになっている。
同サービスを手掛ける「少年ジャンプ+」副編集長の籾山悠太さんは、ジャーナリスト・数土直志さんからのインタビューに対し「MANGA Plus」を始めた理由を以下のように語っている。
アジア圏を中心に人気が拡大している、スマートフォンでの視聴を前提とした縦スクロール型の漫画「Webトゥーン」。先述のランキングでも6位、7位にランクインしているように、その人気はアジアだけにとどまらず世界に拡大している。MANGA Plusを作った理由の一つは、海外で海賊版のジャンプの漫画が読まれていることにありました。それを潰したいというより、そこにすごく需要があると。(中略)
ネット上では韓国のWEBTOONのユーザー数がすごく伸びている。アジアだけでなく北米や欧州などにも広がっている。これも意識はしています。 ITmedia ビジネスオンライン「“世界同時ヒット”は実現するのか 「MANGA Plus」が海外でウケている理由」より
国内でもそういった媒体の変遷に配慮し、ランキングで19位に入っている『怪獣8号』などは電子書籍での視聴に適応した視線誘導がなされている。
その巧みさは、『はじめの一歩』作者の森川ジョージさんが「人気漫画家が選ぶ!本当にすごい漫画はコレだ!」(テレビ朝日)にて今凄いと感じている漫画として挙げるほど。
◤ #すごい漫画2022
— まんが未知【テレビ朝日公式】 (@_mangamichi_) December 31, 2021
テレ朝系列で放送中📺 ◢ #はじめの一歩 作者#森川ジョージ 先生
にすごいと思う漫画を
聞きました📖❣️@WANPOWANWAN
森川先生が挙げたのは‥
━━━━━━#怪獣8号
━━━━━━@ringo_inuS
あなたが思う#すごい漫画2022 は何ですか❓ pic.twitter.com/CFBDLdCxPr
影響し合う世界と日本の漫画文化
国内の漫画関係者が世界の潮流を見ているように、世界のクリエイターもまた、人気の高い日本の漫画文化を楽しみ、分析し、吸収している。2021年には、「手塚賞」の100回記念特別部門として世界から作品が募集され、そのうち4作品が『週刊少年ジャンプ』の電子版限定で掲載された。どの作品も日本の漫画文脈を取り入れながらオリジナリティを持ったユニークな作品となっており、KAI-YOUでは掲載時に各作品の紹介もしているので是非チェックしてみてほしい(関連記事)。
また、KAI-YOU Premiumでは、フランスの漫画文化「バンド・デシネ」の作家としてキャリアをスタートし、幼少期から親しんだ日本の漫画のスタイルを取り入れた執筆を行っているトニー・ヴァレントさんへのインタビューも行っている(関連記事)。本日発売「週刊少年ジャンプ電子版 15号」に「第100回手塚賞 100回記念海外特別部門」入選・準入選作品が掲載中‼️
— 少年ジャンプ編集部 (@jump_henshubu) March 15, 2021
日本語に翻訳された受賞作品をご覧いただけます❗️
審査員の先生方も絶賛した4作品、是非ご覧ください‼️
少年ジャンプ電子版を要チェック‼️https://t.co/CQ0V4bsb9K pic.twitter.com/tPpQnWDiEy
その中で、トニーさんは日本の漫画文化が世界で研究されていくことの影響について以下のように語っている。
『AKIRA』の作者・大友克洋さんが「バンド・デシネ」からの影響を公言しているように、かねてから日本の漫画文化と世界に点在する漫画文化は、互いに影響しあってきた。このフォーマット(日本の漫画のスタイル)は普遍的なものになりつつあり、多くのアーティストがこのフォーマットを通して個人的な物語を語るようになっていくでしょう。その中でも、日本のクリエイターは間違いなく、まだまだ説得力のある物語をつくっていくと思いますよ。 KAI-YOU Premium「フランスで育まれた“日本式” バンド・デシネ出身作家が憧れ吸収した漫画表現」より
インフラの発展により世界の繋がりがより強固になる今、互いに与える影響は今後より大きくなっていくことが予想される。日本の漫画を十二分に楽しむためにも、世界の豊かな漫画文化を学んでいくことが必要となるだろう。
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連載
2019年1月より『週刊少年ジャンプ』で第1部が連載、2022年7月より『少年ジャンプ+』で第2部の連載がスタートした漫画『チェンソーマン』。 ダーティーかつスタイリッシュな描写とアクの強いキャラクターを武器に次々とヒット作を生み出していく、さんの代表作です。 2022年10月からはMAPPA制作のTVアニメが放送が決定。「藤本タツキ『チェンソーマン』超特集」では、『チェンソーマン』に魅せられたKAI-YOUの面々が、その魅力を紐解いていきます。
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