pixivが総監修するアートブック『VISIONS 2022 ILLUSTRATORS BOOK』が11月17日に発売された。はなぶしさん、lackさん、こむぎこ2000さん、LAMさん、しぐれういさん、redjuiceさん、rurudoさんなど、イラストレーター総勢170名の作品が収録されている。
本書のカバーイラストを手がけたのは、東北在住の若手イラストレーター・お久しぶりさん。爽やかさと瑞々しさを併せ持つ厚塗り、ファッショナブルな衣装デザインや小物使いを得意とし、国内外から支持を集めている。
ここ3年ほどで一気に注目度が増した彼女は、中学生の頃にマウスでデジタルお絵描きにチャレンジしたというネットネイティブ世代。最新のイラストレーターシーンを追う『VISIONS』のコンセプトを象徴する抜擢ではあるものの、その作家性はいまだ謎に包まれている。
今回『VISIONS 2022 ILLUSTRATORS BOOK』収録のインタビューが、特別にKAI-YOU.netにも掲載。お久しぶりさんのルーツや姉との関係性、意外なクリエイティブの原点などを聞いた。
取材:虎硬 文:ヒガキユウカ 編集:恩田雄多
お久しぶり もちろんすごくうれしかったんですけど、たくさんのイラストレーターさんがいらっしゃる中で「なんで自分なんだろう?」って。あと海外でも販売されると聞いて「どうしてこんなにプレッシャーをかけてくるんだろう?」と思いました(笑)。
ただ、今回はレイアウトをしっかり指定してくださって、それがちょうど自分の得意分野だったので、すごく描きやすかったですね。
──謎が多いお久しぶりさんのルーツについて、気になっていた人も多いと思います。まずは絵を描きはじめたきっかけからうかがえますか?
お久しぶり 家族の影響が一番大きいですね。特に「絵で負けたくないな」と思っていたのが姉です。実は姉も今、まめおじたんという名前で漫画やイラストの仕事をしているんです。
──お姉さんからはどんな影響を受けていたんですか?
お久しぶり 絵柄を真似したり同じ漫画を読んだりとかですね。中学~高校くらいの頃だと思うんですけど、姉が「イラスト系の仕事がしたい」と言っていたのを聞いて「じゃあ自分も」と、自然に考えていたと思います。それに自分は普通の会社に就職は絶対できないという考えもありました。
姉は当時からめちゃくちゃ上手くて、身近にそういう人がいると意識するし、画力向上にもつながりますね。もちろん友達にも絵を描く人はいたんですけど、比べてしまうとやっぱり姉が「くそ上手いな!」って(笑)。
──イラストを描く上で影響を受けたり、参考にしたりしているものはありますか?
お久しぶり 2000年代の韓国系のイラストレーターさんに代表されるような、つやつやした塗りの表現が好きですね。フィギュアの髪の毛のような立体物も参考にしています。フィギュアはコレクターとして実際に購入する場合もあるんですけど、イラストを描くための資料としては写真を見ることが多いですね。家でフィギュアを観察しても、ライティングがきれいにならないこともあるので。
作品で言うといわゆる女児向けのアニメがすごく好きで、かなり影響を受けていると思います。18歳のときには『ぴちぴちピッチ』にハマりました。放送当時にリアルタイムで見ていたわけじゃないんですけど、ふとTwitterで映像が流れてきたときに、「身体の描き方がどう見ても女児向けじゃない!」と衝撃を受けたんですよ(笑)。
それまであまり成人向けの絵を描いてこなかったんですけど、『ぴちぴちピッチ』の影響でエッチなイラストを描くようになりました。いかに女の子をかわいく描くかの参考にもしていました。もっと言うと『ぴちぴちピッチ』の影響を受けた絵を描くようになってから、上達もしたし、イラストのお仕事をいただけるようになりました。
もちろんほかにも影響を受けた作品はあると思うんですけど、根底にあるのは『ぴちぴちピッチ』なんだと思います。 ──まさか『ぴちぴちピッチ』が挙がるとは思いませんでした。特にお気に入りのキャラクターはいましたか?
お久しぶり 主人公たちが戦う相手のレディ・バットちゃんです。ボーイッシュというか、一人称も「僕」で、あんまり女の子らしいキャラクターじゃないんですけど、負けるとすごく女性的な部分を出してくるんですよ。
普段はキザな口調でしゃべってるのに、負けると「何よ、あんた達!!」みたいに女の子らしい口調でヒステリー起こして退散しちゃう。そんな描写がかわいかったですね。好きすぎて一時期は、夢中になってレディ・バットばかり毎日描いていました。
お久しぶり ネットでの活動に含めていいのかわからないですけど、小中学生くらいの頃にはマウスを使って絵を描いていました。友達に教えてもらったお絵かき掲示板に投稿して遊んでいたのが10年くらい前ですね。
それまでずっとアナログで描いていたので、当時は「私、パソコンで絵を描いている、すごい」という自分自身に対する感動がありました(笑)。そのあとはpiapro(ピアプロ)を使っていた時期もあります。
──ということは、イラストがニコニコ動画の投稿作品で使われたこともあるんですか?
お久しぶり いえ、イラストは全然投稿していなくて、あくまでも人の絵を見るのがメインでした。当時は初音ミクに夢中で、DECO*27さんの「弱虫モンブラン」とか「モザイクロール」とか、殿堂入りした曲を片っ端から聴いていたんです。
pixivを使いはじめたのは確か2010年頃、わりと最近といえるかもしれません。今となってはなぜかわからないんですけど、当時の自分はpixivに対してすごく格式高い印象があったんですよ。「メールアドレスを使ってサイトに登録するなんて大人がすることだ」っていうイメージがあって、なかなか手を出せなかったんですよね(笑)。他のサイトには登録していたのに。
──pixivでは名前もアイコンも設定せず、Twitterも「お久しぶり」という不思議なアカウント名です。これらの由来を教えていただけますか? お久しぶり たいそうな理由はないんですよ。pixivはイラスト専門のサービスなので、名前やアイコンがないほうが、しっかりイラストを見てもらえるかなと思ったんです。作家のパーソナルな情報が絵を見る上で邪魔になることもあるかもしれないと。
同じく「お久しぶり」という名前にもあまり意味がなくて……。確かTwitterだったと思うんですけど、昔ちょっと仲良くさせてもらってた人を偶然見つけて、フォローしたんです。そのとき、自分のアカウント名に「お久しぶりです」って付け足していたんですよ。それがいつの間にか名前になっていたという感じで。その間の変遷は謎なんですけど。
──ネット上にイラストを投稿するとたくさんの反応があると思いますが、SNSなどで受け取ったリアクションの中で印象的だったものはありますか?
お久しぶり 少し前までは成人向けのイラストに、相手役としてあんまりきれいじゃないタイプのおじさんをよく登場させていたんです。
でもあるとき、比較的シュッとした男の子のキャラクターを描いたら、Twitterで海外の方から「こういうのも描けるんですね、なんで今まで描かなかったんですか?」みたいなコメントをもらったんです。想定外の反応で面白くて、今でも鮮明に覚えています(笑)。
──Twitterを拝見していると、リプライに対する反応をすごく丁寧にされていますね。
お久しぶり そうですか? 個人的には全然返せていないなと思っていました。「ありがとうございます!」とか、絵文字だけみたいなのばかりなので、これをお返事といっていいのか……。でも、もらったからにはできるだけ返したいという気持ちはあります。
本書のカバーイラストを手がけたのは、東北在住の若手イラストレーター・お久しぶりさん。爽やかさと瑞々しさを併せ持つ厚塗り、ファッショナブルな衣装デザインや小物使いを得意とし、国内外から支持を集めている。
ここ3年ほどで一気に注目度が増した彼女は、中学生の頃にマウスでデジタルお絵描きにチャレンジしたというネットネイティブ世代。最新のイラストレーターシーンを追う『VISIONS』のコンセプトを象徴する抜擢ではあるものの、その作家性はいまだ謎に包まれている。
今回『VISIONS 2022 ILLUSTRATORS BOOK』収録のインタビューが、特別にKAI-YOU.netにも掲載。お久しぶりさんのルーツや姉との関係性、意外なクリエイティブの原点などを聞いた。
取材:虎硬 文:ヒガキユウカ 編集:恩田雄多
目次
「姉に負けたくない」イラストを描きはじめたきっかけ
──『VISIONS 2022 ILLUSTRATORS BOOK』ではカバーイラストを担当していただきました。オファーを受けたときの率直な印象を教えてください。お久しぶり もちろんすごくうれしかったんですけど、たくさんのイラストレーターさんがいらっしゃる中で「なんで自分なんだろう?」って。あと海外でも販売されると聞いて「どうしてこんなにプレッシャーをかけてくるんだろう?」と思いました(笑)。
ただ、今回はレイアウトをしっかり指定してくださって、それがちょうど自分の得意分野だったので、すごく描きやすかったですね。
──謎が多いお久しぶりさんのルーツについて、気になっていた人も多いと思います。まずは絵を描きはじめたきっかけからうかがえますか?
お久しぶり 家族の影響が一番大きいですね。特に「絵で負けたくないな」と思っていたのが姉です。実は姉も今、まめおじたんという名前で漫画やイラストの仕事をしているんです。
──お姉さんからはどんな影響を受けていたんですか?
お久しぶり 絵柄を真似したり同じ漫画を読んだりとかですね。中学~高校くらいの頃だと思うんですけど、姉が「イラスト系の仕事がしたい」と言っていたのを聞いて「じゃあ自分も」と、自然に考えていたと思います。それに自分は普通の会社に就職は絶対できないという考えもありました。
姉は当時からめちゃくちゃ上手くて、身近にそういう人がいると意識するし、画力向上にもつながりますね。もちろん友達にも絵を描く人はいたんですけど、比べてしまうとやっぱり姉が「くそ上手いな!」って(笑)。
──イラストを描く上で影響を受けたり、参考にしたりしているものはありますか?
お久しぶり 2000年代の韓国系のイラストレーターさんに代表されるような、つやつやした塗りの表現が好きですね。フィギュアの髪の毛のような立体物も参考にしています。フィギュアはコレクターとして実際に購入する場合もあるんですけど、イラストを描くための資料としては写真を見ることが多いですね。家でフィギュアを観察しても、ライティングがきれいにならないこともあるので。
作品で言うといわゆる女児向けのアニメがすごく好きで、かなり影響を受けていると思います。18歳のときには『ぴちぴちピッチ』にハマりました。放送当時にリアルタイムで見ていたわけじゃないんですけど、ふとTwitterで映像が流れてきたときに、「身体の描き方がどう見ても女児向けじゃない!」と衝撃を受けたんですよ(笑)。
それまであまり成人向けの絵を描いてこなかったんですけど、『ぴちぴちピッチ』の影響でエッチなイラストを描くようになりました。いかに女の子をかわいく描くかの参考にもしていました。もっと言うと『ぴちぴちピッチ』の影響を受けた絵を描くようになってから、上達もしたし、イラストのお仕事をいただけるようになりました。
もちろんほかにも影響を受けた作品はあると思うんですけど、根底にあるのは『ぴちぴちピッチ』なんだと思います。 ──まさか『ぴちぴちピッチ』が挙がるとは思いませんでした。特にお気に入りのキャラクターはいましたか?
お久しぶり 主人公たちが戦う相手のレディ・バットちゃんです。ボーイッシュというか、一人称も「僕」で、あんまり女の子らしいキャラクターじゃないんですけど、負けるとすごく女性的な部分を出してくるんですよ。
普段はキザな口調でしゃべってるのに、負けると「何よ、あんた達!!」みたいに女の子らしい口調でヒステリー起こして退散しちゃう。そんな描写がかわいかったですね。好きすぎて一時期は、夢中になってレディ・バットばかり毎日描いていました。
「お久しぶり」──不思議な名前の意味
──インターネット上でイラストを描いたり投稿したりし始めたのはいつ頃ですか?お久しぶり ネットでの活動に含めていいのかわからないですけど、小中学生くらいの頃にはマウスを使って絵を描いていました。友達に教えてもらったお絵かき掲示板に投稿して遊んでいたのが10年くらい前ですね。
それまでずっとアナログで描いていたので、当時は「私、パソコンで絵を描いている、すごい」という自分自身に対する感動がありました(笑)。そのあとはpiapro(ピアプロ)を使っていた時期もあります。
──ということは、イラストがニコニコ動画の投稿作品で使われたこともあるんですか?
お久しぶり いえ、イラストは全然投稿していなくて、あくまでも人の絵を見るのがメインでした。当時は初音ミクに夢中で、DECO*27さんの「弱虫モンブラン」とか「モザイクロール」とか、殿堂入りした曲を片っ端から聴いていたんです。
pixivを使いはじめたのは確か2010年頃、わりと最近といえるかもしれません。今となってはなぜかわからないんですけど、当時の自分はpixivに対してすごく格式高い印象があったんですよ。「メールアドレスを使ってサイトに登録するなんて大人がすることだ」っていうイメージがあって、なかなか手を出せなかったんですよね(笑)。他のサイトには登録していたのに。
──pixivでは名前もアイコンも設定せず、Twitterも「お久しぶり」という不思議なアカウント名です。これらの由来を教えていただけますか? お久しぶり たいそうな理由はないんですよ。pixivはイラスト専門のサービスなので、名前やアイコンがないほうが、しっかりイラストを見てもらえるかなと思ったんです。作家のパーソナルな情報が絵を見る上で邪魔になることもあるかもしれないと。
同じく「お久しぶり」という名前にもあまり意味がなくて……。確かTwitterだったと思うんですけど、昔ちょっと仲良くさせてもらってた人を偶然見つけて、フォローしたんです。そのとき、自分のアカウント名に「お久しぶりです」って付け足していたんですよ。それがいつの間にか名前になっていたという感じで。その間の変遷は謎なんですけど。
──ネット上にイラストを投稿するとたくさんの反応があると思いますが、SNSなどで受け取ったリアクションの中で印象的だったものはありますか?
お久しぶり 少し前までは成人向けのイラストに、相手役としてあんまりきれいじゃないタイプのおじさんをよく登場させていたんです。
でもあるとき、比較的シュッとした男の子のキャラクターを描いたら、Twitterで海外の方から「こういうのも描けるんですね、なんで今まで描かなかったんですか?」みたいなコメントをもらったんです。想定外の反応で面白くて、今でも鮮明に覚えています(笑)。
──Twitterを拝見していると、リプライに対する反応をすごく丁寧にされていますね。
お久しぶり そうですか? 個人的には全然返せていないなと思っていました。「ありがとうございます!」とか、絵文字だけみたいなのばかりなので、これをお返事といっていいのか……。でも、もらったからにはできるだけ返したいという気持ちはあります。
この記事どう思う?
2件のコメント
恩田雄多
コメントありがとうございます! 編集部の恩田です。
ご指摘の箇所、失礼いたしました。修正させていただきました。
感想も大変ありがたいです!
匿名ハッコウくん(ID:4879)
お久しぶりさんの絵すごく好きなので本人のことをもっと知れて嬉しいです すごく面白い記事でした、知らなかった部分が出ててすごく新鮮でした
ずっと手の届かないほどの画力の絵師って感じでしたけど姉との関係や昔の話で同じく人間ってわかって、励みになりました!
ちなみに 『線画はSAI、塗りはクリスタ お久しぶりの制作環境』のところSAIとクリスタ逆になってます