『ポケモンユナイト』で初めてMOBAを遊ぶ人へ──知るべき「ティルト」との向き合い方

『ポケモンユナイト』で初めてMOBAを遊ぶ人へ──知るべき「ティルト」との向き合い方
『ポケモンユナイト』で初めてMOBAを遊ぶ人へ──知るべき「ティルト」との向き合い方
7月21日に配信された『ポケモンユナイト』。先日には初の週末(4連休!)を迎え、ゲーム内外問わず盛り上がりを見せています。

さて、『ポケモンユナイト』はMOBA(Multiplayer online battle arena)と呼ばれるジャンルのゲーム。『League of Legends』や『Dota2』など、『ポケモンユナイト』以前から続くジャンルです。
【公式】『ポケモンユナイト』ゲームプレイトレーラー
それゆえ経験者と初心者との間にはゲームに対する認識のズレも存在します。

「まずルールが複雑」。『ポケモンユナイト』でMOBAを初めて触ったゲーマーの方はそう思ったことでしょう。なんだか良く分からないうちに10分が過ぎ、なんだか良く分からないうちに勝ったり負けたり。味方の技に自分も技を重ねるとなんとなく楽しい。

けれど、慣れてきてランクマッチに潜るようになると、このように思うかもしれません──「味方のせいで負けた」と。

MOBAは味方との連携が重要である一方、「5vs5ではなく1vs9」とも言われるようにチームワークを発揮するのが大変難しいジャンルです。

この記事ではそんなチームワークを発揮するための攻略情報、ではなくチームメイトへの疑心暗鬼や苛立ち「ティルト」との向き合い方を紹介します。

目次

MOBAの概要、知っておくべきこと

MOBAはMultiplayer online battle arenaの名の通り、複数のプレイヤーが集まって個性豊かなキャラクターを操作し戦うオンラインゲーム

多くのゲームに共通するのは、2つのチームに分かれて戦い、それぞれの本拠地を破壊した方が勝利するというシステムです。

互いの本拠地はタワーやタレットと呼ばれる防衛施設が建てられた何本かの道で繋がれており、それらを破壊し守るために互いのチームが激突します。試合のたびにレベル1からスタートし、ゲーム内で経験値や装備を集めながら自分のキャラクターを強化していく流れも多くのゲームで採用されています。

先に紹介した『League of Legends』や『Dota2』はPCゲームですが、スマートフォン向けにも、これまで『Vainglory』や『王者栄耀』、『非人類学園』といったタイトルがリリースされてきました。

こうした先行タイトルの形式に似たシステムを『ポケモンユナイト』も採用しています。
【公式】5分でわかる!『Pokémon UNITE』
5人チームのトレーナーが1匹ずつ異なるポケモンを選択。試合の中で経験値を獲得してポケモンを成長/進化させながら相手チームと戦い、他のゲームではタワーに当たるゴールエリアに叩き込んだエオスエナジーというスコアを競います。

試合ごとに自分のキャラクターを強化していく一連の流れは、進化と技の選択というポケモンならではの要素に。10分という時間制限で、一方的な試合でも長くなりがちなMOBAの問題点を解消し、ポケモンシリーズのファン向けにもカジュアルに遊べるテイストとなっています。

カジュアルテイストといったものの、既に攻略動画やSNSなどで語られているとおり、ランクマッチで競うプレイヤーたちの間には共通の認識、メタや定石と呼ばれるものへの理解が存在します

MOBAは操作技術だけでなく、むしろそういった知識の有無が勝敗を左右するジャンル。覚えれば覚えるほど強くなれる、貪欲なプレイヤーたちを引き込む魅力がそこにはあります。

チーム戦としてのメタや定石は深化していく

SNSなどで言われているのが各チームが操作しているポケモン以外にマップに存在する野生のポケモンの重要性。

特に中盤以降に登場するカジリガメや、終盤に登場するサンダーについては「カジリガメはチーム全員が経験値を大量に獲得できるから5人全員で向かうべき」「大きな有利を付けているならサンダーとの戦闘は避けたほうが良い」といった指南がなされています。

メタや定石はゲームのサービス運営が長くなればなるほど深化していきます。もしかしたら数ヶ月後には「開始〇〇秒までは□□して、その後は~」「△△の湧く〇〇秒前には準備の□□をしておくこと」のような細かい定石が出来ていくのかもしれません。
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「たまたまマッチしただけの赤の他人」とのコミュニケーションエラー

こうしたメタや定石は「同じランク帯であれば知ってて当たり前」と思われているからこそ機能するもの。

知り合い0人

逆に言えば「カジリガメに集まらなかった」「大きな有利を付けているのに、不必要なサンダーとの戦闘を始めた」のような味方の行動はとても目に付いてしまいます。

チームゲームである以上、味方プレイヤーのミスの被害を自分が被る、チーム内で経験値のような資源の奪い合いといった場面が必ずあります。そもそも味方と言っても、その試合でたまたまマッチしただけの赤の他人。突然集まった5人でフットサルをするようなもので、連携のミスや状況判断の違いは当然です。

メタや定石を理解していても細かいミスや優先順位のズレが味方同士のすれ違い、疑心暗鬼や苛立ちを呼んでいく。「MOBAは5vs5ではなく1vs9」とも言われる所以がここにあります。

ティルトという疑心暗鬼や苛立ち

こうした疑心暗鬼や苛立ちに陥った状態は「ティルト」と呼ばれ、ゲーマーにとって大きな課題となってきました。「ティルト」に陥ることは、敗北に直結しかねません。ここで、先人たちによる文献をいくつか引用しましょう。

そもそも、なぜ人はティルトに陥るのだろうか。

それはひとえに、「敗北という事実」が強烈なまでに心をかき乱すからに他ならない。

日頃、生活をしていて自分が劣等感を感じる機会がどれぐらい訪れるだろうか。「他人に負けた」と敗北を認める瞬間は、毎日あるだろうか。ほとんどの人は、日常生活において頻繁に感情を揺さぶられることはないはずだ。

しかし、ゲームではそれが頻繁に、また明白に起こる。自分が相手に負ければ敗北する。強烈な無力感に襲われ、苛立ちを覚えるだろう。敗北という事実は、自分が無能であるということが白日の下になっているのと同義なのだ。 「ティルト」に陥らないための4つの方法(KAI-YOU Prewmium)より

ティルトがさらに猛威をふるうのは、チームプレイが発生する局面である。チームワークを必要とするゲームにおいて、一番の障害はチームワークそのものだ。チームメイトに対して無意識のうちに抱いてしまっている期待が、プレイの様々な局面で容易に不満へと転ずる──味方が役に立たない。思う通りに動いてくれない。こうすれば勝てるはずなのに。最も真剣にプレイしているのは私だ。言うまでもなく、これはティルトだ。 田村俊明|クエスト:狂乱の呼び声(degree of frenzy)より

どんなにチームメイトが下手くそであろうとも、彼らにひっついていなければならない。そして誰かひとりでも仕事をおろそかにすると、負けて終わる。自分のプレイが良かったから勝った/悪かったから負けた、と感じられることは、ほとんどない。

勝つときはみんなで勝利をつかむのであり、負けるときには自分以外の誰かが下手くそだったから負ける。(自分が敗因であることもごくまれにあるが、ほとんどの場合、なぜかそのことに気づくことはできない) 現実は不条理でゲームには真実“しか“ない 『オーバーウォッチ』(KAI-YOU Premium)より

MOBAに、そして『ポケモンユナイト』にもこの「ティルト」に陥る状況は頻繁に訪れます

まず、5vs5の10人で行われるゲームにおいて、1人のプレイヤーが試合に与えられる影響力は平均して10%しかありません

それぞれ10パーセントの影響力

残りの90%、試合のほとんどは自分にはコントロール不可能な要素によって構成され、あなたの勝率はその上で飛び跳ね、転げ落ちます。最善の行動を取っても負け、最悪のミスをしでかしてもなぜか勝つ。

MOBAのランクマッチとは即ち、予測不可能性や無力感、ティルトとの戦いです。あなたが華麗な5人抜きを決める驚異的なドリブルテクニックの持ち主でない限り、協力の難しい赤の他人とパスを繋ぐことが求められます(そして、5人抜きを決めなければいけない試合も確実に存在します)。

たかがゲーム、されどゲーム

こうした疑心暗鬼や苛立ち、MOBAではお馴染みの「ティルト」が日本語圏のSNSを席巻するほどまでに盛り上がっているのは、『ポケモンユナイト』が初めてではないでしょうか

事実、攻撃的なハッシュタグを付けた投稿も散見されます。試合中の暴言も存在するでしょう。

MOBAの人気タイトル『League of Legends』が8年前に公開した動画では、暴言のないチームの平均勝率が54%だったのに対して、暴言を言うプレイヤーが3人いた場合の勝率は46%まで下がることが触れられています。
Teamwork OP(League of Legends)
『ポケモンユナイト』の公式サイトで公開されている「Pokémon UNITEの動画や静止画の利用に関するガイドライン」(外部リンク)には以下の項目が盛り込まれています。

・『Pokémon UNITE』の楽しみ方やプレイの様子を他者に共有することを主目的としないこと(例:違法な行為の助長、差別、他者への誹謗中傷、政治活動または宗教活動への使用等)
・お客様ご自身以外が発言しているボイスチャットまたはフリーテキストチャットの内容を、当該発言者の承諾を得ずに利用すること

たかがゲーム。しかし、画面の向こうには人がいることを忘れずに。あなたは自分にできることをやれば良く、それぞれの事情や体調を抱えてプレイしている味方をとやかく言っている暇はありません。暴言に出会ったらそっと通報を。ショックが大きければ気分転換を挟みましょう。

されどゲーム。味方との連携が決まった喜びを忘れずに。もしあなたが自分にできることをやり、10%の影響力を最大限に活かすのならば、勝率50%をほんの少しでも上回るのならばランクは確実に上昇します。「敗北という事実」が強烈なまでに心をかき乱すのならば勝利も同じこと。

サーバーに記録された0と1との明滅に留まらない熱狂が、あなたを迎えてくれるはずです。

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