5月8日・9日に、野外音楽フェス「岩壁音楽祭」のクルーが、日本橋のアートホテル・BnA_WALLで音楽イベント「STAY IN AMBIENT」を開催した。
トラックメイカー/DJのSeihoさんによるアンビエント音楽が、初日の夕方から翌日の朝まで、BnA_WALLの音響設備などを通して、客室、ラウンジ、フロント、エレベーターにまで届けられる宿泊型のイベントで、ホテルに滞在しながら音楽を楽しむことができた。 両日ともにSeihoさんによる参加者限定のライブも行われた「STAY IN AMBIENT」の会場になったBnA_WALLは、すべての客室が個別のアーティストによる作品で飾られており、そこにいるだけで非日常が味わえる空間でもある。
「STAY IN AMBIENT」はそんな非日常へのショートトリップと、日常に溶け込むアンビエント音楽を掛け合わせて、閉塞した状況を突破しようと試みたものだった。
22時から予定されていたライブまで、運営スタッフを含めて30人ほどの参加者が集まることはない。客室でリラックスする人もいれば、カフェスペースで談笑する人もいて、誰もが思い思いに過ごしていた。 かくいう自分はラウンジで心地よい音に身を任せて呆けていたり、PCと向き合ってZoomでの打ち合わせをこなしたり。
どれもおおよそ音楽イベントの渦中にいるようなシーンではないが、全員で同じ音楽と空間を共有するフェスの心地よさはたしかにあって、いわばハレの日のケ、非日常のなかで日常を過ごす新たな体験があった。
約10時間に及ぶアンビエント音楽の大作『DISTINATION』を2月にリリースしていた彼は、この日もその粋を魅せてくれた。 BnA_WALLの地下にあるスペースに集まった参加者は、時にまどろみを誘うような旋律のなかで眠り、あるいは瞑想や脳内トリップを楽しんでいたかもしれない(ちなみにライブは中継映像を通じて各部屋でも楽しめた)。
時間が経つにつれてSeihoさん自身も音楽に身を委ね、ソファで寝転がっていた姿も印象に残っている。そこには久しぶりに生身で音楽を共有する快感があった。
この現実を前に業界の担い手たちも手をこまねいているわけではない。 3月には「FUJI ROCK FESTIVAL」などを主催する7社が、コロナ禍でのフェス開催の方法を考える共同事業体「野外ミュージックフェスコンソーシアム」を設立。十分な感染対策を講じて万単位の動員を記録したフェス「OSAKA GENKi PARK」「JAPAN JAM 2021」などの例もある。
国外に目を向ければ、スペイン・バルセロナ(外部リンク)やイギリス・リバプール(外部リンク)など、都市単位で実験的な有観客ライブが行われて一定の成果が出ている。 そうしてコロナと共にある新しい日常のあり方が模索されるなか、宿泊という別の角度から音楽体験をつくってみせた「STAY IN AMBIENT」。客室を隔てる壁で参加者の距離を遠ざけつつ、同じ音楽を共有するフェスの心地よさを演出してみせたあの時間には、少なくないヒントが含まれていたように思う。
宿泊すべてが音楽体験なる新しいイベントのあり方を示しつつ提示したあの手法は再現性も高い。参加者はリラックスするでも仕事をするでも良い、そんな自由度の高さも魅力的だった。
次回があるのか、あるいはまた別の方法なのか。2020年10月に予定していた第2回の開催を中止せざるを得ない状況から、ドライブインイベント「DRIVE IN AMBIENT」や配信企画「HOMEWORK PROGRAM」を打ち出してきた「岩壁音楽祭」のクルーは、いつも一捻り加えたイベントを実施してきた。彼らの来る日のアップデートに期待したい。
トラックメイカー/DJのSeihoさんによるアンビエント音楽が、初日の夕方から翌日の朝まで、BnA_WALLの音響設備などを通して、客室、ラウンジ、フロント、エレベーターにまで届けられる宿泊型のイベントで、ホテルに滞在しながら音楽を楽しむことができた。 両日ともにSeihoさんによる参加者限定のライブも行われた「STAY IN AMBIENT」の会場になったBnA_WALLは、すべての客室が個別のアーティストによる作品で飾られており、そこにいるだけで非日常が味わえる空間でもある。
「STAY IN AMBIENT」はそんな非日常へのショートトリップと、日常に溶け込むアンビエント音楽を掛け合わせて、閉塞した状況を突破しようと試みたものだった。
日常に溶け込むアンビエント音楽と過ごす非日常
アンビエント音楽がホテルを満たしはじめたのは初日の17時から。それまでに各々チェックインを済ませた参加者は、常に音楽が流れ続けるホテルのなかへまばらに散っている。22時から予定されていたライブまで、運営スタッフを含めて30人ほどの参加者が集まることはない。客室でリラックスする人もいれば、カフェスペースで談笑する人もいて、誰もが思い思いに過ごしていた。 かくいう自分はラウンジで心地よい音に身を任せて呆けていたり、PCと向き合ってZoomでの打ち合わせをこなしたり。
どれもおおよそ音楽イベントの渦中にいるようなシーンではないが、全員で同じ音楽と空間を共有するフェスの心地よさはたしかにあって、いわばハレの日のケ、非日常のなかで日常を過ごす新たな体験があった。
生身で共有するライブの快感
そんな時間のなかでもやはり特別だったのがSeihoさんによるライブだ。約10時間に及ぶアンビエント音楽の大作『DISTINATION』を2月にリリースしていた彼は、この日もその粋を魅せてくれた。 BnA_WALLの地下にあるスペースに集まった参加者は、時にまどろみを誘うような旋律のなかで眠り、あるいは瞑想や脳内トリップを楽しんでいたかもしれない(ちなみにライブは中継映像を通じて各部屋でも楽しめた)。
時間が経つにつれてSeihoさん自身も音楽に身を委ね、ソファで寝転がっていた姿も印象に残っている。そこには久しぶりに生身で音楽を共有する快感があった。
コロナ禍における音楽フェスの開催、そのあり方
音楽フェスの市場動向に関する調査を毎年行っているぴあ総研によれば、2020年の音楽フェスの市場規模は前年比97.9%減の6.9億円に、動員数は前年比96.8%減の9.3万人へと激減した。この現実を前に業界の担い手たちも手をこまねいているわけではない。 3月には「FUJI ROCK FESTIVAL」などを主催する7社が、コロナ禍でのフェス開催の方法を考える共同事業体「野外ミュージックフェスコンソーシアム」を設立。十分な感染対策を講じて万単位の動員を記録したフェス「OSAKA GENKi PARK」「JAPAN JAM 2021」などの例もある。
国外に目を向ければ、スペイン・バルセロナ(外部リンク)やイギリス・リバプール(外部リンク)など、都市単位で実験的な有観客ライブが行われて一定の成果が出ている。 そうしてコロナと共にある新しい日常のあり方が模索されるなか、宿泊という別の角度から音楽体験をつくってみせた「STAY IN AMBIENT」。客室を隔てる壁で参加者の距離を遠ざけつつ、同じ音楽を共有するフェスの心地よさを演出してみせたあの時間には、少なくないヒントが含まれていたように思う。
宿泊すべてが音楽体験なる新しいイベントのあり方を示しつつ提示したあの手法は再現性も高い。参加者はリラックスするでも仕事をするでも良い、そんな自由度の高さも魅力的だった。
次回があるのか、あるいはまた別の方法なのか。2020年10月に予定していた第2回の開催を中止せざるを得ない状況から、ドライブインイベント「DRIVE IN AMBIENT」や配信企画「HOMEWORK PROGRAM」を打ち出してきた「岩壁音楽祭」のクルーは、いつも一捻り加えたイベントを実施してきた。彼らの来る日のアップデートに期待したい。
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