2016年11月からアニメ映画版も上映されている、漫画作品『この世界の片隅に』。2018年7月から、TBS系にて漫画を原作とする同名のドラマ版が放送されている。
このドラマ版について、原作者のこうの史代さんが、ファンが運営する掲示板に本人名義で言及。
「わたしはいちおう毎回、脚本を見せて貰ってチェックしているのですが、直してもらえるとは限らないみたいです。まあ、脚本の岡田さんがどう展開させたいかはわからないので、あんまり強くは言っていません」と、原作者としてドラマ版との距離を明らかにした。
同時に、原作からの改変について「でも大丈夫…『六神合体ゴッドマーズ』よりは原作に近いんじゃないかな!?」と、原作漫画から大幅な改変がなされたアニメとして知られる『六神合体ゴッドマーズ』を例に挙げてコメント。 これらの発言が現在、やや皮肉めいているようにも見えるとネット上で注目を集めている。
一方で、ドラマ版で印象的なモチーフとして取り入れられている“櫛”を提案したのはこうの史代さんであることもわかり、原作者としてドラマ版をより良くしようという協力関係にある様子もうかがえる。
スペシャルサンクスは直接的な協力関係にはなくても謝辞を表明するために使用されることもあるため、原作を同じくする作品同士でのクレジットを巡る異例の表明は、大きな注目を集めた。
また、こうの史代さんが「『六神合体ゴッドマーズ』よりは原作に近いんじゃないかな!?」と例に挙げている『六神合体ゴッドマーズ』は、横山光輝さんの漫画『マーズ』を原作に、根本的な設定から異なる大幅な改変がなされたテレビアニメとして一部で知られている作品だ。
クレジットを巡るアニメ映画版との騒動に続いて、皮肉とも受け取れる原作者のコメントを受けて、作品認知に大きく貢献したアニメ映画版の関係者どころか、原作者もそこまで深く関与せずにドラマ版が制作されている状況なのではないか、という懸念が、原作ファンおよびアニメ映画ファンの間で広がっている。
現在、Twitterでは「#ゴッドマーズよりも原作に遠い選手権」(外部リンク)というハッシュタグが盛り上がり、トレンド入りを果たしていることからも、注目度の高さがうかがえる。
ただ、ドラマ版『この世界の片隅に』は現在では3話まで放送されており、原作にはなかった現代パートには賛否が寄せられているものの、全体としては丁寧につくりこまれた展開で、原作を踏みにじるようなつくりではなく、決して評価も悪くない。
『ひよっこ』の岡田惠和さんが脚本、『カルテット』の土井裕泰さんが演出、同じく『カルテット』の佐野亜裕美さんがプロデューサーをつとめ、スタッフ陣も盤石だ。
また、前述のように、ドラマ版に取り入れられているこうの史代さんのアイデアもある。
しかし、作品の外側で関係者や原作者からのやや辛辣と言える姿勢に、懸念を感じてしまうファンが増えているのもまた事実だ。
果たして、騒動がどのように収束し、肝心の物語はどう結実するのか。先行きを見守りたい。
2004年刊行の『夕凪の街 桜の国』に続いて、戦時下の広島を舞台に綴った内容で、第13回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞はじめ、国内外で大きな反響を呼んだ。
第二次世界大戦中の広島・呉を舞台に、激化する世の中で大切なものを失いながらも、前を向いて日々を大切に生きていく女性・すずを描いた『この世界の片隅に』は、2011年に日本テレビ系でテレビドラマ化されたが、大きな再評価の流れをつくったのは2016年公開のアニメ映画版だった。 監督は片渕須直さん、主演のすず役を女優ののん(元は「能年玲奈」名義で活動した女優)さんがつとめている。
ファンからの支援金を募るクラウドファンディングで3912万円の資金を集めたことも話題を呼んだが、片渕監督による徹底的な時代考証に裏打ちされたアニメ映画版は、制作に2010年から6年という歳月を費やしたため、支援金に加えて監督自身が自腹を切ったことも知られている。 当初は63館という小規模な上映館数ではじまったが、戦争の惨さではなく、のんさん演じる主人公・すずのひたむきさが戦時下で生きる人間として丁寧に描き出された本作は口コミを中心に大きな反響を呼び、200万人以上を動員。2016年11月から現在まで、異例のロングラン上映が行われている。
第40回日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞やアヌシー国際アニメーション映画祭の長編部門審査員賞はじめ、国内外で高い評価を受けた。
また、アニメ映画版については、メインキャスト・スタッフはそのままに、新規場面を付け足した新バージョン『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』が12月に公開されることも明らかになっている。
このドラマ版について、原作者のこうの史代さんが、ファンが運営する掲示板に本人名義で言及。
「わたしはいちおう毎回、脚本を見せて貰ってチェックしているのですが、直してもらえるとは限らないみたいです。まあ、脚本の岡田さんがどう展開させたいかはわからないので、あんまり強くは言っていません」と、原作者としてドラマ版との距離を明らかにした。
同時に、原作からの改変について「でも大丈夫…『六神合体ゴッドマーズ』よりは原作に近いんじゃないかな!?」と、原作漫画から大幅な改変がなされたアニメとして知られる『六神合体ゴッドマーズ』を例に挙げてコメント。 これらの発言が現在、やや皮肉めいているようにも見えるとネット上で注目を集めている。
一方で、ドラマ版で印象的なモチーフとして取り入れられている“櫛”を提案したのはこうの史代さんであることもわかり、原作者としてドラマ版をより良くしようという協力関係にある様子もうかがえる。
アニメ映画版とのクレジット騒動に続き、原作者がやや皮肉なコメント
現在放送中のドラマ版を巡っては、アニメ映画版の『この世界の片隅に』製作委員会をスペシャルサンクスとしてクレジットしたところ、7月24日にアニメ映画版の公式Twitterで「当該ドラマの内容・表現等につき、映画に関する設定の提供を含め、一切関知しておりません」という否定が表明されたことも物議を醸していた。スペシャルサンクスは直接的な協力関係にはなくても謝辞を表明するために使用されることもあるため、原作を同じくする作品同士でのクレジットを巡る異例の表明は、大きな注目を集めた。
その上で、原作者であるこうの史代さんが、脚本は見ているものの「直してもらえるとは限らないみたい」と言及している。現在放送中の漫画『この世界の片隅に』を原作とする実写ドラマに「special thanks to 映画『この世界の片隅に』製作委員会」と表記されておりますが、当委員会は当該ドラマの内容・表現等につき、映画に関する設定の提供を含め、一切関知しておりません。
— 映画『この世界の片隅に』&映画『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』公式 (@konosekai_movie) 2018年7月24日
2018年7月24日「この世界の片隅に」製作委員会
また、こうの史代さんが「『六神合体ゴッドマーズ』よりは原作に近いんじゃないかな!?」と例に挙げている『六神合体ゴッドマーズ』は、横山光輝さんの漫画『マーズ』を原作に、根本的な設定から異なる大幅な改変がなされたテレビアニメとして一部で知られている作品だ。
クレジットを巡るアニメ映画版との騒動に続いて、皮肉とも受け取れる原作者のコメントを受けて、作品認知に大きく貢献したアニメ映画版の関係者どころか、原作者もそこまで深く関与せずにドラマ版が制作されている状況なのではないか、という懸念が、原作ファンおよびアニメ映画ファンの間で広がっている。
現在、Twitterでは「#ゴッドマーズよりも原作に遠い選手権」(外部リンク)というハッシュタグが盛り上がり、トレンド入りを果たしていることからも、注目度の高さがうかがえる。
ただ、ドラマ版『この世界の片隅に』は現在では3話まで放送されており、原作にはなかった現代パートには賛否が寄せられているものの、全体としては丁寧につくりこまれた展開で、原作を踏みにじるようなつくりではなく、決して評価も悪くない。
『ひよっこ』の岡田惠和さんが脚本、『カルテット』の土井裕泰さんが演出、同じく『カルテット』の佐野亜裕美さんがプロデューサーをつとめ、スタッフ陣も盤石だ。
また、前述のように、ドラマ版に取り入れられているこうの史代さんのアイデアもある。
しかし、作品の外側で関係者や原作者からのやや辛辣と言える姿勢に、懸念を感じてしまうファンが増えているのもまた事実だ。
果たして、騒動がどのように収束し、肝心の物語はどう結実するのか。先行きを見守りたい。
戦時下を生きる人間を描いた『この世界の片隅に』、アニメ映画の新バージョンも始動
2008年から2009年にかけて上・中・下の3冊で刊行された、こうの史代さんによる漫画『この世界の片隅に』。2004年刊行の『夕凪の街 桜の国』に続いて、戦時下の広島を舞台に綴った内容で、第13回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞はじめ、国内外で大きな反響を呼んだ。
第二次世界大戦中の広島・呉を舞台に、激化する世の中で大切なものを失いながらも、前を向いて日々を大切に生きていく女性・すずを描いた『この世界の片隅に』は、2011年に日本テレビ系でテレビドラマ化されたが、大きな再評価の流れをつくったのは2016年公開のアニメ映画版だった。 監督は片渕須直さん、主演のすず役を女優ののん(元は「能年玲奈」名義で活動した女優)さんがつとめている。
ファンからの支援金を募るクラウドファンディングで3912万円の資金を集めたことも話題を呼んだが、片渕監督による徹底的な時代考証に裏打ちされたアニメ映画版は、制作に2010年から6年という歳月を費やしたため、支援金に加えて監督自身が自腹を切ったことも知られている。 当初は63館という小規模な上映館数ではじまったが、戦争の惨さではなく、のんさん演じる主人公・すずのひたむきさが戦時下で生きる人間として丁寧に描き出された本作は口コミを中心に大きな反響を呼び、200万人以上を動員。2016年11月から現在まで、異例のロングラン上映が行われている。
第40回日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞やアヌシー国際アニメーション映画祭の長編部門審査員賞はじめ、国内外で高い評価を受けた。
また、アニメ映画版については、メインキャスト・スタッフはそのままに、新規場面を付け足した新バージョン『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』が12月に公開されることも明らかになっている。
片渕須直監督の胸中
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