シチュエーションを想起させる短歌は、親しみやすい言葉で書かれており、ひと目でその情感が心に刺さってくるようだ。
“現代短歌の伝道師”が生み出し、750着のリターンを達成
短歌集『てのりくじら』『ドレミふぁんくしょんドロップ』で1997年にデビューした枡野浩一さんは、短歌小説『ショートソング』が10万部のヒットを記録。短歌を軸にしたコラボレーションも果敢に行ってきた。また、加藤千恵や佐々木あららといった新たな才能を見出すなど、“現代短歌の伝道師”としての顔を持つ。
枡野浩一さんが、デビュー20周年を記念して発表したのが「短歌Tシャツ」こと『MASUNOTANKA20TH』シリーズだ。監修は服飾デザイナーである谷田浩さんと現代美術作家のさとうかよさんによる服飾レーベル「STORAMA」が務めた。
発売に先駆けた「CAMPFIRE」でのクラウドファンディングは370%の支援を受け、750着を超えるTシャツをリターン。その後も伊勢丹 新宿店、THE TOKYO ART BOOK FAIRといったイベントでも販売機会を得た。
そして、ZOZOTOWNの「anlio」ショップ内にて、プレオーダーが開始されることになった(外部リンク)。オーダー期限は6/24まで、全20種からなり、サイズはS、M、L、XXXLで展開される。価格はすべて3900円(税込)。
先行販売でも話題。短歌を「まとう」新しい体験
今回のTシャツに記された短歌は、枡野浩一さんが20年の活動で生み出してきた「自信作」を20首選んだという。先行販売などで手に入れ、すでに着ている人は、その枡野浩一さんの言う「うまれるコミュニケーション」を感じているようだ。「はい。57577の日本語をTシャツとして身にまとうなんてハードルの高い行為かもしれません。短歌を選ぶとき、これを着て街を歩くのは勇気がいるかもしれないと迷ったりもしました。でも、自分の20年間の活動の中で、胸を張れる20首を選んだつもりです。この短歌を着て街へ出ることで、うまれるコミュニケーションがあるんではと」 ──CAMPFIREページ内のインタビューより
枡野浩一さんの短歌Tシャツを着てたら「ステキなTシャツですね。なんて書いてあるの?」って、カフェの店員に逆ナンされた。僕は短歌を詠み上げた。次はなぜこの短歌を選んだのかまでスラスラ話せるようにしておこう。 pic.twitter.com/ocL4AlHPFe
— つのだ ふむ (@tsunoda_fumm) 2018年5月16日
枡野浩一さんの短歌Tシャツ、“色恋の 成就しなさにくらべれば 仕事は終わる やりさえすれば”本当にお気に入りです。これを着てカフェに行き、今日提出の原稿を血眼で書いてきます。#ガチ勢#masunotanka20th #枡野浩一#仕事は終わるやりさえすれば https://t.co/IpS0Es7iCX pic.twitter.com/U7dU0iVUOx
— 紫原明子 (@akitect) 2018年5月21日
枡野さんの短歌ほんとうにいいよね https://t.co/qNmgnZjLbs
— けんすう (@kensuu) 2018年6月13日
病みの心が思わず反応しそうな一首も
自信作だけあってか、シンプルながら刺さる言葉が並ぶ。たとえば、誤った読みかもしれないが、これは恋のやりきれなさよりも仕事に向き合う気持ちを鼓舞してくれるような一枚だった。もしくは、怠惰な自分への戒めか。 あるいは、生きる理由がマイナスでも良い、という後ろ向きな肯定に力をもらえる一枚も。今なら某アイドルオーディションに落ちてTwitterで選考委員へ恨みつらみをぶちまけているような人は、たぶん似合う(まぁ、あれはどうかしらと思いつつ……)。 他にも、心地よいリズムの最後の最後に置かれた「君」が、切なく迫ってくる一枚。短歌という成約の中の自由さを存分に感じさせてくれる。 短歌の読みはどれも僕の勝手な私論ではあるが、『MASUNOTANKA20TH』が短歌というものの面白さや奥深さを感じさせてくれる、魅力あるアイテムであることは疑いない。一枚ずつの短歌を読み解きながら、その言葉をまとまってみる。そんな意味ある夏が来ても、きっといい。本も言葉もおもしろい😉
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