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POPなポイントを3行で

  • ライブストリーミングは戦国時代、お手軽スマホ配信が全盛
  • 勢い増す「17 Live」の配信者・課金者双方に直撃取材を行った
  • なぜユーザーは、ライブ配信者に決して安くない金額を課金するのか?

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「キャバクラとは全然違う」なぜ生に投げ銭するのか? イチナナライブの現場
「なりたい職業ランキング」でYouTuberが3位※になるなど、ライブストリーミングシーンは隆盛を極め今や文化として成熟しつつある。一方ではUstreamが撤退し、ニコニコ動画が不振にあえぐなど、従来型の配信サービスが苦境に立たされているのもまた現実だ。

※ソニー生命保険株式会社「中高生が思い描く将来についての意識調査2017」より

そこで今、注目を集めている新型ライブ配信サービス「17 Live」(イチナナライブ)。配信は2015年と、個人向けのストリーミングサービスとしては後発ながら、すでに4000万DLを達成。日本でも2017年にリリースされ、現在最も勢いのある配信プラットフォームのひとつである。
17 Liveイベント会場の様子

17 Liveイベント会場の様子

今回、“ライバー”と呼ばれる配信者、そして彼ら彼女らに課金するユーザーへの取材を通して、ライブ配信文化の最先端に迫る。

文:結城紫雄 編集・撮影:新見直

ライブ配信文化の栄枯盛衰

Ustream」や「ニコニコ動画」の誕生から間もなくして産声を上げた、一般人によるネット配信文化。その黎明期である2010年代、筆者もUstやニコ生、YouTube Liveを使った配信業務に携わってきた。

まず、2011年、東日本大地震の起きた3.11を契機に新たな放送インフラとしてUstが地方自治体や大手マスメディアから注目・活用される一方、ニコ動では「ニコ生主」と呼ばれる一般人の配信者が人気を博し、2012年から行なわれているオフラインイベント「ニコニコ超会議」では毎年10万人を集めるなど大成功を収めた。

とはいえ当時は4G回線もなければスマートフォンのCPUは1GHz未満であり、配信には光回線とPCが必須。そんな配信のハードルを一気に下げたのが、二強に割って入った「ツイットキャスティング」(ツイキャス)だった。

スマホの性能向上及び普及率上昇に伴い人気が拡大したツイキャスは、「視聴/配信ともにスマホ一台で完結」という手軽さから、「移動中の配信」「アイドルが楽屋から自身で中継を行なう」というインスタントな新潮流を生み出す。

その後のUstの撤退、ニコ動の苦境には、当時の著しいスマホ進化への対応ができなかった点も大きい

そうして徐々に形成された配信文化は、2013年末、「YouTube」のライブストリーミング機能一般公開に伴って一斉に開花。「Instagram」「LINE」といったSNSサービスも続々とライブ配信機能を追加した現在、プラットフォームによる配信者・視聴者の個性は細分化され、競争も激化の一途をたどっている。

「17 Live」のなんだこの没入感

機器の高性能化・低価格化、ノウハウの蓄積による配信者の技術向上に伴い、「YouTube」に代表されるネット配信番組のクオリティはテレビと比べて遜色ないものも増えている。

一方で、「いかにテレビ放送に近づけるか」に腐心していた黎明期の配信文化とは真逆の、ツイキャスの流れをくむ“インスタント”な配信文化の裾野が若年層を中心に広がりつつあるのもまた現在の配信シーンの特徴だ。

大関れいかさんやRaMuさんといったクリエイターを生み出した「Vine」(2017年サービス終了)が切り開いた新たな潮流は、“公開告白”というムーブメントをつくった「MixChannel」、大手事務所の芸能人などを積極的に起用し人気の「Stager LIVE」など、さまざまな“新世代動画プラットフォーム”に引き継がれ現在のシーンを形成している。

そんななか、2015年7月に台湾でリリースされたライブ配信アプリ「17 Live」。全世界ユーザー数4000万人を獲得した勢いそのままに昨年9月に日本でサービスを開始すると、瞬く間に400万DLを達成するなど快進撃を見せている。

筆者も早速DLしてみたが、配信者(同サービスでは「17ライバー」と呼ばれる)は女性が多い印象だ。そしてそのほとんどが、画面に向かって雑談をする様子を流しながら、視聴者(「オーディエンス」と呼ばれる)の質問や感想コメントを拾いつつ雑談を展開していくスタイル。ラジオのトーク番組、あるいはニコ生の「雑談系」とよく似ている。

いくつかチャンネルを回ってみたが、「やってみた」系のような目を引く企画やパフォーマンスを披露する配信はあまり見当たらず、YouTubeに比べてつくり込まれた絵面でもない。が、次第とそれがクセになってくる不思議な魅力がある。

というのも、スマホ配信特化アプリらしく配信画面は縦型で、全画面に17ライバーの顔が大写しになる様はまるで、女の子と一対一で会話をしているような気分にさせられるのだ。

加えて画面をスワイプするだけで番組をスムーズに切り替えられるため、ひとつの配信に飽きたり、配信が終了してもついザッピングしながら視聴を続けてしまうのも面白い。面白がっていると1日のデータ使用量が2GBを超えていた。筆者は通信キャリアと月3GBプランで契約しているためかなり焦った。

大金が動くオフラインイベントに行ってみた

17 Liveには「オリジナルイベント」と呼ばれるイベントがある。「プライズ」とよばれる賞品をかけて、17ライバーが指定期間内で獲得ポイントを競い合うというものだ。過去のプライズには「テレビCMへの出演権」「17 Liveの広告モデルになれる権利」などがあり、勝敗は「ポイントの獲得数」で決定する。

「ポイント」とは、配信サービスでは「SHOWROOM」「DokiDoki LIVE」などが取り入れている、俗に言う“投げ銭システム”のこと。オーディエンスはアプリ内でポイントをチャージし、気に入ったライバーに「ギフト」を贈る(ギフティング)ことができるのも17 Liveの特徴である。

おおまかに言えば、1ポイントは1円で購入可能。加えてイベント中は、一回の配信で数万〜数百万ポイントを獲得するライバーも多数。さらにライバーには獲得ポイントの15%(※編集部調べ)が還元される。その収益は推して知るべし。

今回、過去最大規模のオフラインイベントで、実際の配信者やユーザーに取材する機会を得た。PCで原稿を書きながら「17 Live」をラジオのように視聴するのが定番スタイルとなり、鬼のようにギガを消費していた筆者である。一晩で大金が動くイベントの舞台裏を探るため、また速度制限下で17ライバーの生姿を拝むべく、さっそく会場である東京・目黒の高級ホテルへと足を運んだ。
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会場となった雅叙園

きらびやかな会場には、150人の17ライバーが集結。各テーブルには今回のイベントの「チーム」に分かれた17ライバーが着席しているが、なんと全員がスマホを持ち各々のチャンネルで配信を行なっている(会場外でも多くの17ライバーを目にしたが、移動中の彼らも皆自撮り棒で配信を行なっていた)。
移動中もスマホから配信

移動中もスマホから配信

配信サービスの「オフラインイベント」といえば、イベント模様を中継するのが一般的だが、17 Liveではそれにとどまらず参加者自身が全員リアルタイムで中継を行なっているのだ。なかなか異様な光景である。

「決戦の夜」がマジで戦国時代だった

「ライバー戦国時代の覇者になれ」と題されたイベントは、4チームに分けられた17ライバーが制限時間内で「ギフト」をいかに集められるかを競うというもの。チーム戦と個人戦が平行して行なわれ、各17ライバーは自分の配信で「ギフティング」をしてもらえるよう呼びかける必要がある。当然、配信にもいつも以上に熱が入るというもの。 17ライブ イベント会場ではポイント獲得上位者が巨大モニターに随時表示され、応援コメントも白熱していく様子がわかる。それもそのはず、今回の「プライズ」のひとつとして上位に与えられる「賞金」があり、1位の賞金はなんと250万円! 筆者もポチポチとギフティングをしてみたものの、次々とキメられる他ユーザーによる「ギフトコンボ」の勢いに始終圧倒されていた。

かくして、「ライバー戦国時代の覇者になれ」を制したライバーは、イベント中終始トップの座を守り続けたあーるちゃん。約90分のイベントで獲得したのは約1800万ポイント、イベント累計では約7404万ポイントである。

繰り返すが、7404万ポイントである。先述のとおり、オーディエンスから送られた「ギフト」の還元率は15%。つまり、優勝者のあーるちゃんは賞金250万円に加え、イベント内で獲得した7404万ポイント≒約1100万円ほどを手にしたと予想できる。
上位陣の驚異的なポイント

上位陣の驚異的なポイント

ひとりの勝者が30代の平均年収の2倍の金額を一夜にして叩き出す、まさに狂乱の“戦国時代”。2位以下の上位ライバーも獲得ポイントはことごとく1000万を超えており、会場は東京証券取引所もかくやと思われるほどの熱量がひしめき合っているのだ。

その他大勢から、一対一のコミュニケーションへ

熱狂の渦のなかで、ふと疑問がよぎる。17 Liveを利用し始めて日が浅い筆者だが、視聴していて楽しいのは確かだ。今回のイベント上位者はビジュアルも洗練されているし、トーク力もある。ただ、特別なスキルやパフォーマンスを披露しているわけではない。
思い思いのスタイルで配信中

思い思いのスタイルで配信中

にもかかわらず、一流サラリーマンの年収を数日で叩き出すほどの求心力とはなんなのか? 優勝したあーるちゃん自身、「私は“マスコットキャラクター”みたいなものなんです。周り(オーディエンス)が配信を盛り上げてくれるから、本当に感謝」と語っている。

「(配信を盛り上げる秘訣は)自分が楽しむこと。自分が楽しんでいればオーディエンスも盛り上がってくれるんですよ」
配信中のあーるちゃん

配信中のあーるちゃん

確かにあーるちゃんのオーディエンスはギフティングだけでなくコメントも熱心だ。また彼女自身、コメントを拾ってトークのテーマにしたり、寄せられた質問に答えたりするなど、視聴者を大事にしているのが見てとれる。

あるライバーのファンだという、過去「軽自動車が買えるくらい」の金額をポイント購入に使ったと話す30代男性は、「(配信で)自分がコメントをすると、名前を呼んでくれるのがうれしい。大切に思ってくれているんだな、と感じます」と語ってくれた。彼は本イベントの「VIP席」に招待されている、知る人ぞ知る有名オーディエンスである。
何名かのVIPも会場に招待されていた

何名かのVIPも会場に招待されていた

日本のネット文化はかつての巨大掲示板「2ちゃんねる」(今では「5ちゃんねる」)に代表されるように、ユーザーが匿名性をまといたがる傾向にある。著名なコピペですらほとんどが「名無し」ユーザー発であり、2010年代以前には「日本で実名SNSは定着しない」というのが定説だった。万葉集にも多くの「詠み人知らず」による作品が収録されているように、日本人は古来より「個」への執着が薄い、アノニマスな存在だったといえる。

しかし、リアルでの人間関係が希薄になってきた現代。「誰かに名前を呼ばれる」ということ、多対一ではなく一対一のコミュニケーションは逆に得難いものになりつつある。本イベントで10位にランクインした、ライバー歴4ヵ月という昌美MASAMIさんは、「そういった親密なコミュニケーションの対価としてギフトを贈ってくれているオーディエンスもなかにはいると思う」と認める。
昌美MASAMIさん

昌美MASAMIさん

が、もちろんオーディエンスとのコミュニケーションだけでは人気ライバーにはなれない。本業として17 Liveでの配信に力を入れ今回のイベントで上位に入った彼女でさえ、「最近は17ライバーも増えてきて。埋もれないように、どういうふうにしたら飽きられないか考えてるんですが、毎日プレッシャーでつぶされそうになる」と心境を吐露している。ちなみに昌美MASAMIさんの17 Liveでの収入は、「月にもよるけど、サラリーマンの月収ぐらいはいただいている」のだそうだ。

キーワードは「一起」?

一方で、「過去3ヵ月で、外車が買えるぐらい(ポイント購入に)お金を使った」という40代医師のオーディエンスは、視聴、そしてギフティングの魅力について「キャバクラとかも行くけど、それと17 Liveは全然違う」と語る。

「キャバクラで女の子に接客してもらっても、全然別のお客さん同士で『あの子いいよね~!』とか盛り上がったりしないでしょ? 『17 Live』では、同じ17ライバーさんを応援してるオーディエンス同士で、その子の魅力とかを語り合うことができる。だから配信してないときでも、ファン同士の交流があって楽しいんですよね」

アイドルを応援するファンの心理に近いのだろうか。聞くと、「スポーツみたいな感じ。同じチームのファン同士って自然と仲良くなるし、みんなで応援していると盛り上がるじゃないですか」と返ってきた。

「医師として働いているんですが、どうしてもプライベートでも付き合いが限定されるんです。でも『17 Live』だと社会的地位とか年齢とか関係なく同じライバーさんを応援できますからね。それも大きな魅力」
授賞式でステージに上がった際も、その様子を配信し続ける上位陣

授賞式でステージに上がった際も、その様子を配信し続ける上位陣

“ライバーが夢を叶えるためのプラットフォーム”を標榜する17 Live。余談だが、17 Liveの「17」とは、「一緒に」を意味する中国語「一起」に由来する。17 Liveに出会う前まで“引きこもり”だったというあーるちゃんが頂点を勝ち取ったのも、熱狂的なオーディエンスの協力があったからにほかならない。

「私は17 Liveをするために生まれてきたんだと思う。今後、17 Liveの配信を職業にすることも可能だと思うし、それも視野に入れています」。ランキング1位が告げられたとき、あーるちゃんは涙ながらにそう語った。 17ライブ配信者たち ――経済は需要と供給の両輪で回る。突き詰めれば単なる「対人コミュニケーション」にこれだけの金額が動くということがそのまま、現代社会におけるコミュニケーションの希薄化がいかほどのものかを表していると言えるのかもしれない(紋切り型ではあるが)。

特別なスキルを持たない、自称“ただの引きこもり”であったあーるちゃんがつかんだ栄光は、新世代配信プラットフォームを通して“夢を叶えた”ジャパニーズドリームの象徴である。その実現に不可欠だったのが、「コミュニケーション」という行為そのものをエンターテインメントの領域までに昇華させた「17 Live」の存在だ。

市場システムと同じように、配信文化もプラットフォームと配信者というふたつの車輪が欠かせない。オーディエンスという強力な加速装置を持った両輪が進むのは、われわれの経験したことのない――まさしく今回の特異なイベント光景のような――未踏の地だ。

ライバーが切り開く配信文化の未来に思いを馳せながら、筆者は今日も今日とてギフティングに精を出す。読者もスマホを通じて、同じ夢を持つライバーを見つけてみてはいかがだろうか。

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