アニメ業界と一口に言っても、制作会社やパッケージメーカーを筆頭に、さまざまな業種の企業で製作委員会が成り立っている事実から、業界の裾野は広がっていると断言できる。
新たな業種との結びつきが、アニメを用いた展開の幅を広げているのは間違いない。例えばそれは、これまで関係性があまり意識されてこなかったグラフィックデザインの領域においても同様だ。
放送されているアニメのクレジットに「○○デザイン事務所」のような名前が並ぶのも一般的になっている。しかし同時に、グラフィックデザイナーが作品に対してどのように関わっているのか? という質問に、明快に回答できるファンは多くはないだろう。
国内最大級のアニメイベントとして3月22日から25日に開催された「AnimeJapan 2018」では、「グラフィックデザイナーが広げるアニメの世界」と題したセミナーが設けられた。
登壇したのは草野剛デザイン事務所の草野剛さんとBALCOLONY.(バルコロニー)の染谷洋平さん。2人はグラフィックデザイナーとして、『アイドルマスター』や『魔法少女まどか☆マギカ』など、人気アニメに“関わっている”。
アニメ業界を代表するデザイナーである2人から、実際に関わったアニメのケーススタディに加え、アニメとデザインが交わりだした歴史、そしてグラフィックデザインが関与できる領域の広がりについて語られた。
なかでも、海外にも巡回している「ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム」展では、アートディレクションやデザインを担当。美術館側とアニメ側、両者の間に入って互いの要望を調整する役割もこなしたという。 染谷さんは『魔法少女まどか☆マギカ』のパッケージにはじまり、アニメスタジオ・シャフトの設立40周年記念展のWebサイト、『コミック百合姫』の表紙と、草野さん同様、手がける領域は多岐にわたる。
印象的だったのが『コミック百合姫』の表紙に関連して、コミック誌の需要の変化に言及した場面。 以前は王道の大衆娯楽だったため、「誰が見ても面白そう」である点が重視され、表紙にはたくさんの情報が盛り込まれたという。
「現在は、読者の嗜好が細分化する現在にあわせて、表紙も最適化されている。大衆ではなく、好きな人に向けたデザイン。『コミック百合姫』も百合が好きな人に対してだからこそ、尖ったデザインが採用されることも多い」(染谷さん)
社内にはWebエンジニアも擁し、幅広くデザインを手がけるバルコロニー。染谷さんは「作品の体験をさまざまな場所に広げていくという仕事は増えている。そうなったとき、複数の分野や領域をまたいで携わるのがデザイナーなのかもしれない」と続けた。
実際に染谷さんは、2006年から『オタクとデザイン』という同人誌を発行。それまで並列に語られることが少なかった両者をあえて結びつけた。草野さんからすると、そのモチベーションが素晴らしいという。 一方で染谷さんは、「草野さん以前にも先駆者はいた」としつつも、自身への影響を口にした。
「個人的には、オタク的なものとグラフィックデザインをミックスしたのが草野さん。ゲームやアニメや漫画とデザインの融合が実現可能ということを、最初に示した代表的な人。それを見て僕も、そういうことができるんだとわかった」(染谷さん)
当時はまだアニメの仕事をやっていなかった草野さんだが、その後『交響詩篇エウレカセブン』でアニメに関わることになる。染谷さんからすると、以降「常にトップランナーなのがすごい」という。 アニメとデザインの融合はいつからはじまったのか。野口さんからそう問われると、「1990年代の半ばから後半にかけて徐々に」と答えた染谷さん。
「PCが普及して、映像や音楽など、専門分野として分かれていたものが、PC1台あればできるようになった。そのときに、草野さんをはじめとする人たちが、グラフィックデザインとアニメ・ゲームとを交差してみようとした」(染谷さん)
草野さんによると、アニメの制作サイドにもグラフィックデザインに対して意識の高い監督が登場しはじめたという。
例えば、草野さんがアニメに関わるきっかけとなった『交響詩篇エウレカセブン』の監督・京田知己さんは、もともとはグラフィックデザイナーだ。だからこその草野さんの起用と言えなくもない。それ以前にも『化物語』などの新房昭之監督も東京デザイナー学院の出身として知られている。
新たな業種との結びつきが、アニメを用いた展開の幅を広げているのは間違いない。例えばそれは、これまで関係性があまり意識されてこなかったグラフィックデザインの領域においても同様だ。
放送されているアニメのクレジットに「○○デザイン事務所」のような名前が並ぶのも一般的になっている。しかし同時に、グラフィックデザイナーが作品に対してどのように関わっているのか? という質問に、明快に回答できるファンは多くはないだろう。
国内最大級のアニメイベントとして3月22日から25日に開催された「AnimeJapan 2018」では、「グラフィックデザイナーが広げるアニメの世界」と題したセミナーが設けられた。
登壇したのは草野剛デザイン事務所の草野剛さんとBALCOLONY.(バルコロニー)の染谷洋平さん。2人はグラフィックデザイナーとして、『アイドルマスター』や『魔法少女まどか☆マギカ』など、人気アニメに“関わっている”。
アニメ業界を代表するデザイナーである2人から、実際に関わったアニメのケーススタディに加え、アニメとデザインが交わりだした歴史、そしてグラフィックデザインが関与できる領域の広がりについて語られた。
草野剛と染谷洋平、アニメとデザインをつなぐ2人が登壇
当日、司会をつとめたのは、デザイン雑誌『MdN』編集長・本信光理さんと、同誌で編集者として働いていたPRINTGEEK 野口尚子さん。 2人は冒頭、草野さんと染谷さんが関わった仕事を紹介。草野さんは『アイドルマスター』のBlu-rayのパッケージ、「ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム」展での展示、グッドスマイルレーシングの車体のグラフィックなどをピックアップ。なかでも、海外にも巡回している「ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム」展では、アートディレクションやデザインを担当。美術館側とアニメ側、両者の間に入って互いの要望を調整する役割もこなしたという。 染谷さんは『魔法少女まどか☆マギカ』のパッケージにはじまり、アニメスタジオ・シャフトの設立40周年記念展のWebサイト、『コミック百合姫』の表紙と、草野さん同様、手がける領域は多岐にわたる。
印象的だったのが『コミック百合姫』の表紙に関連して、コミック誌の需要の変化に言及した場面。 以前は王道の大衆娯楽だったため、「誰が見ても面白そう」である点が重視され、表紙にはたくさんの情報が盛り込まれたという。
「現在は、読者の嗜好が細分化する現在にあわせて、表紙も最適化されている。大衆ではなく、好きな人に向けたデザイン。『コミック百合姫』も百合が好きな人に対してだからこそ、尖ったデザインが採用されることも多い」(染谷さん)
社内にはWebエンジニアも擁し、幅広くデザインを手がけるバルコロニー。染谷さんは「作品の体験をさまざまな場所に広げていくという仕事は増えている。そうなったとき、複数の分野や領域をまたいで携わるのがデザイナーなのかもしれない」と続けた。
アニメとデザインの融合はいつからはじまった?
司会から互いの印象を問われると、草野さんは「恋愛シミュレーションゲームは『ラブプラス』から」という自身の体験をふまえ、「染谷さんは青春時代から、“女の子を愛でる”ことにどっぷり浸かってきた」と評価。 「よつばスタジオの里見英樹さんをはじめ、先人たちが行ってきた工夫──女の子が学校で使うモノ、書きそうな文字などへのこだわり──が、染谷さんにもきちんと継承されている。いわゆるオタク的な領域が好きだった少年の姿が、仕事からも見え隠れする」(草野さん)実際に染谷さんは、2006年から『オタクとデザイン』という同人誌を発行。それまで並列に語られることが少なかった両者をあえて結びつけた。草野さんからすると、そのモチベーションが素晴らしいという。 一方で染谷さんは、「草野さん以前にも先駆者はいた」としつつも、自身への影響を口にした。
「個人的には、オタク的なものとグラフィックデザインをミックスしたのが草野さん。ゲームやアニメや漫画とデザインの融合が実現可能ということを、最初に示した代表的な人。それを見て僕も、そういうことができるんだとわかった」(染谷さん)
当時はまだアニメの仕事をやっていなかった草野さんだが、その後『交響詩篇エウレカセブン』でアニメに関わることになる。染谷さんからすると、以降「常にトップランナーなのがすごい」という。 アニメとデザインの融合はいつからはじまったのか。野口さんからそう問われると、「1990年代の半ばから後半にかけて徐々に」と答えた染谷さん。
「PCが普及して、映像や音楽など、専門分野として分かれていたものが、PC1台あればできるようになった。そのときに、草野さんをはじめとする人たちが、グラフィックデザインとアニメ・ゲームとを交差してみようとした」(染谷さん)
草野さんによると、アニメの制作サイドにもグラフィックデザインに対して意識の高い監督が登場しはじめたという。
例えば、草野さんがアニメに関わるきっかけとなった『交響詩篇エウレカセブン』の監督・京田知己さんは、もともとはグラフィックデザイナーだ。だからこその草野さんの起用と言えなくもない。それ以前にも『化物語』などの新房昭之監督も東京デザイナー学院の出身として知られている。
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イベント情報
AnimeJapan 2018
- 期間 2018年3月22日(木)〜25日(日)
- 場所 東京ビッグサイト
- 総来場者数 152,331人
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