庵野秀明と樋口真嗣が危機を訴え 日本特撮に関する調査報告書を公表

庵野秀明と樋口真嗣が危機を訴え 日本特撮に関する調査報告書を公表
庵野秀明と樋口真嗣が危機を訴え 日本特撮に関する調査報告書を公表

特撮短編映画『巨神兵東京に現わる』の「巨神兵像」竹谷隆之作(C)2012二馬力・G

5月16日(木)、『新世紀エヴァンゲリオン』の監督などで知られる庵野秀明さんと、同じく映画監督の樋口真嗣さんが監修をつとめた日本特撮に関する調査報告書がメディア総合情報事務局の運営するサイト「メディア芸術カレントコンテンツ」にて公表され、話題となっている。

2012年の夏に東京都現代美術館で開催された「館長 庵野秀明 特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技」や、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』と同時上映された『巨神兵東京に現わる』などの影響もあってか、現在、日本の「特撮」は再注目を集める兆しも見受けられるが、その撮影技術はCGの広まりとともに活躍の場が次第に失われてきており、特撮を取り巻く状況は大きく変化している。

今回公表された調査報告書は2012年度のメディア芸術コンソーシアム構築事業として、森ビル株式会社が実施した平成24年度「メディア芸術情報拠点・コンソーシアム構築事業」の成果をとりまとめたもの。庵野秀明さん、樋口真嗣さんは特撮に影響を受けてアニメーションを中心とする映像作品をつくり続けている作家であり、同時に特撮に関しての知識は非常に広範に渡ることでも知られている。その二人が監修に迎えられ、特撮文化についての調査が行われた。

調査報告書の公表にあたって、庵野秀明さんと樋口真嗣さんは下記のように資料内にコメントを残している。

<庵野秀明監督メッセージ>

どうか、助けて下さい。
特撮、という技術体系が終わろうとしています。
日本が世界に誇るコンテンツ産業が失せようとしています。
それは世間の流れというものなので、仕方ないとも感じます。
だがしかし、その技術と魂を制作現場で続ける為に抗い、その技術と文化遺産を後世に残す為に保存したいと切に想います。
ぼくらがもらった夢を次世代にも伝え、残したいと切に考えます。
それは、個人では、極めて困難な目標であり事業です。
国でも自治体でも法人でも企業でもいいんです。どうか、僕らに創造と技術を与えてくれた特撮を、どうか助けて下さい。お願いします。
特にミニチュア等の保存に関しては可能な限り速やかに助けて下さい。
よろしくお願いします。

映画監督 庵野秀明(特撮ファン)

<樋口真嗣監督メッセージ>

特撮。
昭和期に於いて日本独自に発展し、一時的に世界をリードしていた、縮小(ミニ)模型(チュア)を中心にした特殊撮影技術を用いて、架空のキャラクターが活躍する映画やテレビ番組がたくさんありました。
我々の先輩たちが作り上げた素晴らしい技術は、残念ながら昨今の合理化、デジタル化によって活躍の場が失われつつあります。
想像力と技術力によって生み出された自由な空想世界の遺産を、現在のアニメ、コミック、ゲームといった日本のメディア文化の源泉として未来に受け継いでいきたい、と考えます。

樋口真嗣
調査報告書はA4用紙149枚にも及び、特撮という映像・撮影技術の勃興から衰退、そして現在にいたるまでの状況が全5章に渡って細微にレポートされている。第5章では国際大学GLOCOM客員研究員の境真良さんが「特撮」をいま研究することの意義について強く説く内容となっている。

特撮が当たり前でなくなった現代だが、多くのクリエイターがいまなお特撮の影響を受けたと公言し、活躍している。世界に誇れる日本の独自文化であるだけに、彼らの今後の研究・調査にも期待しつつ、改めて過去の作品群に目を向けてみてはいかがだろうか。

日本特撮に関する調査報告書

■全体監修
庵野秀明(監督・プロデューサー)
樋口真嗣(映画監督)

■調査実施・執筆
尾上克郎(株式会社特撮研究所 専務取締役/特撮監督)
境 真良(国際大学グローバルコミュニケーションセンター 客員研究員)
氷川竜介(アニメ特撮研究家)
三池敏夫(株式会社特撮研究所/特技監督)

(肩書きは2013年3月時点のもの)

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