Key馬場社長はなぜアニメをつくる? 『クドわふたー』反響とブランド哲学

Key馬場社長はなぜアニメをつくる? 『クドわふたー』反響とブランド哲学
Key馬場社長はなぜアニメをつくる? 『クドわふたー』反響とブランド哲学
泣きゲー」と呼ばれるジャンルの草わけ的存在であり、今なおそのトップを走り続けるブランドがある。それが今回取材を行ったKeyだ。

美少女たちと苦楽をともにし、やがて結ばれるというコンセプトを守りながら『Kanon』『AIR』『CLANNAD』をはじめとする名作の数々を世に送り出したこのブランドに対する信頼は厚く、熱心なファン──「鍵っ子」はいまだ増加の一途をたどる。

そんなKeyが手がけた『クドわふたー』のアニメ化プロジェクトを、クラウドファンディングサービス「CAMPFIRE」で実施。2017年7月にプロジェクトが始まると、わずか2日という脅威のスピードで最初の目標金額3000万円を達成。最終的には7800万円を超える金額となり、40分の劇場版アニメとして制作されることが決まるなど大成功を収めた。 ゲームとともに、アニメでもファンを獲得してきた同社。今回は、ブランドイメージを強固なものにしながら、新たな作品をつくり続けるKeyの想像力について。そして現在制作中のアニメ版『クドわふたー』について、社長の馬場隆博さんに話をうかがった。

取材・構成:須賀原みち/取材・編集:ふじきりょうすけ

わふー! 個性に満ち溢れたキャラクター・クドリャフカ

──今回のアニメ化プロジェクトに見事成功した『クドわふたー』ですが、原作はPCゲーム『リトルバスターズ!』のスピンオフ作品です。本作をアニメ化するに至った経緯を教えてください。

馬場隆博社長(以下、馬場) すでにアニメにもなっているゲーム『リトルバスターズ!』は2007年に発売し、その中のキャラクターであるクドリャフカがすごく人気が出ました。

クドは「わふー」という口癖やロシア人といった秘密めいた設定だったり、特徴的なマントや帽子など、立てなくてはいけない要素を全部持っているキャラクターだったんです。それで、スピンオフとして2010年にゲーム『クドわふた―』を制作しました。

「クド」こと能美 クドリャフカ

馬場 そもそも、我々ビジュアルアーツは自分たちの世界観とキャラクターでアニメーションに関わりたいと考えていて、TVアニメからスタートした『Angel Beats!』をはじめ、これまでにもたくさんの取り組みをしてきました。

そうした中で、今回、アニメ化に適した題材として『クドわふたー』を選びました。ゲームの『クドわふたー』の売れ行きは好調でしたが、ちょっとエッチな展開もたくさんあったので、地上波でのアニメ化は当初からあまり考えていなかったんです。

──それで、クラウドファンディングを利用して短編を制作しよう、となったんですね。

馬場 アニメ化にあたってクラウドファンディングを選んだ理由としては、今、アニメの製作費が高騰していて、ゲームとアニメの間をつなぐ出資というのがなかなかない現状があります。

Keyのようなビジュアルノベルの製作費は数千万円から1億円強ほどですが、TVアニメになると1クールで4億円近く必要で、リスクが大きくなってきます。

大手企業であれば1社提供でもアニメ製作ができますが、我々にはなかなかできない。なので、今回は実験的にファンの方から支援をいただきつつ、アニメをつくってみようと考えました。

馬場社長

──ビジュアルアーツのレーベルであるKeyの作品は、“鍵っ子”と呼ばれる熱狂的なファンがいることでも知られていますが、そういった面でもクラウドファンディングとの相性は良さそうですよね。

馬場 我々メーカーとユーザーがわかりあえているという信頼感に基づいて、クラウドファンディングを行ったという側面はあります。我々ビジュアルアーツやKeyがつくるものに対して、ユーザーはご理解いただけるであろう、という良い意味での甘えでした。

──ビジュアルアーツ、Keyというブランドがユーザーから信頼されているからこそ、クラウドファンディングに踏み切り、成功を収めることができた、と。

馬場 ただ、それに甘えたまま仕事はしていけないと思いますね。まずはどうであれ、ちゃんと良いモノをつくっていれば、一定のユーザーは理解してくれるだろう、ということです。

我々は今までKey作品としてダメなゲームは1本も出したことはないと思っています。それはやっぱり何を犠牲にしてでもやってきたこと。だから、Keyには納期がなくて、「良い作品ができるまで発売しません」という風にしています。
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