国内最大規模の大会として日本のe-Sportsを牽引する、CyberZ主宰の大会「RAGE vol.4 GRAND FINALS」が6月10日、東京・ベルサール高田馬場にて行われた。
「RAGE」は数カ月ごとのスパンで開催されており、本大会は予選を勝ち抜いたプレイヤーたちによる決勝戦である。
海外の大会と比べて少ないと揶揄されがちな日本のe-Sports賞金額。本大会は全種目で総額1,200万円強だ。なかでもデジタルカードゲーム「Shadowverse」(以下、シャドウバース)の優勝賞金は、400万円と申し分ないレベルである。
国内e-Sportsの最前線はいったいどんな状況なのだろうか。現地の様子を紹介したい。
取材、文:杉山大祐 編集:ふじきりょうすけ
「シャドウバース」「ストリートファイター5」「ウイニングイレブン2017」の3タイトルの決勝大会が行われていたが、会場はいずれも、黒をベースに、青や赤の照明やレーザー光線で近未来を思わせるデザイン。
暗い会場のなか、光を放っているのは大きなモニターに浮かび上がるゲーム画面と、スポットライトに照らされる選手のみ。
観客たちにはこの2つに集中できるよう、会場が設計されている。
選手の入場にも工夫が見られた。「シャドウバース」では大量のスモークがたかれながら、会場後方から選手が登場。観客席の真横を通りながら、前方のステージまで歩みを進める様子は、プロレスの花道を連想させる。 「ストリートファイター5」の会場でも、同様の演出があった。格闘技番組のように、それぞれの選手が相手をあおるような映像が用意され、よりドラマチックに見せているのだ。
すでに海外の大会で活躍するプロゲーマーも参加しているため、もともと知名度のある選手もいるが、これらの演出でよりスター的な存在として見せる意図があるのだろう。
大会の性質上、わざわざ会場に足を運ぶような観客は、種目となっているゲームのプレイヤーで、はっきり言うとオタクな男子ファンが多いと想像していた。
しかしながら、実際に訪れたところ、特定選手のファンと思われる女性たちの姿も少なくなかった。選手に対し写真撮影を求めるファンの目は、まるでアイドルを見るかのようだ。これらの演出が功を奏しているではないだろうか。
筆者が感心したのは、会場に来ている観客たちによるビビットな反応。ゲーム画面での攻防がわかりやすい「ストリートファイター5」や「ウイニングイレブン2017」と比べると、「シャドウバース」はルールやカードの効果に詳しくなければ、状況を理解しづらい。
もちろんそれらを熟知した上で見ることが望ましいのだが、観客たちがその都度どよめいたり、ため息をついたりすることで、プレイヤーの戦略がうまく行ったことや、思い通りのカードが引けなかったなど、「シャドウバース」に明るくない筆者でもだいたいの雰囲気をつかむことができた。
さらに、選手たちを鼓舞するような応援文化も素晴らしい。時折「まだまだ負けてない!」「今のプレイングは良かった」などの声が聞こえ、会場内の笑いを誘った。
それらの内容は相手を野次るようなものではなく、ポジティブなものばかりだ。こうした文化はシャイな日本人のイメージにはないものだが、過渡期である今だからこそ行われているのかもしれない。
3本先取のルールで2連勝を決め、優勝をほぼ手中に収めたかのように思われたが、その後大逆転劇が繰り広げられる熱い展開に。
2連敗の苦しい状況のなか、3戦目でようやく勝ち星を得たEnju選手が、そのまま3連勝して優勝を果たしたのだ。「ファイナリストのなかで最も無名」と自称するEnju選手がチャンピオンとなり、会場を大いに沸かせた。 優勝を果たしたばかりのEnju選手に、さっそく話を聞いた。彼は、無名を自称する通り、TwitterなどのSNSをやっていないばかりか、オフラインの大会に出場するのも初めてだという。
有名プレイヤーの多くが動画配信サイトでプレイ動画を配信するなか、そうした発信を全くしていない選手がスポットライトを浴びたのは、大会側としても価値ある勝利だったのではないだろうか。
「シャドウバース」の魅力を聞いたところ、「強い組み合わせはいくつかあるものの、ファイナリストのデッキにはやはり個性が出ます。そういったところで実力差が、ちゃんと生まれるいいゲームだなと思います」とのこと。「2連覇を目指します」とはにかみながら答える姿が印象的だった。
ほかの種目では、知名度の高い選手が堅実に優勝した一方、「シャドウバース」では新たなスター選手が誕生。もともとゲームがリリースされてから1年余りと、そこまで時間が経っていないことも影響しているのだろうか、まだまだ誰もがスター選手になるチャンスがあることを示す結果となった。
日本は市場規模としてはゲーム大国であるものの、高額賞金が出せない法律上の問題や、格闘ゲームと並び人気ジャンルであるFPS(一人称視点シューティングゲーム)が海外と比べて遊ばれていないことなどから、e-Sportsの分野では後進国と認めざるをえない状況だ。
しかしながら、4年に1度のスポーツ大会である「アジア競技大会」で、2018年にデモ種目、2022年には正式なメダル種目になることが発表された通り、世界的な注目度はますます高まることだろう。
まだまだ発展途上ながら、誰かがゲームをプレイしている様子を見る習慣は、日本はどの国よりも根付いているのではないだろうか。
だとすれば、スター選手たちによるガチンコ勝負を見るe-Sportsも盛り上がるに違いないだろう。TCG/DCGだけでなく、日本のe-sportsがどう発展していくのか引き続き追ってみたい。
「RAGE」は数カ月ごとのスパンで開催されており、本大会は予選を勝ち抜いたプレイヤーたちによる決勝戦である。
海外の大会と比べて少ないと揶揄されがちな日本のe-Sports賞金額。本大会は全種目で総額1,200万円強だ。なかでもデジタルカードゲーム「Shadowverse」(以下、シャドウバース)の優勝賞金は、400万円と申し分ないレベルである。
国内e-Sportsの最前線はいったいどんな状況なのだろうか。現地の様子を紹介したい。
取材、文:杉山大祐 編集:ふじきりょうすけ
選手を“スター化”するための演出と、“リア充”なファン層
「RAGE」に訪れて最初に感じたのは、陳腐な言い方だが、クールでスタイリッシュなイメージ。「シャドウバース」「ストリートファイター5」「ウイニングイレブン2017」の3タイトルの決勝大会が行われていたが、会場はいずれも、黒をベースに、青や赤の照明やレーザー光線で近未来を思わせるデザイン。
暗い会場のなか、光を放っているのは大きなモニターに浮かび上がるゲーム画面と、スポットライトに照らされる選手のみ。
観客たちにはこの2つに集中できるよう、会場が設計されている。
選手の入場にも工夫が見られた。「シャドウバース」では大量のスモークがたかれながら、会場後方から選手が登場。観客席の真横を通りながら、前方のステージまで歩みを進める様子は、プロレスの花道を連想させる。 「ストリートファイター5」の会場でも、同様の演出があった。格闘技番組のように、それぞれの選手が相手をあおるような映像が用意され、よりドラマチックに見せているのだ。
すでに海外の大会で活躍するプロゲーマーも参加しているため、もともと知名度のある選手もいるが、これらの演出でよりスター的な存在として見せる意図があるのだろう。
大会の性質上、わざわざ会場に足を運ぶような観客は、種目となっているゲームのプレイヤーで、はっきり言うとオタクな男子ファンが多いと想像していた。
しかしながら、実際に訪れたところ、特定選手のファンと思われる女性たちの姿も少なくなかった。選手に対し写真撮影を求めるファンの目は、まるでアイドルを見るかのようだ。これらの演出が功を奏しているではないだろうか。
会場を盛り上げるMC、豪華なゲスト、そして観客のビビットな反応
工夫されているのは、見た目の演出だけではない。「シャドウバース」の決勝トーナメントでは、元トップアスリートであり、「ストリートファイター5」でe-Sportsへの参戦も宣言している武井壮さんが、MCとして会場を盛り上げていた。 一方、「ウイニングイレブン2017」「ストリートファイター5」の会場MCは、人気MCバトル番組「フリースタイルダンジョン」でおなじみのラッパー・UZIさん。サッカーゲーム「バーチャストライカー98」の日本王者の経験もある実力者で、格闘技のリングアナウンサーも務めることから今大会にもってこいの人選である。 「ウイニングイレブン2017」ではサッカー解説者の松木安太郎さん、「ストリートファイター5」では「K-1 WORLD MAX」元世界王者の魔裟斗さんと、一般人にもわかりやすい豪華なゲストを迎えているのも魅力だ。筆者が感心したのは、会場に来ている観客たちによるビビットな反応。ゲーム画面での攻防がわかりやすい「ストリートファイター5」や「ウイニングイレブン2017」と比べると、「シャドウバース」はルールやカードの効果に詳しくなければ、状況を理解しづらい。
もちろんそれらを熟知した上で見ることが望ましいのだが、観客たちがその都度どよめいたり、ため息をついたりすることで、プレイヤーの戦略がうまく行ったことや、思い通りのカードが引けなかったなど、「シャドウバース」に明るくない筆者でもだいたいの雰囲気をつかむことができた。
さらに、選手たちを鼓舞するような応援文化も素晴らしい。時折「まだまだ負けてない!」「今のプレイングは良かった」などの声が聞こえ、会場内の笑いを誘った。
それらの内容は相手を野次るようなものではなく、ポジティブなものばかりだ。こうした文化はシャイな日本人のイメージにはないものだが、過渡期である今だからこそ行われているのかもしれない。
決勝でまさかの大逆転劇 まだまだ多くの人にチャンスがあるデジタルカードゲーム
トーナメントは、それぞれ関西予選を勝ち抜いたSOS選手とEnju選手が決勝で対決。それまで1本も譲らないパーフェクトゲームでコマを進めてきたSOS選手が、そのままEnju選手を圧倒。3本先取のルールで2連勝を決め、優勝をほぼ手中に収めたかのように思われたが、その後大逆転劇が繰り広げられる熱い展開に。
2連敗の苦しい状況のなか、3戦目でようやく勝ち星を得たEnju選手が、そのまま3連勝して優勝を果たしたのだ。「ファイナリストのなかで最も無名」と自称するEnju選手がチャンピオンとなり、会場を大いに沸かせた。 優勝を果たしたばかりのEnju選手に、さっそく話を聞いた。彼は、無名を自称する通り、TwitterなどのSNSをやっていないばかりか、オフラインの大会に出場するのも初めてだという。
有名プレイヤーの多くが動画配信サイトでプレイ動画を配信するなか、そうした発信を全くしていない選手がスポットライトを浴びたのは、大会側としても価値ある勝利だったのではないだろうか。
「シャドウバース」の魅力を聞いたところ、「強い組み合わせはいくつかあるものの、ファイナリストのデッキにはやはり個性が出ます。そういったところで実力差が、ちゃんと生まれるいいゲームだなと思います」とのこと。「2連覇を目指します」とはにかみながら答える姿が印象的だった。
ほかの種目では、知名度の高い選手が堅実に優勝した一方、「シャドウバース」では新たなスター選手が誕生。もともとゲームがリリースされてから1年余りと、そこまで時間が経っていないことも影響しているのだろうか、まだまだ誰もがスター選手になるチャンスがあることを示す結果となった。
日本でも発展しているe-Sports
アメリカで開催される格闘ゲーム大会「EVO」では、「ストリートファイター5」のトーナメント参加選手が5,000人を上回るなど、世界中で盛り上がりを見せるe-Sports。日本は市場規模としてはゲーム大国であるものの、高額賞金が出せない法律上の問題や、格闘ゲームと並び人気ジャンルであるFPS(一人称視点シューティングゲーム)が海外と比べて遊ばれていないことなどから、e-Sportsの分野では後進国と認めざるをえない状況だ。
しかしながら、4年に1度のスポーツ大会である「アジア競技大会」で、2018年にデモ種目、2022年には正式なメダル種目になることが発表された通り、世界的な注目度はますます高まることだろう。
まだまだ発展途上ながら、誰かがゲームをプレイしている様子を見る習慣は、日本はどの国よりも根付いているのではないだろうか。
だとすれば、スター選手たちによるガチンコ勝負を見るe-Sportsも盛り上がるに違いないだろう。TCG/DCGだけでなく、日本のe-sportsがどう発展していくのか引き続き追ってみたい。
この記事どう思う?
イベント情報
RAGE vol.4 GRAND FINALS(決勝大会)
- 日時
- 2017年6月10日(土) 開場9:00/開演10:00/終演19:30(予定)
- 会場
- ベルサール高田馬場
関連リンク
杉山大祐
編集者、ライター
有限会社ノオト所属の編集者、ライター。企業のオウンドメディアの編集や執筆、SNS運用を担当。家庭用ゲーム機からPCゲーム、アーケード、アナログゲームまでをまんべんなく遊ぶ無類のゲーム好き。
Twitter ID:@doku_sho
0件のコメント