人文書ってなに〜? 歴史? 思想? え〜むずかしそう〜。・・・などと言われがちな「人文書」ジャンルを、リアル書店にて担当しております宮川くまと申します。はじめまして。
現在ほぼ40才。子供の頃から本の蟲、でも「文学少女」と言ってもらえるほど「文学」は読まず、コバルト文庫やホワイトハート、『幽★遊★白書』や『るろうに剣心』にエネルギーを費やしながら大人になった、いわゆるそんな感じの者でございます。
その子供時代の体験から、読書ってステキ!本を誰かに届ける仕事がしたい!と思い込んでしまって書籍業界をふよふよと放浪中。現在はチェーン店にて勤務しており、このたびリアル書店と電子書籍を繋げる当プロジェクトに参加表明させていただきました。
さて、本題の書籍紹介ですが「リアル書店でも売れている」ことを前提に、今回は「新しい視点で日本史を学びなおす本」を選んでみました。「学校の授業で教わった事と違う!」「定説はもしかして間違っているのかも?」等、脳みそに新しい刺激を与えてくれる本たちです。
もっと柔らかい内容の方がいいのかなー、コミックも混ぜたほうがいいのかなーと思いながらも、せっかく「人文書担当」の看板で臨むのであればまずはこのあたりだろう!というスタンスで選んでみました。何か新しい発見をご提示できていれば幸いです。
新しい視点で日本史を読む「いま、リアルでも売れてる」8冊
古代〜現代まで、まずは「日本史」のおさらい本
いっきに学び直す日本史 【合本版】
佐藤優氏が30年間、たえず読み返してきた「座右の書」であり「最高の基本書」であり「伝説の学習参考書」。あの『大学への日本史』が読みやすくなって、しかも最新情報で新登場!本書は【教養編(古代・中世・近世)】【実用編(近代・現代)】全2巻をセットにした合本版。
まずは「日本史」のおさらい本から。昔からの名著『大学への日本史』(安藤達朗 著)に最新の研究も反映させ(山岸良二 監修)、佐藤優氏の解説を加えた本書。売れてます。
『古代・中世・近世 教養編』と『近代・現代 実用編』がそれぞれ電子化されていますが、ここでは『合本版』を挙げておきます。
オビに描かれた佐藤優氏の目力の効果か、まだまだリアル書店でも売れ続けています。2つの巻数に分けられている本は大抵、前の巻が売れて後ろの巻が多めに残るものですが、こちらは『教養編』『実用編』どちらも同数売れていて、日々売場を眺める身としては純粋に(物理的な意味で)気持ちが良いです。
映画『殿、利息でござる』の原作本
無私の日本人
2016年5月に映画化! 「殿、利息でござる!」の原作。清廉な生き方を貫いた三人を、歴史の中から掘り起こした感動作。穀田屋十三郎-伊達藩の貧しい宿場町に生まれた商人。同志をあつめて一家離散を覚悟で大金を集め、それを伊達藩に貸し付けて、その利息で、滅びようとする郷里を救おうと奔走(……)大ヒット映画「武士の家計簿」に続き、気鋭の歴史家が描く日本人の誇るべき美徳。
村に残る古文書からスタートして周辺情報を精査してみたら、村全体どころかその子孫・未来のことまで考えた政策を私財をなげうって実現させてしまった人物が居た!というノンフィクション。自分の利益は後回しにして共同体の未来のために尽くす姿に感動すると同時に、一次資料から当時の人間の営みを浮かび上がらせるのは楽しいだろうなぁと思ってしまう。
羽生結弦が殿様役で登場することも話題になった阿部サダヲ主演の映画『殿、利息でござる』の原作本としても有名。ハードカバーで刊行された後に文庫化もされていますが、電子書籍だとさらにちょこっとお得。
明智光秀の子孫が本能寺の変を再構築
本能寺の変 431年目の真実
名門・土岐明智氏の行く末に危機感を抱いていた光秀。信長の四国征伐がさらに彼を追いこんでゆく。ところが、絶望する光秀の前に、天才・信長自身が張りめぐらした策謀が、千載一遇のチャンスを与えた! なぜ光秀は信長を討ったのか。背後に隠された驚くべき状況と、すべてを操る男の存在とは!? 新事実をもとに日本史最大のクーデターの真実に迫る、壮大な歴史捜査ドキュメント!
明智光秀の子孫による、「本能寺の変」の真相。
古くは芝居や講談、昨今では小説・ドラマ・漫画などで描かれまくりの「本能寺の変」ですが、腑に落ちないことの多い事件です。
そのモヤモヤとしたカンジを、まずはフィクションから脱して、確認できる事実を洗い出し、直後の政権の思惑(フィルター)を取り除いて再構築することを試みた本書。けっこう話題になっていた本ですが、まだまだ動いて(売れて)います。
3冊まとめて知りたい 明治維新を検証したシリーズ
明治維新という過ち 【改訂増補版】: ~日本を滅ぼした吉田松陰と長州テロリスト~
「歴史を皮膚感覚で理解するとは、その場の空気を感じとることだ。歴史を学ぶとは年号を暗記することではなく、往時を生きた生身の人間の息吹を己の皮膚で感じることである。資料や伝聞は、その助けに過ぎない。そういう地道な作業の果てに、「明治維新」という無条件の正義が崩壊しない限り、この社会に真っ当な倫理と論理が価値をもつ時代が再び訪れることはないであろう。」
官賊と幕臣たち: 列強の日本侵略を防いだ徳川テクノクラート
恫喝外交をしかける欧米列強外交団、大英帝国の支援を受けた薩摩・長州のテロリズム、命を賭してわたり合った幕臣官僚たち。日本近代史を覆す衝撃の維新論「明治維新という過ち」待望の第二弾!
大西郷という虚像
「明治維新のもう一方の担い手である薩摩はどうなのか?」「吉田松陰や木戸孝允がテロリストなら西郷はどうなのか?」「大西郷は明治新政府にとって好都合な虚像ではないのか」等々(……)歴史の検証にタブーと例外があってはならない。たとえ“大西郷”であっても虚像は剥がさねばならない」。『明治維新の過ち』『官賊と幕臣たち』(ともに毎日ワンズ刊)を読んだ人も、読んでいない人も、維新の実相を明らかにする“原田ワールド”にたっぷりと浸ってください。
こちらは3冊まとめてご紹介。いま、売れに売れているシリーズです。(少なくとも私の勤める書店では)
確かに「明治維新」って、ちょっとアヤシイ箇所がありますよね。現在に続く政府なのでその成立は大切・重要なトコロではありますが、幕末史を紐解くとなんとも無理矢理なことをしていたり、実は素人が国政を頑張っていたり、外国の真似をしすぎて当時の日本にはそぐわないことを進めていたり。
様々な視点から歴史を検証してみることは大切かと思いますので、興味深いシリーズです。
これからドカンと売れ出すかも!という期待の一冊
「南京事件」を調査せよ
戦後70周年企画として、調査報道のプロに下されたミッションは、77年前に起きた「事件」取材だった。「知ろうとしないことは罪」――心の声に導かれ東へ西へと取材に走りまわるが、いつしか戦前・戦中の日本と、安保法制に揺れる「現在」がリンクし始める……。数々の賞を受賞してきた伝説の事件記者が挑んだ心境地
ジャーナリストによる歴史検証って、面白いです。
しかも、在ったのか・無かったのかが非常に議論になっているこの事件。
その南京事件について、一次資料、つまり「その場に居た人たちが直接残した証言」を収集し、その証言の「裏取り」をしている本書は、「事件を扱ったノンフィクション」としても「歴史検証」としても意義深い一冊だと思います。
リアル店での印象としては「売れてないわけじゃないけど、もうちょっと売れてもいいのにな〜」という感じ。いやいやこれからドカンと売れ出すかも!という期待の一冊。
人気社会学者の対談で考える、日本の歴史
げんきな日本論
30万部超『ふしぎなキリスト教』でおなじみ、ふたりの社会学者が、痛快無比に語り尽くした「新・日本史」! 土器、古墳、ひらがな、源氏物語、日本刀、安土城、国学……なぜ日本人は、かくもユニークな文化を生み出せたのか? 日本史にまつわる疑問18個を真剣に議論することで、日本の特異さやおもしろさ、現代に生きる日本人の「由来」がどんどんわかる。それによって、私たちは自信を取り戻して元気になれる!
人気社会学者の対談で考える、日本の歴史。
いやこれゼッタイ面白いでしょ〜と、売場で発見してテンション上がりました。 (ちなみにこの記事を書くまで『日本ってこんなにおもしろい!』というタイトルだと思っていました。オビ文だったのですね)
講談社新書なので、私が担当している「人文書」ではなく「新書」の棚に行ってしまうのが悔しいです。社会学の棚と日本史の棚に置いてみたいなと野望を抱いております。
おわりに
人文書もけっこう電子書籍になってるんですねぇ・・・と、今回あれこれ探してみて勉強になりました。
電子書籍については「漫画が多くて小説も少々、あとは雑誌も見かけるよね〜」という程度の印象しかなかった自分が恥ずかしい限りです。アイテム数もジャンルも、確実に拡がっているんですねぇ。
今回ご紹介した本は、たぶん少し小さめの書店でも置いている可能性が高い本です。もし興味を持たれてネット情報だけでは購入に至らない場合は、ぜひリアル書店にて内容をご確認いただければと思います。そしてそこで思わぬ本と出会ってしまって・・・なんてことがあったなら、本屋冥利に尽きるというものです。
この記事を書いた人:宮川くま
書店員。漫画専門店・一般書店・出版社勤務を経て現在書店勤務。担当ジャンル履歴は、コミック・攻略本・文庫・人文書。漫画専門店勤務当時に商品知識をつける必要もあり腐女子を目指すが、腐りきれずに半醗酵。BL知識は15年前で停止中。
日本史は好きだが世界史は苦手。カタカナ固有名詞を覚える良い方法があったら教えてください。
この企画について:匿名書店員さんによるキュレーションをやろう
キッカケはこちらの記事『電子書籍をリアル書店への拡販と書店員の副業に活用する新メディアプロジェクトの協力者を募集します』で、電子書籍からリアル書店への誘導。もしくは書店員さんの副業として活用できないかなと。
現在、4名の書店員さんからお申し出をいただき、しばらくきんどうで記事掲載後新たなメディアを立ち上げる予定です。
思うにね、本のプロである書店員さんの専門知識はネットでもっと読みたいし、それはお金になる分野なんですよ。むしろ、わたしは参考にしたいからもっと出てきてほしい。
まだ、書店員さん(匿名)だけですがイベント案内やうちの気合のはいった本棚を見てくれ!なんて形でリアル書店さんとも組んで一緒にやっていきたいと考えてます。電子書籍に読者が流れるだけでなく、リアル書店・書店員も盛り上がるようなメディアを作っていきたいので興味のある方はぜひ、お問合わせからご連絡ください。ちゃんと売上に応じてお金もお支払します。
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