他書店・各出版社へ説明を行いながら、2023年秋を目途として、実行計画の策定と合弁会社の設立に向けた準備を進めていくという。
書店の数が過去10年で約3割減少
3社が合弁会社の設立に向けて動いている背景には、出版流通モデルが様々な危機に瀕している現状がある。紙媒体の市場規模の縮小、従来の委託販売制度における高い返品率、物流費の高騰などによって、日本全国の書店の数は過去10年間で約3割減少。
全国の市区町村のうち4分の1を超える自治体が、書店がない市町村になっている(2022年9月現在/出版文化産業振興財団調べ)。
子どもから高齢者まで様々な年代の読者が本と出会う拠点としての書店が、全国各地から失われつつある現状に対し、3社は書店主導による出版流通改革に取り組むことを決定。
書店を通じて多種多様な出版物を全国の読者に届けるための、持続可能な出版流通サイクルを創出し、「業界の成長のみならず、日本の文化と社会の発展に寄与することを目指し、3社による協議を開始いたします」としている。
3社で協議される3つの事項
(1)書店と出版社が販売・返品をコミットしながら送品数を決定する、新たな直仕入スキームの構築を目指します。粗利率が30%以上となる取引を増やすことで書店事業の経営健全性を高め、街に書店が在り続ける未来を実現させていきます。
(2)新たな直仕入スキームの構築にあたっては、紀伊國屋書店・CCC・日販各社が保有するシステムやインフラストラクチャー、単品販売データ等を利活用し、欠品による販売機会の喪失を最小化すると共に、売上増大と返品削減、環境に優しい流通を実現し、読者・書店・取次・出版社全員のメリットを向上させていきます。
①機械学習等のテクノロジー(AI発注システム)を活用した、精度の高い需要予測に基づく適正仕入の実現
②適時適量かつESGに基づくサスティナブルな流通(環境・働く人に優しい流通)の実現
③ユーザー利便性向上による購入者の拡大や購入数の増加に向け、書店横断型サービス・共通アプリなども視野に入れた新たな販売促進施策やレコメンド施策の実施
(3)新たな直仕入スキームを実効的に推進していくため、紀伊國屋書店・CCC・日販が出資する合弁会社の設立を検討します。
より豊かな未来を築いていくために、私たち3社の志に賛同いただいた他書店様も合流できる、オープンな仕組みを目指していきます。
「出版文化を継承していくことは、我々に課せられた使命」
株式会社紀伊國屋書店 代表取締役会長兼社長・高井昌史さんのコメント
このたび、書店と取次による「書店を核にした出版流通改革」に取り組むことで、持続可能な出版流通サイクルを創り出していこうと決意いたしました。「文化・情報の発信」「知のインフラ」としての書店を存続させ、出版文化を継承していくことは、我々に課せられた使命と考えています。まずは3社で、それぞれの書店としての良さを生かしながら、新しい仕入れの仕組みを整備し、同じ志をもって取り組んでいただける他書店とも手を携えていくことを目指します。
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