同サービスが開催する「第1回ノベルピアWEB小説コンテスト」の結果が遂に発表された。
賞金総額は1000万円。それもあって、大賞候補作はいずれもハイレベルな作品に。
今回は、特別審査員をつとめたライトノベル作家の森田季節さんにインタビュー。選考についてお話をうかがった。
森田季節さんは、2008年のデビュー以降、ライトノベルだけではなくSF小説やノベライズなど多様な作品を刊行してきた作家だ。2015年頃からはWeb小説の投稿にもチャレンジし、書籍化も実現。代表作『スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました』は、2021年にTVアニメとして放映された。
約15年間ライトノベル業界を牽引してきた森田季節さんが、現在の小説家志望者たちに贈る言葉とは──。
取材・文:太田祥暉(TARKUS)編集:小林優介
目次
ルーツはギャルゲー、森田季節が新人賞に応募するまで
──今回はコンテストの特別審査員をつとめられていますが、森田季節さんご自身も、2008年に「第4回MF文庫Jライトノベル新人賞」で優秀賞を受賞し、デビューされました。新人賞にはどういった経緯で投稿されたのでしょうか。森田季節 僕が大学生だった頃って、ギャルゲー全盛期だったんですよ。その影響を受けて、ノベルゲームをつくる同人サークルに入っていたんです。
ただ、ノベルゲームをつくろうと思ったことのある人ならわかると思うんですが、シナリオはできても、イラストがなかなか上がってこないんですよね。
そこで空き時間に、ライトノベルの新人賞に送ってみようかな、と考えたのが最初でした。最初に投稿した先でいきなり最終選考まで行ったので、これは作家になれるかもしれないと味を占めて(苦笑)。
その後もいろんな賞に応募していった、というのが作家デビューまでの経緯です。
デビュー当時を振り返る森田季節さん
森田季節 それはとても単純で、依頼が来たからです(笑)。
僕の場合はたまたま、ライトノベル・フェスティバルというイベントに来ていた早川書房の編集者さんから「SF小説を書きませんか?」と依頼が来まして。それを当時のMF文庫Jの担当編集に聞いたところ、「ライトノベルじゃないのであればいい」と許可していただいたことがはじまりだったんですよ。
同時期に角川書店の文芸編集部からもMF文庫Jを経由して依頼が来まして。これも「ハードカバーならいいだろう」という判断でOKが出たんです。
そこから他のレーベルに「森田季節はMF文庫J以外でも書く人間」だと認識されたのか、より依頼が来るようになったんですよね。だから、いろんなレーベルで書くようになったのはたまたまなんです。
──デビューしたレーベル以外からの依頼が来た際、どのような心境でしたか?
森田季節 依頼は狙ってもらえるものではないので、とてもラッキーだなと思いました。でも、当時はヒット作があったわけでもないので、とにかく来た仕事はちゃんとやらなくちゃいけないとプレッシャーも感じていましたね。
作家という仕事は、出版社からの執筆依頼がなければ次に進めないので。「売れないから出版できません」と言われないように結果を出し続けるしかないですからね。まあ、ヒット作がなかなか出ずにきっちり苦労したのですが……。
作家から見る00年代~10年代のライトノベル史
──ビターでシックな『ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート』でデビューし、ハードSFやハーレムラブコメも書かれるなど、とにかく幅広い作風をお持ちだと認識しています。作風は意識的に広げられていったのでしょうか。『ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート』
ラブコメをやりましょうと当時のGA文庫の編集の方に言われて、それで企画として提出したのが『お前のご奉仕はその程度か?』です。初めて重版がかかって、本当にほっとしました。
──なるほど。『お前のご奉仕はその程度か?』第1巻が刊行された当時(2011年7月)は、『僕は友達が少ない』のようなハーレム系ラブコメが流行っていましたよね。そういった作品の流行を参考にすることはありましたか?
『お前のご奉仕はその程度か?』
ただ、たしかに『お前のご奉仕はその程度か?』もハーレム系ラブコメなんですけど、企画の発端は吸血鬼モノだったんですよね。ギャルゲーのシナリオとして書いていたもので、そこに当時流行していたハーレム要素を足したんです。
──2010年代前半にはハーレム系ラブコメだけではなく『GJ部』のような日常もの、特にキャラクターの掛け合いが重視される作品が増えていきました。森田季節さんの作品にもキャラの掛け合いがメインとなる作品が増えていた印象がありますが……。
森田季節 時流がそれを求めていたので合わせていった、というのが正しいです(笑)。でも、僕はそこまで研究熱心な作家ではないですよ。
なかにはガチガチに時流を読んで作品を生み出す方もいらっしゃいますが、僕はそこまではできていなくて。場当たり的にゆるく研究し、対応していました。
デビュー後、キャリアを積む中で見た時代の移り変わりを語ってくれた。
※:強大な力を持った主人公が物語を無双していく作品の総称。狭義には、他のキャラクターの評価を下げてでも、主人公の強さを過剰に強調するような作風がこう呼ばれた。
森田季節 僕も最初は別名義で投稿していたんです。ただ、その時点では試験的に投稿していただけでした。
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